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運用担当部局:広報室広報係

学長対談「Society 5.0 時代に対応した教員養成」(2/2)

AI、ビッグデータ、IOTといった 情報技術の急速な発展に伴う 社会構造の大きな変化の中で、 教師に求められる役割や 能力も変わっていきます。 これからの時代に対応した 教員養成系大学の在り方について、 大阪教育大学栗林学長と 日経BPの中野編集長が対談しました。

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大阪教育大学に期待すること

栗林 今、国立の教員養成系大学をめぐっては、附属学校園を含め、どう改革していくのか、 Society5.0 に対応した教員養成を先導す る大学が必要であるということが教育再生実行会議で提唱され、教員養成におけるフラッグシップ大学の募集が行われようとしています。本学としては、当然そうしたモデル的な大学となることをめざしているところですが、中野さんは本学の附属中学校出身者として教育実習生による授業も体験しておられます。今後、本学が教員養成大学としてどのような改革をするべきかお気づきの点などありましたら教えてください。

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中野 附属中学校時代のことを振り返ると、先生方が非常に意欲的で沢山の面白い授業をしていただいたなと思い起こします。教育実習の先生方がたくさん来ていろいろな授業があって本当に楽しかったです。いろいろな先生が、新しいことをどんどん試してみる。それが附属学校としての役割の一つですし、生徒たちもそれを楽しんでいるという、そういう土壌があるというのは大きな財産だと思います。
 ICTなどによって、社会の変化が加速しています。これからの教育現場は、こうした社会の中で活躍できる子どもを育てることがとても大切になっていきます。そのためには、教員養成系大学が社会と教育現場を結ぶハブになる必要があるのではないでしょうか。世の中の新しい動きをきちんと把握して、教育委員会や学校と連携して教育に反映するといったイメージです。その際には、まずは教員養成系大学と附属学校が一体となって実践的な取組を進め、そこで得られた知見を広く学校や教育関係者に広げることが重要だと思います。
 大阪教育大学の強みの一つは、地域の大阪府や大阪市とのつながりの強さやフットワークの軽さだと感じています。こうした点は、フラッグシップ大学としての活動にもつながるでしょう。

 ただ、全国の教員養成系大学や附属学校の取り組みでは、残念に思うこともあります。さまざまな先進的な実践授業や研究を進めている一方で、その成果やノウハウが学校や教育現場の教員に十分に伝わっていないという点です。フラッグシップ大学として、モデルケースとなる効果的な情報発信の仕組みを整えていただけないでしょうか。

栗林 おっしゃる通りで、そもそもなぜ教員養成系大学には附属学校の設置を義務付けられているのかというと、教員養成のための教育研究を大学と附属が一緒になって行うことと、それが大学の教員養成のために役に立つということが大きな役割の一つです。もう一つは教育実習をしっかり行って、実践力のある教員を育成していくということで、これまでも附属学校がしっかりと果たしてきたところのものです。中野さんをはじめ卒業生の方々から常に評価いただけるのは、本学附属学校園が先駆的な授業を実施してきた証ではないかと自負しています。
 さて、いわゆるSociety5.0といわれている社会の中で、どういう生活ができるのかということを見据えながら教育に取り組んでいきましょうということなのですが、それをどこまで担えるかがフラッグシップ大学の役割として果たすべき指標になると思っています。そうすると未来に向かった教育で大きな役割を果たすのがやはり情報教育。子どもたちが全員端末を持って、クラウドを通じて学習するという教育が実現すれば、何も学校だけに閉じて活用するわけではなく、スマートフォンを持ち歩くのと同じようにどこにいても学習の機会に結び付けていくという試みを進めていくことが重要だと考えています。先ほどのコンピューターの活用の延長上として、今後どのように学校で取り組みを進めていったら良いのかというアドバイスもいただけたらありがたいです。

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中野 ICTを活用した効果的な教育を実現したり、児童や生徒が適切なICTリテラシーを身に付けたりするには、校内ネットワークや一人一台の学習用端末の整備は必須です。
 私は、全国の全ての市区町村について、教育情報化の進展度を比較する「公立学校情報化ランキング」調査を 10 年以上続けています。この調査から、ICT環境やICTに関する教員の指導力には、驚くほどの地域差があることが明らかになっています。「教育の機会均等」という大原則が、教育の情報化については崩れているわけです。
 国の補助金によって校内ネットワークの整備と小中学校での1人1台を実現しようという「GIGAスクール構想」は、ICT環境整備を進め、地域格差を解消する追い風になります。ただ、これだけでは不十分です。整ったICT環境を利用して効果的な教育を実現するための教員のスキル向上や、教育の情報化のノウハウを広げる地域連携の推進なども、併せて進めていく必要があります。

