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運用担当部局:広報室広報係

学長からのメッセージ「平成29年度学位記・修了証書授与式式辞」

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 ただ今、教員養成課程487名、教養学科365名、第二部78名、特別専攻科32名、修士169名、連合教職大学院34名の皆さんの学位記、修了証書をお渡しいたしました。
 学位記を手にする学部卒業の皆さん、特別専攻科修了証書そして修士の学位記を手にする皆さん、皆さんに心からおめでとうという言葉を贈りたいと思います。皆さんが手にする学位記、あるいは修了証書は、大阪教育大学における皆さんのこれまでの努力の成果の証明書であり、また同時にこれから皆さんが生きていく実社会での大きな足掛かりの一つとなるものです。大学における自分自身の到達点として大切に保管していただきたいと思います。

 さて、一部進学する人は別としても、大多数の皆さんは、本日を節目としてこれまで慣れ親しんだ学生生活からおそらく想像さえしなかった領域へと足を踏み出すことになるでしょう。教職に就き教師としての生活を新たに始める多くの卒業生、そして企業人や公務員として社会にはばたく卒業生、さらには専攻科や修士課程を修了した皆さん、皆さんが向き合ってこれから生きていく社会は、近年大きく変容してきましたし、また、現在も変容し続けています。ほぼ一世紀にわたって、自由と成功へのチャレンジが保障されてきたアメリカ合衆国が新政権の誕生によって大きく揺らぎ始めたこと、それに呼応するかのように中国が「一帯一路」政策をもって西のヨーロッパに向けて連帯を強化しているのは、その象徴ともいえる現象です。「狩猟型」社会をsociety1.0と位置付ければ、「農耕型」社会はsociety 2.0であり、また、「工業型」社会は、society 3.0と位置付けることが出来ます。これに加えて、IoTと呼ばれるインターネット技術を中心とする「知識情報型」社会がsociety 4.0であり、さらに、今後到来するであろうAIを活用する近未来社会をsociety 5.0と呼んでいます。問題は、狩猟型社会から工業型社会に至るまでの道程が少なくとも数百年単位であり、その間に人類は社会の変動と移行に対応する時間的な余裕が許されていたのに対して、society4.0からsociety 5.0に至る変動は、十年単位であり、社会やそこに所属する個人は、対応の余裕が許されない、極めて不安定な状態に置かれていることです。情報技術の急激な発展とそれを活用する機械技術の革新が、人間の能力を追い越し、限界を突破しようとすることから、人間が技術革新の前に隷属的な存在となるのではないかという、不安感を生み出しています。

 経済に目を転じれば、リーマンショックから立ち直ろうとする世界経済は、インフレとデフレが同居するスタグフレーションの新たな敷居に立っている、と指摘する経済学者もいるほどの緊張が続いています。中国の経済の失速、ヨーロッパにおけるギリシャ等の経済危機は、解決されない課題であるとさえ言えるでしょう。このことは、これまでの経済システムによる成長神話が終焉の時を迎えているのだとむしろ考えるべきでしょう。

 それでは、世界の中の日本はどうでしょうか。リーマンショックの余波から何とか立ち直ろうともがいていた日本の経済は、皆さんもご存知のように、東日本大震災によって一層大きな痛手をこうむってしまいました。また、福島の原子力発電所に及んだ災害やそれに続く熊本大地震の影響は、亡くなられた多くの人々に対する私たちの悲しみをも超えて、今なお日本全体の大きな課題となっています。さらには、隣国である韓国や中国との間で起こっている軋轢や北朝鮮による新たな軍事的挑戦は、世界における混乱とあたかも歩調を合わせるかのような印象を抱かせさえします。皆さんを待ち受けるのはこうした状況に今なお直面している社会です。

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 私は、皆さんの晴れの門出に水を差すためにこのような指摘をしようとしているのではありません。皆さんを受け入れ、今、送り出そうとしている高等教育機関としての大阪教育大学の責任者として、現在私たちが向き合っている世界が歴史の大きな転換点に立っていることを正しく認識し、その世界に踏み出す自分の立つ位置と姿勢を決定して頂きたいと願うからこそ指摘するのです。

