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    学校安全シンポジウム「子どもの安全をどう創りだすか」 実施報告
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運用担当部局:総務課総務係

学校安全シンポジウム「子どもの安全をどう創りだすか」 実施報告

日   時: 平成16年6月8日(火)14:00~17:10
場   所: 池田市民文化会館アゼリアホール
共   催: 大阪府教育委員会・大阪市教育委員会・池田市・池田市教育委員会・大阪教育大学
来場者数: 約900人

 

次   第
 
大阪教育大学学長挨拶
 
第1部 「国立大学附属学校における安全管理の在り方に関する調査研究会」報告

  報告者:安井義和 氏 (大阪教育大学教授・同研究会主査)

第2部 「学校安全シンポジウム -子どもの安全をどう創りだすか-」
  パネリスト:長澤悟 氏 (東洋大学工学部教授)
倉田薫 氏 (大阪府池田市長)
有村道雄 氏 (大阪市立九条南小学校校長)
石谷真一郎 氏 (大阪府門真市PTA協議会)
  司会:向畦地昭雄 氏 (大阪府教育委員会指導主事)
岸本幸臣 氏 (大阪教育大学教授・同大学附属学校部長)

 

総合司会:ただいまより、学校安全シンポジウムを開会いたします。本日はお忙しいなか、多数お集まりいただき、ありがとうございます。
 本シンポジウムは、大阪府教育委員会、大阪市教育委員会、池田市、池田市教育委員会、大阪教育大学が共同で開催するものです。私は本日の総合司会を務めます大阪教育大学総務課長の古川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

はじめに、大阪教育大学稲垣学長から御挨拶申しあげます。

 