栗林 本学がめざすフラッグシップ大学の形は、大きな企業と直接的な形で結びついてそして学校教育の高度化を図っていこうということではなくて、むしろ地方に波及していけるモデル、つまり教育委員会との連携を非常に密接に行っていこうとしています。大阪教育大学天王寺キャンパスの敷地内に大阪市の教育センターを設置する計画は、1月 31 日に大阪市との間で基本協定を締結しました。
これまでも包括的な連携協定は結んで協力はしてきていますが今後はもっと密接に、大学と教育委員会が連携を強化して教育改革を進めていきます。もう一つ私が進めようとしているのは、各学校現場が特徴的に持つテーマ毎に大学と協定を結んでモデル学校を作っていくというものです。そしてその延長上に博士課Ed.D.つまり学校現場で直接指導できるような博士の実現を見据えています。それを示す根拠として、全国の教育学の博士の実態を過去 20 数年に遡って国立情報学研究所のデータを基に調査した結果を紹介しますと、実は教員養成系大学の博士であっても研究において学校現場をテーマに取り上げているのは 20 %程度、旧制帝大に至っては8%程度、私立大学についてはほぼ1%です。つまり教育学において学校のことを扱わない博士が大学の先生になっているということを意味するものです。ですから、新しいEd.D.を持ち、学校現場にきちんと対応できる博士が教員養成系大学の先生になり、学校現場と連携して学校の教育課題を解決していくというモデルを作れる大学がフラッグシップ大学の役割であると考えています。このような改革は、これまでの教員養成の在り方と比較して、中野さんからはどんな風に見えているのか教えていただけますか。

中野 先ほどお話ししたように、大学での研究成果が教育現場に十分に伝わっていないのが、全国の教員養成系大学の実情です。大学と附属学校で実践したさまざまな取り組みの成果を、教育委員会と連携して学校や教員に伝えていくことが大切です。また、教育現場のさまざまな生の情報を把握できれば、大学での研究や附属学校での実践的な授業の質も向上するでしょう。
 学長に紹介いただいた計画が実現すると、こうしたサイクルを整えられるのではないでしょうか。ぜひ、実現していただければと思います。

 

教員をめざす人への メッセージ

栗林 最後になりましたが日本あるいは世界の子どもたちのために教員をめざす高校生・大学生に向けてメッセージをいただければと思います。よろしくお願いいたします。

中野 月並みな意見ですが、高校生や大学生の間に、今まで経験していない〝社会〞を少しでも多く、経験してほしいと思います。企業の現場を知ったり、海外の文化を知ったりすることも有意義でしょう。カリキュラムや制度を整えるなどして、こうした経験を後押しできる教育の場になると素晴らしいと思います。あと一つ、世の中は驚くほどの速さで変わっていくということも、経験の中で実感してほしいです。今の世の中の仕組みがずっと続くわけではないと実感することは、自分の将来について考える際に役立つはずです。
 今日、こうした機会をいただいて、最後に学長に伺ってみたいことがあります。教員採用の人数は時代によって大きな波があります。大学卒業時に採用枠が少なかった世代には、優秀だったのに希望する教員になれなかったという人がたくさんいます。教員採用の枠が広くなった時に、こういう人がそれまでの社会経験を生かして、教育現場に入る仕組みを作ることはできないものでしょうか。現実には難しい点も多くあるでしょうが、こうした人が増えれば、社会と教育現場との連携も進めやすくなると思います。

栗林 私は教員免許の国家資格化を文部科学省でも強く主張しており、教育大学協会でのワーキングでも検討されていて近々報告書が提出されることになっています。今後人口減が進む日本において必要になるより丁寧な教育、つまり教育の高度化は国の基本方針なのですから、教員免許の国家資格化は必要なことと考えるわけです。
 一方で本学は特別免許状取得の推進をめざした働きかけも行っています。教員免許を持たない人でも一定の教科や必要性に応じて柔軟に特別免許を出せるような仕組みです。中野さんがおっしゃる通り、今必要とされる学校と社会をつなげる学びの部分を担い、学校現場で不足する部分を補うなど今の学校での課題のいくつかを解決に結びつけることができる重要なポイントだと思っています。

中野  企業での勤務を経験してから教員になったり、教員が途中で何年間か企業で働いたりといった形が広がると、企業と教育現場の双方にメリットが生まれるのではないでしょうか。

栗林 私もそうだと思っています。多様な要素に満ちている組織というのは強いですから。最後にいいご意見をいただいたと思っています。今後も一層これらの取り組みを進めていけたらと思っています。本日はどうもありがとうございました。

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※掲載内容は取材当時(2019年11月)のものです。
※広報誌「TenYou ―天遊―」特別号掲載→本誌はこちら(PDF 3,617KB)
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