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運用担当部局:広報室広報係
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 昔から困っている人の力になりたいという気持ちが強かったといいます。家族に仕送りを続けながら、進学への学費を稼ぐため4年間ものアルバイト生活を送り、寺坂拓馬さんは22歳で晴れて大教大生となります。そして心新たに臨んだ入学式で、新入生配布資料の中の一枚のチラシに目が釘付けになりました。
 “あなたも障がい学生修学支援ルームで支援協力学生になりませんか?”

 本学施設「障がい学生修学支援ルーム」では、個々の障がいのある学生に応じて支援を進めています。当時50人を超える学生が支援協力学生として活動しており、寺坂さんも一員に加わりました。「振り返れば、さまざまな障がいのある子とも机を並べて学んでいたので、それが当たり前だと思っていました。でも、通常の学校で入学がうまくいかなかった事例があることを知り、障がいのある子どもたちの学ぶ環境について、支援を通してもっと勉強しなくてはと思ったんです」。この過程で、障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが通常の学校でともに学ぶ教育を指す「インクルーシブ教育」の概念を知ります。

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 寺坂さんは同時に、海外にも関心を寄せていました。ただ、経済的な事情もあり、半ばあきらめていたところ、本学と東京学芸大との連携事業によるタイでの研修に参加できることになりました。「首都バンコクはとてもきらびやかで、日本よりも発展していると思うぐらい。でも、中心地を少し外れると、寂れたボロボロの建物から物乞いをする子どもたちの姿が見え、これもまたタイの現実なのだと知りました」。教育が必要なのに、格差などの社会的課題により与えられない機会。自身の境遇とオーバーラップし、世界の教育の実情についても、もっと見聞を広めたいと願うようになります。

 世界との距離がぐっと縮まったのは、研修から帰って間もなくでした。外国語学習支援や、留学生との交流イベントを展開する「外国語学習支援ルーム」が創設されたのです。さまざまな国の留学生と交流を重ね、学生サポーターとしてルームの中心的存在となった寺坂さんは、イベントの企画運営にも積極的に関わるようになりました。一番の思い出は、2回生の時、タイの高校生とインターネットテレビ電話「スカイプ」を使って交流イベントを実施したこと。スシやたこ焼き、とんかつなど、日本ならではの食べ物のイラストを描いた「かるた」ゲームをともに楽しみ、高校生からはタイの伝統文化について紹介を受けました。スクリーンにたくさんの笑顔が映し出され、イベントは大成功でした。

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 「交流を通して、言葉や文化が違っても心を通じ合わせることはできると確信しました。じゃあ、なぜ世界は平和にならないのか考えたとき、人が勝手に尺度を定めてしまい、それに当てはまらないものを排除してしまうからじゃないかと思ったんです」。そして世界が平和になるための一つの理想、それがインクルーシブ教育だという思いに至ります。「日本の教育システムでは、インクルーシブ教育というと障がい者支援に直結しますが、外国にルーツのある子どもや、セクシャルマイノリティの子どもなど、もっと視点を広げて考えることが重要じゃないかな」
 インクルーシブな世界を築くには?「最近気づいたんです。インクルーシブにマジョリティもマイノリティもないことを。一見何不自由ない裕福な家の子でも、人知れず悩みを抱えている子はたくさんいます。子どもたち一人ひとりに対応した教育、それこそがインクルーシブ教育の本質なんだって」

(2016年5月取材)

※掲載内容はすべて取材当時のものです。