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運用担当部局:広報室広報係

学長対談「歴史的使命に挑む」(2/2)

栗林澄夫学長が就任してから、まもなく1年を迎えます。
そこで、前兵庫教育大学学長で現奈良学園大学学長の梶田叡一氏をゲストに迎え、大学のトップの視点から「今後の教員養成の在り方と大阪教育大学の使命」について、熱く語り合いました。

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アメリカの失敗から学ぶ

梶田 ただ、教育研究も成功例だけでなく、失敗からも学んでほしい。最悪の形が『ゆとり教育』で、“誰が生徒か先生か”のめだかの学校状態になってしまった。教師は子どもの何万倍も教養があり、視野の広さ、深さを持っていないといけません。教職大学院の運営でそれを再確認してほしいです。

栗林 ゆとり教育が不幸だったのは、子どもに材料を与え、熟考させて育成する試みだったのが、結果は教育ネグレクトになってしまったところです。

梶田 そう、最初の課題認識は正しいのです。アメリカがひと足先にさらに悲惨な失敗をしています。1970年代の『オープン・エデュケーション』がそれです。それ以前のアメリカは、“ムチを振り振りチイパッパ”のすずめの学校状態が横行していたことから、子どもの側の発想を取り入れるべきとの考えから始まったものです。代表的なものが、ニューヨークの「壁のない学校」です。町中すべてが学び舎であるとして、子どもたちが先生と相談して、毎週自分で学習計画をつくる。あとは各自自由に町をめぐり、たとえば自動車修理工場で修理の仕方を習得すると、「実践自動車工学」という単位が取得できるという具合です。

栗林 アメリカの教育は、フリースクールやチャータースクールなど、今でもそういった要素が残っていますが、かなり急進的なものですね。

梶田 1970年代後半になると、現場の教師たちから「子どもたちの行儀が悪く、学力低下も深刻化している」との声が相次いだことから、1983年、連邦の有識者会議において「危機に立つ国家」という、基本に帰り基礎を保証すべし、との報告書が提出されました。そこからの復旧は迅速で、1、2年で教育カリキュラムを回復させ、その結果、学力も向上しました。フリースクールやチャータースクールをつくって自由の余地も残しましたが、枠組みのある教育を施さないと社会は崩壊してしまいます。『ゆとり教育』もそうですが、要はバランスなのです。まず教師主導の教育指導があり、もう片方に子どもの世界があることを忘れてはいけません。ぜひ、教職大学院で人間としてのバランスの取れた見方や、懐の深さを養ってほしい。教師としての資質は授業のうまさけではありません。課題一つひとつを洗い出してより良いものにしてください。

栗林 教職大学院は教員養成の高度化のひとつの形でもありますが、先ほどから申しているとおり、教養教育も大事にしたい。アメリカでのゆとり教育がどんな悲惨な結果になったかは、まったく仰る通りです。その反省から、1980~90年代に、教養教育を中心とした生涯学習を再評価することで高度化を果たしました。わたしはアメリカでのITの発達もその流れがあってこそで、日本の教員養成においても、その流れを止めてはいけないと思うのです。

 

教員養成系大学の英知を結集した博士課程を

栗林 ありがとうございます。やはり日本全体で教員養成の高度化を図るには、教員養成系大学全体の英知を結集させて、仕組みをつくることがとても大事だと思います。形を作るのは文部科学省ですが、各大学が責任を持って提言していかないといけません。

梶田 文科省としても具体的な提言があれば動きをとります。大阪教育大学は、東の東京学芸大学と並び立つ西の雄です。ぜひ、一刻も早く博士課程を設置するべきです。貴学は教員採用実績でも日本でトップクラスですから、この水準を維持しつつ、西日本で博士課程における中心的な役割を担うこと、それは貴学の歴史的な使命です。それに、博士課程を設置するということは、貴学の先生方にとっても良い刺激になるのではないでしょうか。

栗林 一時期は、教員養成課程と教養学科で全く別の方向に向いているときもありましたが、博士課程を仲介として、再び教員養成課程を中心とした高度化モデルをつくる方向へ、軌を一にして協力し合えると期待しています。

梶田 貴学の規模の大学教員が一丸となれば、西日本全体を牽引できます。そういう意味でも、先頭に立つ方が教員養成を広い枠組みで考えておられるのは頼もしいことです。

握手する栗林学長(左)と梶田学長

 

栗林 ただ、教職大学院をはじめとする、学校現場のニーズへの対応が大学における喫緊の課題となっている中、旧帝国大学の教育学部で博士を養成し、教員養成系大学に送り込む気勢が急速に衰えています。今こそ、全国の教員養成系単科大学が一致団結して博士課程を創設し、実践性をふまえ、現場で役に立つ見識のある大学教員を養成し、その存在感、底力をアピールする時が来ています。

梶田 現在、単科大学では、東京学芸大学や兵庫教育大学が基幹大学となり、教員養成系学部を持つ大学との連合大学院で博士課程を設置していますね。

栗林 本学と北海道教育大学を中心とした残りの6単科大学で議論をする流れも一方にありますが、やはり全教員養成系大学が一枚岩となり、どのような博士を養成しなければいけないかを議論すべきです。

梶田 そのためには、旧帝国大学の領域と一線を画したものでなければいけません。各単科大学の本領を発揮した博士課程を期待します。

 

アジアのリーダーとして

栗林 どの程度その期待に応えられるかはこれからですが、学長に就任してからの1年間で、新たな対応を図る必要がある部分も見えてきました。特に重点を置くのが、「グローバル化への対応」です。これは国立大学改革プランへの回答でもあるのですが、国際センター長を務めた経験から、世界で通用する教員の養成をめざすべきだと認識しています。そのために、教員養成機関として各国で重要な役割を果たしている協定校42校と一層の連携を図り、グローバル化の推進を優位に進めていきます。そしてゆくゆくはアジアの教育界の頂点に本学を導きたい。

梶田 日本の教育のあり方はアジア各国のモデルとして期待されています。栗林先生が在任しておられる間に、ぜひアジアのリーダーとして覇権を握ってください。

※平成27年1月現在

 

(『天遊』2015年特別号(vol.33)掲載)
※掲載内容は取材当時のものです。