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運用担当部局:広報室広報係

教職員に対する訓示

栗林澄夫学長

 4月1日,文部科学省で下村博文文部科学大臣より大阪教育大学長に任命するとの辞令を受け取りました。平成14年6月から平成16年3月まで副学長,平成16年4月から平成26年3月まで理事・副学長として勤めてまいりましたが,その間多くの教職員の皆様に支えていただきました。改めてこれまでのサポートに感謝申し上げます。これから学長としての第一歩を踏み出すことになりますが,これまでと同様,皆様のご支援がなければ,学長は張り子の虎にすぎません。同じ方向を向いてこの大学の将来の発展のために努力していきたいと考えています。
 文部科学省で辞令交付を待つ間,近畿圏の学長と雑談する機会がありました。その席で話題になったのは,論文の不正や,受験に絡んだ金品の受け取り,そして多発するセクハラ問題でした。わたしは相の手を入れながら聞いているばかりでしたが,国立の研究機関,大学の数十年間の変貌ぶりをあらためて振り返らされる思いでした。雑談の話題は他愛もなく,脈絡のないものですが,かつての国立大学にあった一種の安定感や権威といったものが,現在大きく揺さぶられていることを痛感せずにはおれません。21世紀に入ってからの世界の政治・経済状況の激変,流動化とこのことは無縁ではないとわたしは考えています。

 今,世界の体制全体の不安定化が進行していると考えるべきだと思います。先端的な知識や高いレベルの倫理を追求する高等教育機関が,そうした状況の中で試練に立たされているのだと感じています。日本の置かれた状況もこうした危機と無縁ではありません。かつては貿易黒字と経常黒字を世界から責められていた日本が,いつの間にか巨額の貿易赤字と経常赤字,つまり双子の赤字に苦しむ状況となっています。その上,1000兆円にも及ぶ借金を赤字国債の発行でしのいでいるという事態に立ち至っています。こうした状態が長続きするはずがありません。財務省主導による国全体の構造変革によってこの危機を乗り切ろうとする試みが始まっており,それが国立大学にも余波となって押し寄せているのだと認識するべきです。
 本学は,全国の基幹的な4つの教員養成系大学が連携する教員養成開発連携機構(通称HATOプロジェクト)と,京阪奈3教育大学連携事業という2つのプロジェクトを進めています。これらは直接的には,大学の機能を連携により強化しようとする文部科学省の予算配分に対応したものですが,根底には国立大学間の競争関係の促進と,達成度評価による選別があることを冷徹に認識しておく必要があります。全国のすべての国立大学が,こういったプロジェクトを認められていて,予算もそれなりに配分されていると考えるなら,それは大きな誤りです。平成24年度から平成29年度にかけての予算の獲得競争がこのような形で行われ,そこから漏れた大学はすでに行き詰まりを速めているのです。この競争を平成27年度まで,別の形で展開しつつ,第三期の中期計画期間中に,大学間の実質的な合流が図られていくことになるだろうとわたしは考えます。部局長の先生方ともこのことについて意見交換はしていますが,意見の異なる点の一つです。
 このような国立大学の危機に直面して,それではわたしたちはこの大学を放棄したり,存続を諦めるような事態を想像しなければならないのでしょうか。わたしはそうではないと思います。本学はその前身も含めれば,すでに百四十年にも至る歴史を刻んでおり,その間には,二度の世界大戦,経済の大混乱をも経験してきました。その中で本学は,幾多の俊秀を生み出しています。大学教員になった卒業生の合計は,私が目にした二十年ほど前の統計でも500名に近かったと記憶しています。単科大学でこれほどの数の大学教員を輩出している大学を,私はほかに知りません。この事実を踏まえれば,わたしたちが現在の事態にうろたえる必要はないのです。むしろ避けなければならないのは,データに基づかない根拠のない慢心があったり,事態に過敏に反応し,組織としての統一性を失ってしまうことではないかと思います。入学者の受け入れに関しては,定められた定員を十分に満たし,学生の育成に関しては,教育課程の内容の必要性を常に点検・改善し,自信を持って社会へ送り出せる人材を養成すれば良いのだと考えます。わたしは,本学に帰属する皆さんの能力を信じています。一緒に高い資質を持った学生を育てていこうではありませんか。皆さんの一層のご協力をお願いいたします。

 最後になりますが,女性教員,女性職員の登用について言い添えたいと思います。男女共同参画社会の実現を叫ぶまでもなく,本来,男女は同じ割合で社会的な活躍をすべきであると思います。本学の女性教員の割合は20パーセントを超えていて,国立大学全体の目標値を超えてはいるそうですが,特に女性教員,女性職員の管理職に関してはまだまだ少ないように感じています。こうした点との関連で,管理職が育ってほしいという願いから,運営機構室にはできるだけ多くの女性教員を配置したいと思います。職員の育成も含めて,女性教職員育成への関与を強めていきたいと考えていますので,この点でも皆さんのご協力をお願いいたします。
 今後とも,教職員の皆様方と大学の将来の発展に向けて,ともに歩んでいきたいと思っていますので,引き続きご支援をよろしくお願いいたします。