大阪教育大学 学長挨拶


稲垣学長:あの痛ましい附属池田小学校事件から3年を迎える今日、ここに大阪府教育委員会、大阪市教育委員会、池田市、池田市教育委員会との共催のもと、平成16年度の学校安全シンポジウムを開催することができました。開催にあたり、ご協力いただいた関係者の皆さまに深く感謝し、また今日、ご参会の皆さまに心よりお礼を申し上げます。
 事件後、本学では、事件がおきました6月8日を「学校安全の日」と定め、学校、保護者、地域のみなさまとともに、学校安全に対する意識を高め、自覚を深める日とし、学校安全の向上のための各種事業を行うこととしてきました。本日の学校安全シンポジウムも、このような取り組みの一つとして、池田市および三教育委員会のご協力とご理解を得て、企画したものです。
 本日のシンポジウムの開催にあたり、まず事件後の本学の取り組みについてご報告しておきたいと思います。
 3年前のあの痛ましい事件は、わが国の社会に大きな衝撃と震撼を与えました。その被害は、あまりにも大きく、あまりにも悲惨でした。事件関係者にとって激しい心の痛みなしに、事件を振り返ることができない日々が今なお続いております。犯人の侵入を許してしまった学校において、日ごろからの学校安全や学校管理の取り組みはどうであったのか。大学における附属学校の管理、監督はどうであったか。教職員の対処や事件直後からの大学や学校の対応は適切だったか。大学は、学校は、そして教師は、保護者の信頼に応え、その責務を果たしきったといえるのか。今もなお、重い問いとして数多くの関係者によって、問われ続けています。大阪教育大学では、これらの問いかけに正面から答えるべく、冷静に事件を振り返り、大学や学校にどのような問題があったのか。あの事件のなかで何ができ、何ができなかったのかを明らかにして、その結果を広く社会に伝えていくことが、大学の責務であり、また、安全な学校を実現していく上で、不可欠なことであると考えてきました。この作業は今もなお大学において続いております。
 このようななかで、亡くなられた8名の児童のご家族のみなさんとの話し合いを重ね、事件を振り返り、事件の認識を被害者の皆さまと共有する取り組みを進めて参りました。
事件から2年目を迎える昨年の6月、関係のみなさまのご指摘もさまざまにいただきながら、大学および学校としての反省点をまとめ、その具体的内容をもって、国とともに亡くなった8名の児童のご家族とのあいだで合意書を交わし、謝罪を申し上げるとともに、再発防止に取り組むことをお約束いたしました。また、事件によって被害を受けたすべての児童と保護者のみなさまにも同様の謝罪を申し上げ、再発防止に取り組むことをお約束いたしました。あわせて、大学と学校における責任の所在をここに明らかにいたしました。
 かえりみて、あのような学校の危機は、突如として訪れたのではありませんでした。予兆があり、すでに警告が発せられていました。事件に先立つこと1年半、平成11年12月21日、京都の伏見区にあります日野小学校において、外部からの侵入者によって、運動場にいた2年生の児童が刃物によって殺されるという痛ましい事件が起こっておりました。この事件を受けて、文部科学省からは全国の教育委員会、都道府県知事、附属学校をおく国立大学長に向けて、児童の安全確保と学校の安全管理の再点検の要請がございました。そして、必要な措置を講じるよう通知がなされていました。
 大阪教育大学また附属池田小学校では、この事件や通知を児童にせまりくる危機があることを告げるアラート、緊急警報として読み取れず、見過ごしてしまっておりました。また、それゆえに外部からの侵入者に対する学校安全や危機感に対する備えがなされておりませんでした。事件は防ぎえたのではないか、被害の拡大は防ぎえたのではないか。重い問いかけが今もなお残ります。
 学校設置者の、学校管理者の、また、ひとりひとりの子どもたちの安全を預かる教師の心のすき、心のゆるみは、けっして繰り返されてはいけません。事件から3年目を迎え、本学では、この自覚を新たにするとともに、広く学校関係者に対して、このことを強く訴えたいと思います。
 本学では、事件10ヶ月後の平成14年4月に、学外の有識者の協力を得て、国立大学附属学校の安全管理のあり方に関する調査研究会を設置し、事件の経過を踏まえつつ、これからの附属学校における児童の安全確保のあり方について1年半にわたる検討を進めました。その結果を報告書と二つのモデルマニュアルにまとめ、昨年の12月16日に公表いたしました。今日、全国に約260校ある国立大学の附属学校における安全管理・危機管理への備えはこれらの報告書、およびモデルマニュアルがよりどころになっています。報告書の概要につきましては、本日のプログラムのなかで調査研究会の主査を務めた本学教授安井義和より報告させていただくことにしております。
 昨年の8ご家族との合意書の締結以降、本学ではあらためて学校安全の向上に全学で取り組むための体制を整え、再発防止にかかるさまざまな取り組みを進めてまいりました。
学校安全担当、学長補佐の設置、学校安全プロジェクトチームの編成、16回にわたる学生、教職員への救命講習会の実施、附属学校施設の防犯診断の実施、各学校の安全管理の徹底と強化などでございます。また、この春からは、学部学生のための全学共通科目として、「学校と安全」の授業科目を開講することとしています。さらには、学校安全教育推進委員会を新たに設置し、全学をあげての学校教育の推進につとめていく予定にしております。
なお、さらに附属学校への学校安全主任、学校安全管理委員会の設置を進めております。この夏には各学校の学校安全主任のための講習会を計画しています。
 昨年の8ご家族とのあいだで取り交わした合意書と、添付資料、事件の概要は、国の手によって、全国の教育委員会、学校教職員関係機関に流布され、あらためて、附属池田小学校事件とはどういう事件であったのか、社会全体が共有する大きな契機となりました。
これ以降、国や全国の教育委員会や学校においても、児童の安全確保、学校の安全管理、危機管理の取り組みが、よりいっそう真剣なものとなり、具体性を帯びたものになってきました。
 今年の1月20日には、文部科学省は「今、こどもの安全が脅かされている」として、全国民に向けて学校安全緊急アピール、子どもの安全を守るために」を発出いたしました。
子どもたちが、子どもたちであるがゆえに危険にさらされる。学校が学校であるがゆえに危険にさらされる。この社会の現実を直視しなければ、私たちは子どもを守ることができません。また、子どもたちの安全確保はおとなたちの社会の自覚と責任を大きなよりどころにしつつも、ひとつのサイエンス、ひとつのテクノロジーにまで、高めていかなければいけません。
 本学では、6月8日、本日11時より附属池田小学校において、多数の関係者の臨席のもと、事件で亡くなられた8名の児童のご家族のみなさん、13名の負傷児童の保護者のみなさんとともに、事件のモニュメント「祈りと誓いの塔」の除幕式を執り行いました。
子どもたちの安全、学校の安全を考えるとき、附属池田小学校事件は、末永くその原点であり続けなければなりません。
 本日のシンポジウムが、子どもたちの安全確保と学校の安全管理、危機管理の向上に具体的で実効性のある新たな前進、新たな成果をもたらすことを心から願って、開催にあたってのご挨拶とさせていただきたいと思います。

