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運用担当部局:広報室広報係

平成22年度入学式式辞

 1,241名の新入生諸君,入学おめでとう。本学を志望し,入学試験を乗り越え,そして,本学の学生として今日の入学式を迎えてくれたことを,非常に嬉しく思っています。よくぞ入学してくれました。
 さて,本学の歴史や,あるいは大阪教育大学とはどういう大学なのかということについて,まず少しお話します。

式辞を述べる長尾 彰夫学長

 本学は非常に長い歴史と伝統をもった大学です。大学になる以前の師範学校,あるいは教員伝習所から数えると,130年を超える歴史があります。大学になってからでも60年以上の歴史をもっています。昨年度,本学は開学60周年記念行事を行いました。大学になって60年。人間で言えば還暦を迎えたということです。そして,その長い歴史の中で,大阪教育大学は,大阪を中心とした教員養成に大きな役割を果たしてきました。みなさんが過ごした小学校や中学校で,大阪教育大学の卒業生は必ずいたといってよいほどです。また,現在,大阪府内には43の市町村がありますが,その3分の1近くの市町村で,本学の卒業生が教育長をしています。

 もちろん,教員養成だけではなく,20年にわたる歴史をもった教養学科も本学の大きな柱となっています。規模でいいますと,学生が約5,000人,附属学校が小学校3つ,中学校3つ,高等学校3校舎,幼稚園,特別支援学校をあわせて約5,000人,そして教職員を加えると,本学に関係する人々は1万人という数にのぼります。近畿の国立大学でいうならば,京都大学,大阪大学,神戸大学に続く学生数の規模をもっているのです。歴史でも規模でも十分日本に誇れる大学です。その点では,大いに自信と誇りをもって学生生活を送ってほしいと思います。

 大阪教育大学は2つのキャンパスを有しています。ひとつは柏原キャンパスです。このキャンパスは国定公園の中にあります。エスカレーターで行くという立地条件ですが,極めて自然環境に恵まれています。しかも,運動施設をはじめ,君たちの学生生活を十分にサポートできる施設も備えています。近畿地区の国公立大学としては初の全面人工芝サッカー・ラグビー場が先日完成しました。テニスコートはオムニのコートを8面,クレーのコートを4面もっています。専用の野球場ももっています。昨年,本学硬式野球部は全日本大学野球選手権大会に,唯一国立大学として出場してくれました。

場内の様子

 図書館の後方には太陽光パネルがたくさん設置されています。図書館の照明はすべて,その太陽光パネルの電力を使ってまかなっています。地球に優しいエコ大学,それも本学のめざすところです。それから,柏原キャンパスでは,大学生協が第一食堂をリニューアルオープンしました。ぜひ行ってみてください。素敵な食堂になっています。

 もうひとつのキャンパスとして,天王寺キャンパスがあります。これは,JR大阪環状線の天王寺駅と寺田町駅の間にあり,交通の便がいい,そして,天王寺師範学校としての長い歴史をもつキャンパスです。放送大学と合築の中央館と,西館とよばれる本学の固有の建物で構成されており,免許状更新講習を開設することなどを通して,大阪の現職教員の中心的な研修センターをめざしています。また,天王寺キャンパスの入口に守衛室があり,その守衛室の鬼瓦には,「師」と古い漢字で彫られた瓦が残っています。これは,師範学校の時の瓦をそのまま乗せています。60年以上の歴史をもった古い鬼瓦です。

 自然豊かなキャンパスと都心のキャンパスを有し,規模の大きい,伝統ある大学です。そのような大学に入学してくれたということは,非常に嬉しいと同時に,大いに可能性のある大学生活を送ってくれるのではないかと考えています。

 実は,わたしは学長になる以前は教育学の教授で,カリキュラムを専門に研究していました。その研究領域のなかに,ヒドゥン・カリキュラムという概念があります。これはどのようなものかというと,例えば君たちは小学校,中学校,高等学校,あるいは大学にもカリキュラムというものがあることは知っているでしょう。国語,算数,理科,社会。学習の計画ということです。大学に入ると,君たちは自主的に受講する科目を選んでカリキュラムを作ります。これは,いわば目に見えるカリキュラムです。しかし,カリキュラムの研究では,もうひとつ隠れたカリキュラムがあるのではないかと言われています。それがヒドゥン・カリキュラムです。

式辞を述べる長尾 彰夫学長

 隠れたカリキュラム,目に見えないカリキュラム,それは一体どういうことか。具体的な例でいいますと,小学校や中学校で子どもたちが国語や算数を勉強するとき,ダラダラっとして規律のない形で学習を行ったとするならば,その授業で子どもたちが身に付けているのは,分数の割り算やら漢字やらということではなくて,ダラダラ学習をするということも同時に学んでいるのではないか。あるいは逆に,先生が一方的に子どもたちをコントロールするような授業の中で育てられた子どもたちは,自主的にものを考えず,言われたままに従うのが正しいことだという考え方を身に付けているかもしれない。そういうことは,学校や先生が意図しているのではないかもしれないが,結果として子どもたちは目に見えない形で,さまざまの立ち居振る舞いや,行動規範,そういうものを身に付けてしまうかもしれないということなのです。ですから,目に見えるカリキュラムだけではなくて,学校の中には目に見えないカリキュラムもあるのではないかというのは,カリキュラム研究の非常に面白いところです。

場内の様子

 カリキュラムという一般的なものの中に,常識で考えられている,目に見えるカリキュラムだけではなくて,指導者も意図していないし,あるいは本人も自覚していないかもしれないけれども,学校生活を送る中で目に見えない形で身に付けていく行動様式,価値観,規範意識があるのではないか。そのことは,君たちがこれから送るであろう大学生活にも当然あてはまることだと考えています。君たちは,もちろん多くの授業を受けるでしょう。サークルやクラブ活動,ボランティアなど,日々計画を立てて生活を過ごしていくでしょう。

 そのような日々の生活の繰り返しの中で,目に見えない形で,君たちがこの大学の中で獲得していく行動様式や価値観,ものの見方考え方というのがあるに違いない,それは一体何なのか。わたしは君たちに,この大学の中で,ヒドゥン・カリキュラムとして一体何を学んでいるのかということについての考え,思い,まなざしを向けてほしいと思います。日々,君たちの目に見える日常の計画通りのスケジュールと,目に見えない形で日々の大学生活を繰り返す中で,隠れた形で君たちの性格、行動、考え方を形成しているものは何なのかということについて,思いをいたしてほしいと思います。そういうことの中で,おそらく,君たちの大学生活はより豊かで充実したものになっていくのではないかと思っています。

 ともあれ,これから君たちは4年間,5年間,さまざまな大学生活を送っていくことになります。わたしたちとしては,君たちの大学生活がより豊かで充実したものになってほしいと思っています。そのために,さまざまな協力や,君たちと一緒に改善も行っていきたいと思っています。そして,君たち自身も,ぜひ,大学生活をより充実させるという意味においても,目に見えないもののカリキュラムもあるのだということに配慮しながら,しっかりと学生生活を送ってほしいと思います。

 今日入学してくれた1,241名の新入生に対して,わたしは,そういうことを願っているということをお話しして,わたしの祝辞にしたいと思いますが,最後にもう一度。よくぞ大阪教育大学に来てくれました。入学おめでとう。

平成22年4月
大阪教育大学長 長尾 彰夫