 日本は、今後前例の無い少子高齢化に向かっていくことになります。今後の20年を見渡せば、大学への入学を迎える18歳人口は、現在の5分の1が減少する可能性をはらんでいる、と言われています。さらにはまた、今後十数年の間に、大学を卒業して就職する人々のおよそ65%が、AIの発達などにより同じ職業であり続けることができなくなる、という指摘もなされています。そうした状況を克服するために日本は、教育の再構築、とりわけ高等学校から大学にいたる教育の接続に関して、質の確保と一層の高度化を図る必要がある、と言われています。この背景には、OECDによる学力調査で、日本の義務教育諸段階における知識力、思考力、論理力等が高いレベルにあるにもかかわらず、高等学校及び大学における学力の質保証が不十分である、という結果が出ていることがあります。実際、近隣の外国では、途上国とされている国であっても、高等教育機関に属する学生の知識や学力の増進への熱意は近寄りがたい迫力を感じさせるものがあります。学習への意欲の、言ってみれば逆の格差が近未来の社会において果たす役割は決して小さなものではない、ということを今多くの日本の識者が感じ始めているのです。私を含め大学人の今後の大きな課題の一つであると考えることができます。

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 それでは歴史的な大転換の時代を迎える私たちは、これからどのように世の中の様々な課題と向き合っていけばよいのでしょうか。皆さんがこれまで一番の頼りにしてきたであろうご家族に相談し、その意見をもとに決定したらよいでしょうか。しかしご家族も皆さんと同じく、大転換の時代を経験しておられないため、確実なアドバイスができるとは限らないかもしれません。それでは、友人や勤務先の同輩達なら先を見通した助言ができるでしょうか。後になってみれば部分的に有効だったとみなすことのできる助言はあるかもしれませんが、それは包括的な意味づけによって行われない限り、「偶然」という言葉に近い意味しか持ちようが無いように思われます。不確実の時代に私たちは向き合っているのです。

 こうした時代を生きぬくための確実なレシピやマニュアルはありません。自らが自立し、自分の信ずるところに従って行動するしかありません。その時に重要なのは、孤立して考えることではなく、ともに働くという「協働」の精神と、他者への思いやりに基づく「連帯」の姿勢であろうと私は思います。どのように優れたひらめきや思考であっても、それを肉付けし、伝え広める協働の作業や、目的に向かって連帯するエネルギーがなければ、社会にとって有益な意味を持つことはできません。とりわけ、卒業する皆さんの多くが赴くことになる学校現場では、頼れる先生を待つ多くの子どもたちがいます。自らはしっかりと自己を確立し、自立しつつも、子どもたちと手を結びあい、共に成長しようとする連帯の志を持った「頼りになる」先生が待たれているはずです。大阪教育大学は、現在日本で1、2を争う多くの専任の新任教員を学校へ送り出している大学です。また、学校現場だけに限りません。企業であっても同様に、自己を確立するとともに、組織の中で協働し、連帯した関係を結んでいくことは組織の発展のための基本であると考えられます。今日卒業、修了される皆さんに期待したいのはこのことです。大阪教育大学の学生は、幸いにもこうした点に優れています。悲しい思い出ではありますが、平成13年に附属池田小学校で8名の尊い児童の命が奪われ、多くの生徒が負傷した後、1年経っても大学は混乱の中にありました。学生の皆さんにも事実の概要を報告し、協力を求めたいとした私たち当時の執行部が学生を対象とする全学集会を開いたところ、多くの学生が口々に参加と協力の声を挙げてくれました。私はあの時の体が震えるほどの感動を忘れることが出来ません。皆さんは、これまで十分に協働と連帯への基盤的な体験をしてきているのです。皆さんが大阪教育大学での経験に誇りを持って、これから活躍してくれることを期待しています。今こそ現実社会の大海原へ向けて帆を挙げて漕ぎ出す時です。「いざ海へ」という言葉を、今日の門出として、私からの挨拶を締めくくりたいと思います。
 本日は学部生の皆さんの卒業、そして特別専攻科並びに大学院の皆さんの修了、本当におめでとうございます。