 

「国立大学附属学校における安全管理の在り方に関する調査研究会」報告


総合司会:本日のシンポジウムは2部形式となっています。第1部は研究会の報告。そして10分間の休憩をはさみまして、第2部にシンポジウムを行います。
 これより、第1部に入らせていただきます。
 第1部は、お手元に資料があるかと存じますが、国立大学附属学校における安全管理の在り方に関する調査研究会報告と題しまして、同研究会の主査を務めました大阪教育大学安井義和教授により報告いたします。
 本研究会は、附属池田小学校における殺傷事件を契機として、全国の国立大学附属学校における安全管理のあり方について調査研究を行ったものです。昨年4月に発足し、同年12月に報告書を取りまとめました。お手元に報告書があると思います。要約とマニュアルが2つ。それらをご参照になりながら、本日の研究会の報告をお聞きいただければと存じます。
 それでは、安井先生、よろしくお願いいたします。


安井氏:痛ましい事件から、3年が過ぎました。今も保護者といっしょになって、必死の努力をしながら学校に通っている子どももいます。また悲しい取り返しのつかない現実としてもう戻ってこない8人の子どもたちもいます。附属池田小学校事件以降も、学校への侵入者は増加しています。警察庁によりますと、 2001年の学校侵入の認知件数は、約1770件、2002年には2170件であります。今回の調査研究会は、14年4月にスタートし、12月に報告書を完成しました。これが、けっして完成でも終点でもありません。今後、私たちが学校安全を考えていくうえで、ひとつの参考にしていただければ、ありがたいと思います。当調査研究会の主査は、前半は私でしたが、後半は代わっております。今日の報告よろしくお願いします。
 お手元の資料の第一部を説明させていただきます。
 1頁は、調査研究会の報告、2~6頁は全体の骨子、7~9頁は、昨年の6月8日、文部科学省、大阪教育大学、附属池田小学校で合意書が締結されました。そのときの別紙として添付されたものです。その当時は、まだ裁判が終わっておらず、宅間被告としています。ご了解ください。それから、11~17頁は、私がこれから説明に使います。最後の18頁は後ほど説明させていただきます。
 この報告書を作成するに当たりまして、スタートした年の夏、たいへん暑い時期でした。お子さんを亡くされたご家族の方と調査研究会と意見交換させていただきました。
8ご家族にとっては、再三の説明会でありました。事件のことをふれることだけでもつらいことを、将来の学校安全、子どもを守るという立場でご説明してくださったことをあらためて感謝したいと思います。
 子どもさんを亡くされたり、傷つけられた児童の保護者のみなさんの今後の学校安全を願う思いには、十分に応え切れなかった内容かもしれませんが報告させていただきます。
 また、犯人と直接対峙した先生方は教頭以外に3名います。その先生方と調査研究会として、直接意見をお聞きできたのが全員でなかったことも、申し添えます。

(ここより,プレゼンテーションソフトを使ってスクリーンに資料を投影しながら説明)

