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運用担当部局:広報室広報係

「情報社会と差別」をテーマに人権教育全学シンポジウムを開催

 「第35回人権教育全学シンポジウム」を12月6日(木),八尾市民会館プリズムホールで開催し,約500人の学生,教職員が参加しました。
 このシンポジウムは,毎年人権週間の半日を休講にして開かれています。本学では昭和44年度に教職専門科目「同和教育」を開設して以来,人権教育を学部教育の大きな柱としてきました。部落問題からスタートした人権学習は,その時々の社会の変化や課題に対応しながら,幅広く人権を捉えるシンポジウムに発展してきました。今回は「情報社会と差別」をテーマに,ネット上で氾濫している差別的な記述や,今年5月に学内で発見された差別落書き事件を受けて教職員と学生が議論しました。

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 初めに野田文子副学長が「現在,人権にかかわる新しい問題が日々起こっています。本学においても,人権侵害にかかわる事象が皆無ではありません。情報社会の問題としては,発信する側の手段が多種多様になっており,インターネットもその大きな1つです。差別の問題を考えるうえで,集団生活を営む一人ひとりがどのような意識をもっているかが大変重大であり,本日のシンポジウムでは自分の生活を振り返り,自分の姿を見つめ直す機会にしてほしい」と呼びかけました。
 続いて,大阪芸術大学講師の北口学氏が「インターネット時代の国際人権-現状と教育-」と題して講演しました。その中で,インターネット上の差別問題でクローズアップされているプライバシー権など「守られぬ権利」について問題点を指摘しました。また,南太平洋地域の少数民族問題,在日コリアン,アイヌ,イスラムの人々などとかかわり,国内外の様々な人権問題,反差別の運動に取り組んでいる体験を紹介し,「大阪の解放教育,人権教育は世界のスタンダードになりつつあります。マイノリティーや差別される側の心の痛みを感じ取れる教師になってほしい」と学生に呼びかけました。
 このあと,本学の森実教授が,学内で起こった差別落書き事件を取り上げ,「日本のネット社会に規制もなく垂れ流しになっている差別発言の延長上にある問題です。言葉を磨き上げないといけない教員を養成する大学で起こったことは重大です。この問題から目をそらさず,しっかり対応していきたい」と強調しました。

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 次いで,在日朝鮮人教育研究会と部落解放教育研究会の学生有志が活動を報告。「誰もが安心できる大学って?~差別落書きから学ぶ~」と題して意見表明と制作ビデオを上映しました。その中で学生有志は「差別の問題は他人事や遠い話では決してありません。私たち学生にとって身近な問題です。私たちは,今回の差別落書きを受けて,被差別の立場に立たされた学生の傷ついたリアルな思いを受け止めました」としたうえで,「差別落書きによって誰かが傷つくことのない,人権が守られる大学,社会にしていくために,私たちは差別をなくす運動を続けていきます。シンポジウムを通して,私たちの思いが少しでも多くの人に伝わることで,安心して通える大学を一緒につくっていきたい」と訴えました。

 続いてパネルディスカッションが行われました。パネリストは北口氏のほか,本学から森田英嗣教授,養護教諭養成課程3回生の文友希さん,小学校教員養成課程4回生の工藤みずほさん,コーディネートを教職教育研究センターの菱田準子准教授が務めました。この中で学生代表の文さんと工藤さんは,在日朝鮮人教育研究会と部落解放教育研究会が協力して差別落書き問題に取り組み,11月の神霜祭(大学祭)の展示で自分たちの思いを来場者に伝える活動を通じて考えたことを報告しました。そして,「自分の通う大学で差別落書きを突き付けられた被差別マイノリティーの学生が,身近な友だちにも相談できない状況に追い込まれていることは,現在の日本社会の雰囲気に問題があるのではないでしょうか」と投げかけ,「差別落書きは被差別の立場だけの問題ではなく,これまで築いてきた人との関係を切るという点ですべての人につながる問題だと思います。教員をめざす学生が多く通うこの大阪教育大学において,差別落書きが書かれたという事実,そして,それによって安心して大学に通えなくなった学生がいるという人権侵害の状況にしっかり向き合うことが必要なのではないでしょうか」と訴えました。
 また,森田教授は「民主主義を維持し発展させていくには,安心して意見表面できる空間が大切である。誰もが安心できるパブリックな空間を壊してしまうのが差別発言だ。人権を守る教師になるためには,氾濫する情報と適切につきあう能力としてのメディアリテラシーを,まずは自分たちが身に付けなければならない」と強調しました。さらに,北口講師は「日本のネット社会は匿名掲示板が広まっており,世界でもいびつな形になっています。いつ,自分や大切な人が誹謗中傷のターゲットになるかわからない恐怖があります。その渦中にある生徒を教師として指導し,サポートできるのかが問われています。学生の皆さんは勉強しなければならない」と強調しました。
 コーディネーターの菱田准教授は,クラスで1人の児童をターゲットにしたメールでのいじめが広がり孤立していた時に,別の児童がそのことの間違いをメールでしっかりと述べたことをきっかけに,いじめがぴたりと収まった事例を取り上げ,「一人ひとりの子どもの人権感覚を高めることがいじめをなくす最も効果的な道筋です。本日,意見表明してくれた人権感覚豊かな学生を,一人でも多く教師として学校現場に送り出すことが,わたしたち教育大学の使命ではないでしょうか」と述べ,討論を締めくくりました。

(総務企画課総務広報係)