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運用担当部局:広報室

令和元年度卒業生・修了生へのメッセージ

 本日付で学位記・修了証書を手にする教員養成課程492名、教養学科420名、第二部75名、特別専攻科26名、大学院修士課程154名、連合教職大学院38名の皆さんに大学を代表して心から「おめでとう」という言葉を贈りたいと思います。
 Covid-19、通称コロナウイルスによる感染症が猛威を振るっていることから、これ以上の感染拡大を防ぐため、多人数による集会を控えるように、との政府方針により、今回、学位記・修了証書授与式の開催を見送らざるを得なかったこと、誠に残念です。
 しかし、皆さんが大阪教育大学で過ごされ、培われてきた実績は、こうした不意の環境要因があったとしても決して色褪せるものではありません。その意味で、皆さんが手にする学位記は、まさに努力の成果の証明書であり、また同時にこれから皆さんが生きていく実社会での大きな足掛かりの一つとなるものです。どうぞ、これまでの成果に自信を持ってほしいと思いますし、心からお祝いを申し上げる次第です。大学における自分自身の到達点として大切に保管していただきたいと思います。

 さて、大多数の皆さんは、本日を節目として、これまで慣れ親しんだ学生生活からおそらく想像さえしなかった領域へと足を踏み出すことになるでしょう。
 教職に就き「教師」としての生活を新たに始める多くの卒業生、また企業人や公務員として社会にはばたく卒業生、さらには専攻科や修士課程を修了した皆さん、皆さんが向き合ってこれから生きていく社会は、近年大きく変容し、また、現在も変容し続けています。ほぼ一世紀にわたって、自由と成功へのチャレンジが保障されてきたアメリカ合衆国に大きな変化の波が押し寄せているように見え始めていること、それに対決するかのように中国が「一帯一路」政策をもって逆方向の西のヨーロッパに向かって連帯を強化していること、また、英国のブレグジットを巡ってヨーロッパが大きく揺れていることは、その象徴ともいえる現象です。今、世界は大きな変革の波に遭遇しています。これらの事実は、世界を一体化しようとするエネルギーと国単位の利害との相克とみなすこともできますが、将来に向けて皆さんを含む私たちが解決すべき課題でもあります。
 一方で、私たちの日本は、これから前例のない少子高齢化に向かっていくことになります。今後の20年を見渡せば、大学への入学を迎える18歳人口は、現在の五分の一が減少する可能性をはらんでいる、と言われています。さらにはまた、今後十数年の間に、大学を卒業して就職する人々のおよそ65%が、AIの発達などにより、同じ職業であり続けることができなくなる、という指摘もなされています。そうした状況を克服するために日本は、教育の再構築をしなければならない、とりわけ、高等学校から大学にいたる教育の接続に関して、質を確保し一層の高度化を図る必要がある、と言われています。教職に就く本学の多くの卒業生の皆さんには、教育方法、教育内容の一層の改善を始めとして、教育システム全体に及ぶ提案力が期待されるところです。また、社会人として教職外の分野で新たな生活を始める卒業生、修了生の皆さんは、大都市圏の国立大学を卒業、修了した人材に期待される社会的役割を再認識していただき、社会のリーダー的な役割を果たしていただきますよう、強く期待します。

 Covid-19による感染の世界的な影響が象徴するように、私たちは、今、歴史的な大転換の時代を迎えています。不確実の時代に私たちは向き合っているのです。その時に重要なのは、孤立して考えることではなく、ともに働くという「協働」の精神と、他者への思いやりに基づく「連帯」の姿勢であろうと私は思います。どのように優れたひらめきや思考であっても、それを肉付けし、伝え広める協働の作業や目的に向かって連帯するエネルギーがなければ、社会にとって有益な意味を持つことはできません。自らはしっかりと自己を確立し、自立しつつも、同僚や、教師として担当するクラスの子どもたちと手を結びあい、共に成長しようとする連帯の志を持った人材が待たれているはずです。学校現場ばかりではなく、企業であっても同様に、自己を確立するとともに、組織の中で協働し、連帯した関係を結んでいくことは、組織の発展のための基本であると考えられます。卒業、修了される皆さんに期待したいのは、このことです。在学中に培った学友との関係、指導いただいた先生方との関係、先輩や後輩たちとの関係を、今後も維持するとともに、それを今後の社会活動や社会でのリーダーとしての貢献に活かしていってほしいと強く望みます。

 大阪教育大学では、平成13年に附属池田小学校で8名の尊い児童の命が奪われ、多くの児童が負傷した後、1年経っても大学は混乱の中にありました。その被害はあまりにも大きく、被害を受けた方はもとより数多くの学校関係者や社会の広範な人々にとって、激しい心の痛みなしには振り返ることが出来ない未曾有の出来事でした。
私たち当時の執行部は、学生の皆さんにもこのような状況を報告し、協力を求めるため学生対象の全学集会を開いたところ、多くの学生が口々に参加と協力の声を挙げてくれました。大阪教育大学では「附属池田小学校事件を語り伝える事業」を現在も継続していますが、皆さんにはそうした取組みをはじめとした協働と連帯への基盤的体験に誇りを持って、それぞれの場所で、子どもや社会的弱者を取り巻く社会的課題に立ち向かい、これから活躍してくれることを期待しています。
 学部生の皆さんの卒業、そして特別専攻科並びに大学院の皆さんの修了、本当におめでとう。

令和2年3月24日
大阪教育大学長
栗林 澄夫