 まず、この調査研究会の主旨ですが、附属池田小学校の殺傷事件を契機として、全国の国立大学附属学校における安全管理のあり方について調査研究を行う、これをもとにスタートしました。
 研究事項は、11頁に書いてあります。
 委員構成は、当時の附属池田小学校校長、PTA会長、近隣の附属学校の教師、全国国立大学附属学校連盟の代表の方、PTA連合の方にも入っていただきました。ただ、子どもを亡くされたり、傷つけられた保護者を委員の一員として入っていただく体制をとれなかったことを、当時の主査として、ここにお詫びいたします。
 それから、これを作成していくにあたりまして、文部科学省から大きな報告書が出ていました。しかも、附属池田小学校事件以降です。「『生きる力』を育む学校での安全教育」「学校施設の防犯対策について」「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル」です。みなさんご存じだと思いますが、これらに入っている委員の方々も、私たちの調査研究会にオーバーラップして入っていただいております。それから、ここには出ていませんが、42都道府県だけではなく、ほかの地方都市からもマニュアルをいただきました。
 今回の報告書作成にあたりまして、大きな留意点を申し上げますと、あくまで「附属池田小事件をふまえる」。これはたいへん重く、範囲も広く、網羅しきれてはいませんが、立脚点はここにある。したがって小学校を中心とする。校内への侵入者に限定する。ソフト面で考える。できるだけ現場の先生方に役に立つように具体的にする。他の報告書と矛盾しないようにする。
 調査研究ですので、アンケートをさせていただきました。目的は事件前後における学校安全管理の状況や、先生方の意識がどう変わったかです。対象は、全国の国立大学附属学校、大阪府内の公立小学校から200校、府内の全私立小学校、各学校では、管理職1名、各学年1名ずつ、アンケートをお願いしました。調査内容は11頁にありますので省略します。
 アンケートの分析は、大きな意味で事件前は50%未満でしたが、事件後80%以上になっています。ただ、調査研究会としては、90%近いからいいと思っているわけではありません。ここにあるのは、お金がかかるわけではなく、管理職を含めた先生方の努力でできるものです。私たちは100%を期待したいと思っています。
これは、国立小学校管理職に聞いた場合です。公立小学校も同じ傾向でした。
 次は、事件前後も「はい」の回答が少ない項目を挙げています。
「PTA等の校内巡視」「避難訓練」。2つめと3つめの教職員のみでの避難訓練と児童を含めた避難訓練は、この2つを合わせても、事件後で80%にしかすぎません。これは大変問題なことだと考えています。
 それから、管理職に聞いた問いかけですが、附属校は地域との連携がうすい。これは如実にあらわれているグラフです(スライド8)。しかも、これは附属学校側から積極的に簡単にできることだと思っています。地元自治会長へのあいさつ、「こども110番」への依頼、学校行事案内などは、ぜひ努力しなければいけないと思っています。
 それから、国立・公立小学校教諭で「はい」の回答が50%以上増加した項目は、「校門閉鎖希望」「緊急時の通報法の決定」「防犯訓練は積極的に」などです。ただ、小学校の全回答で90%を超えたものは、ひとつもありませんでした。(スライド9)
皆さん方にはアンケートの具体的な内容がわかりませんが、お許しください。
小学校で80%を超えたところがありますが、中学校、高校はすべて80%未満でした。
 次は、国・公・私立小学校教諭のすべてで事件後も「はい」が30%未満の項目は、「緊急連絡網の試行」「警察等への通報訓練」。これは、本当に警察に通報をして、いろんな状況を聞かれるなどの体験をしたかということです。これは、いちばん多くて国立小学校の12.4%でした。10人に1人しか実際に通報練習をしていないということです。(スライド10)
 それから、アンケートの項目で9つの共通回答を求めるものがありました。
一般には、管理職のほうがはるかに危機意識が強いと思いがちですが、逆転しているものもあります。「校門閉鎖」。いわゆる学校の門は閉めてほしいと思われている先生方が、管理職より多いという結果が出ています。それから「教員養成カリキュラムにおける学校安全」。とくに今回のような不審者への学校安全を取り扱ってほしいと、一般の先生方が要望されています。(スライド11)
 アンケートからみた今後の課題は、1~5とあります。(スライド12)
 次は、附属池田小学校事件にかかわる学校安全の課題、今日の報告はここが中心になると思っています。また、課題はこの報告書以外でもたくさんあると思っています。また、一つ一つがたいへん重く、認識の不十分さもあると思います。作成時点でも課題は残されていたし、3年たっても4年たっても新しい課題が出てくると思います。
 附属池田小学校にかかわる課題としては、3つのグループに分けました。1.附属学校特有の課題、2.安全管理の課題、3.学校運営の課題です。(スライド13)
 附属学校特有の課題は、教育委員会の任務。一般の公立学校ですと、まず教育委員会に情報が入り、教育委員会が支援体制をとる。附属学校の場合は、大学に情報が入りますので、大学が教育委員会の任務をしなければいけません。(スライド14)
校長は教授の併任職。これは、国立学校設置法施行規則第25条で、校長は、教授をもってあてるとなっています。ですから、校長になる教授は、3の研修等の課題にも関係してきます。5番目の大学と附属学校の物理的距離。事件が起こった当時は、管理職や大学本部は柏原市で、柏原と池田では、公共交通機関で2時間かかります。ご存じのように以前の大阪教育大は、池田にキャンパスがあったのでそれなりの対応もできたのですが、今はそのままになっています。
 次は、安全管理の課題に入ります。(スライド15)
学校安全の意識の変化では、先ほど、学長のあいさつでもありましたが、1年半前にある種の予兆がありました。それを受けて、大学あるいは附属池田小学校が十分にそれを受けていなかったという問題です。

