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運用担当部局:広報室広報係

学長対談「日本の未来をつくる」(2/2)

複雑化する社会に対応するために、今、教育に何ができるのか?
大阪の教育界のトップである、大阪府・大阪市・堺市の教育長が集い、栗林学長とともに教育の現状と展望について、語り合いました。

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大学人材を活用したサポート

栗林 少子化とニーズの多様化が同時に進行している状況の中で、国ももちろん対応を考えるとは思いますが、それを待っていられないのが現状です。これをカバーしていくために、大学の人材を用いた教育力のサポートという点で、どのような可能性が考えられるでしょうか。
山本 小・中学校での子どもたちの支援に、大学生に参画していただきたいと考えています。基礎学力をつけさせるだけでなく、生活態度の改善、社会性の形成など、子どもを総合的に支え、育てていくためには、在学中から学校現場と関わって実務を経験し、力を蓄えた上で教員になっていただくことが必要だと思います。学生が、自身の課題は何か、それにどう取り組んでいくのか、しっかりと向き合ったうえで教員になることで、厳しい教育の世界の一員として立つことができるのではないでしょうか。各自治体や教育委員会は、そのために何ができるのかを考えなければなりません。大阪市としても大学連携の窓口を設置し、大教大をはじめ各大学との連携を機能的に進めていけるようにする必要があると感じています。

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栗林 学校や教育委員会で、教員を志望する学生に向けたインターンシップが盛んに行われています。堺市ではどのような活動がありますか。
石井 学校現場と関わる取り組みとしては、堺市で教員になることを志望する大学生や社会人を対象に講義や実習を行う「堺・教師ゆめ塾」や、放課後学習指導や授業の補助などをする「堺・スクールサポーター」制度などがあります。学生時代からこうした活動に参加し、意欲をもって学んでいる方は、採用されると即戦力として力を発揮してくれる傾向にあります。学校生活中心という学生よりも、意欲の面でも実態を知るという面でもプラスになっていると思います。教員養成については、教育大学での4年間の学びと、それ以降の学校現場、、教育委員会、教育センターなどでの学びを区切るのではなく、互いに壁をなくして、もっと協力を進められないかと思うのです。例えば、理科の研究校に、大学の先生と学生が一緒に来て、大学の先生が学校を指導し、学生は研究に協力しながら学んでいく、というようなことができないかと考えています。他にも、大教大の先生に、大学で育成した人材がその後どう育っているのか見てもらい、その上でどのような研修をしたら良いのか、教育センターの育成カリキュラムに参画してもらうというのも良いのではないでしょうか。これは堺市だけでなく、大阪府や大阪市ともぜひ一緒に取り組んでいきたい。

 

生涯を通じた教員の学び

栗林 石井教育長から教員になった後の学びについてお話がでましたが、教員の生涯を通じた学びが必要だと言われています。先生方が意欲を持って取り組めるような、学習や研修の在り方についてどうお考えでしょうか。

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向井 教員は授業期間中、特に平日は学校を離れられないため、研修参加が難しいのが実情です。そうすると結局、土日や夏季休暇などにやらざるを得ず、休みがなくなり負担になってしまいます。普段の業務の中で研修ができるような仕組みを考えていく必要があると思います。
山本 現在大阪市がまとめている教育振興基本計画の基本的な目標の中に、「未来に向けて生き抜く子どもであってほしい」という内容があります。そんな子どもを育てる新しい教師像を描き、育成していくための指針を、2017年度中に整備する予定です。それを踏まえて研修体系の在り方や人事給与任用制度などを総合的に議論し、2018年度から新しい制度をスタートさせたいと考えています。
石井 堺市は、2016年度からの5年間における教育振興基本計画を策定しており、その中で教員に求める資質として第一に「情熱」を挙げています。やる気や主体性を持っている人は育ちます。いい教師になりたいという情熱を育むために、実践的な研修に重点を置いています。例えば中学校の研修では、定期テストの問題作成に焦点をあてます。定期テストというのは、子どもがどれだけ力をつけているかを測るものですが、逆に言えば、子どもにどんな力をつけさせたいかということに直結しているのです。座学だけでなく、こういった体験的な研修を重視しています。

 

大阪教育大学への期待

栗林 大都市で本学のような教員養成大学と教育委員会が本当に手を携えて仕事をしている所を、私は他に知りません。今後も皆さんとの連携を深め、学校教育に新しい風を吹き込み、大阪モデルとして新しい教育基盤を作っていきたいと考えています。そのために、大阪教育大学にこうあって欲しいという期待や提言などはありますでしょうか。
向井 抽象的な言い方になりますが、コミュニケーション能力があって、決断ができ、情熱があり、ポジティブな人を育ててほしい。教員採用試験で、そうした部分をできる限りしっかりと見てはいますが、2年、3年と経って、この人教員として大丈夫か、と思ってしまうような人もいます。大教大出身なら大丈夫だと安心できる、そんな人材育成をしていただければと思います。
山本 大教大同様、大阪市も様々な先駆的取り組みを進めていきたいと考えています。ただ、やる気や技能という点では問題ないのですが、どうやって進めていくのかという道筋を考えるシンクタンクの役割をする機関がありません。現状では新たに組織を作るのは難しいので、大学との連携、とりわけ大教大との連携の中で、大阪市教育委員会が今後進むべき道筋を一緒に考えていただけたらと思っています。大教大に、大阪市の教育のシンクタンクのような役割を期待しています。また、率直な気持ちとして、できるだけ学生の方に教員として大阪市に戻ってきていただけたらと思います。大阪市の学校現場を支える中核は、やはり地域の代表的な教員養成学校である大教大に担っていただきたいという思いがあります。できる限り連携強化をはかり、大阪市の学校教育の中で、大教大との関わりの深さというものを皆がもう一度認識できるように努めていきたいと思います。
石井 大教大の先生には、各学校の研究に関わっていただいていますが、大教大出身の校長が在籍する学校はまだしも、つながりのない学校だと、大教大と連携することは結構ハードルが高い。そこで私は、退職した校長や学校教員などに、学校現場と大学をつなぐ窓口になってもらうような仕組みを提案したいと思います。学校現場がこんなことで困っている、こんなことを支援してほしい、という要望を伝えたら、それなら大教大ではこんな支援ができるよと、関係する先生や部局に繋いでくれる。逆に、大学生がこんな勉強をしたいと相談したら、この理科の研究校に行って勉強してみては、と教えてくれる。そうやって、お互いの経験や長所を活かせたら良いのではないでしょうか。
栗林 ありがとうございました。
最後に私からも一言述べさせていただきたいと思います。私には、大阪を教育の世界でトップランナーにしたいという希望があります。大阪はその資格もあるし、力もあるはずだと信じています。社会構造の二極化や多様化といった難しい面はありますが、そこを皆さんとの協力で乗り切ることができれば、これからの日本の在り方を決めるような新しい教育モデルを作っていける可能性があります。大阪教育大学は、組織改革を行いましたし、教員養成の高度化に向けても取り組みを進めています。是非、これからも連携を密にして、お互い協力しあえたらと思います

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(『天遊』2017年特別号(vol.41)掲載)
※掲載内容は取材当時(平成29年1月)のものです。