 これから具体的に犯人の動き方を追って、課題を説明していきたいと思います。お手元の17頁に大きな地図がありますので、参考にしてください。
 ここに正門があります。これは閉まっていました。犯人は、自動車通用門に車を停めて、開いていた通用門から中に入っていきました。宅間は、裁判で「門が閉まっていたら入ろうとは思わなかった」という話もしています。
 それから犯人は、通用門から入って体育館の右で附属池田小学校の先生とすれ違いました。すれ違った教員は、軽く会釈をしましたが、犯人からの会釈等はかえってきませんでした。来校者の雰囲気を察して振り返るなど、その後の動きを注意していれば、その後の展開も変わったかもしれません。
 それから、テラスへの出入り口。体育館の右横を通って、地図の2南の教室に入って行きました。こちらはテラスで、教室は図に向かって左のほうが前になっています。テラスというのは本来、子どもの外での活発な活動を展開させるため、また、緊急避難時の役目もしていましたが、今回は結果として犯人が容易に教室内に入ったという状況を作ってしまいました。学校内に入ってしまいますと、たいへんな状況だということです。
 
 次は、凶行発生時の行動。地図の④を見てください。凶器の刃物を持った犯人は、次々と子どもに襲いかかりました。直面した教員は教室内の構内電話に飛びつき、誰かに知らせるために校内放送に通報する番号を押しましたが、利用停止しました。教員は廊下側の前方の扉から飛び出し、約40メートル離れた外線電話のある事務室(図⑤)、このような事態においても、子どもたちから離れず、あらゆる方法を駆使して、子どもの安全を確保することが重要であると、研究会は考えました。
 
 それから、救護と通報です。
 先ほどの2南から事務室へ走った教員は、途中で、図⑥で倒れて苦しんでいる児童を発見しましたが、教員は通報を優先しました。被害児童の一瞬でも早い救護と、早急な通報の二者択一の状況に迫られたときの判断・行動が課題でした。

 児童の救助方法。
 その教員が事務室に入ってきたあとに、子どもが一人、事務室に入ってきました。事務員は、扉⑦を閉めました。事務室内の事務員のひとりは、教頭に電話をしました。教員の様子から異変を感じたほかの事務員は、119番通報をしました。事務員によって、事務室の扉が閉められたあとに、教室で刺され、自力で逃げてきたひとりの負傷児童は、その事務室の横を通り、数メートル先(図⑧)で力尽きて倒れました。このような場合の逃げてきた児童の救助方法、児童に対する避難場所の確保と救助対策が必要です。さらに事務員は、電話の内容から状況を察知しましたが、図⑨の大きな窓から状況を把握するなどの適切な行動ができませんでした。恐怖に伴うパニック化でも冷静、適切な行動をとれるような訓練が必要だと考えます。

 次は危険告知と避難指示です。
 先ほど2南から事務室へ走った教員は、1東の教室で「逃げて」と言いながら廊下を走って行きました。1東の教員は、自分のクラスの児童を避難誘導する際に、1南の横を通っています。1南の教室は、先生がいず、子どもたちだけでした。教員不在の教室内への危険告知や避難指示をしなかったために、一部の児童が逃げ遅れ、死傷者が出ました。児童を避難誘導しながら他の教室等への危険告知、避難指示の方法を考える必要があります。

 緊急通報訓練。
 一般に110番、119番に通報しますと、学校の所在地等、かなり詳細に聞かれます。そのとき、冷静に答えられるかどうかが大きな課題です。先ほど、アンケートでお話しいたしましたが、ぜひ警察への実際の通報もお願いしたい。実際に通話の訓練を組み込んでほしいというのは、ここから出てきた言葉です。

 被害の全容把握。
 図の1南(⑪)で、教員2人が犯人を取り押さえましたが、多くの教員がその教室だけが襲われたと思い込んでしまいました。責任者が被害の全容を迅速、正確に把握するために、適切な組織的な指示ができる体制が必要でした。

 時間の関係で少し端折ります。

 負傷児童搬送時の情報確認。
 負傷児童がたいへん多く、事件全体の把握が遅れたため、負傷児童名、負傷の程度、搬送された児童名や搬送先の確認に混乱をきたしました。そのため、亡くなった児童の保護者が早い段階で来校してくださっていたにもかかわらず、校内でわが子に会えず、自力で探し当てた病院で亡くなったわが子と対面されました。搬送された児童名や搬送先の確認方法と多くの死者が出た場合の対策が必要であります。

 それから3つめの学校運営の課題。
 ここに6つ書きました。特に、いちばん上の「開かれた学校と学校安全」。これは二部でも討論していただけると思いますが、開かれた学校というのは、校門開放やグランドの開放等、設備の物理的開放と理解される場合が少なからずありました。安全管理の徹底を図ることが大前提であります。
 それから、4の情報の共有化。
 これは、子どもを亡くされた保護者、あるいは、体に傷を負った児童の保護者、いろんな方が大学の、あるいは学校の一職員にこういうことをお願いしたい、これはどうなっているのかとお聞きしたことが、大学、あるいは附属池田小学校全員に伝わっていませんでした。ですから、保護者にとっては、同じことを何度も言わなければならないという苦痛を味あわせてしまいました。
 同じ情報を全員が共有する。それはたいへん重要なことでした。

 ずいぶん割愛させていただきましたが、これらの課題をふまえて、今後の附属学校における安全管理の基本的な考えかたを申します。
 附属学校を置く大学・学部における課題と役割、日常の場合、緊急時用。この3つを考えました。
 附属学校を置く大学・学部における課題と役割は、教育委員会の任務を担わなければならない。校長と教授が併任であるなどの問題を、どうやって解決するかということです。
 とくに、学校安全管理委員会を委員会として提唱しています。これはひとつの校園だけで学校安全や組織を考えるのではなく、全体として、大学も地域も保護者も一体となって、組織的なことを作る必要があると訴えています。これは、全国附属学校連盟の今年度の大きな活動方針にも入れていただきました。
 それから、開かれた学校と安全管理は、もともと平成8年に中教審(中央教育審議会)の「21世紀を展望したわが国の教育のあり方について」の答申を受けて開かれた学校が提唱されました。その答申のなかで、忘れてはいけないのが、子どもの育成に必要な開放であると明記されています。開放の際には、子どもを守る、子どもを育成することをもとに開放する場所と開放しない場所との明確な区別を行い、子どもの安全が最優先であると再確認したいと思います。

 それから、学校安全管理士。15頁を見てください。
 今回の事件は、教員が今までの子どもを守る範囲をはるかに超えています。屈強な男が、逃げ惑う子どもたちに出刃包丁をふりかざして、たった5分間で不特定多数に危害を与えました。全国の警察が緊急通報を受けて現場にかけつけるのは、5分強です。ですから、今回の事件は5分以内にはすべて残念ながら、被害者が出ていました。
学校安全法の立法化というので、日本教育法学会が提唱されています。

 それから、私たちはあくまで現場に役立つ、具体的にと申しました。その意味で、学校安全チェックリストを6種類、作りました。それは附属をもつ大学のチェックリストもありますし、防犯訓練をするときの課題も挙げています。とくに附属学校から考えますと、今回は池田市へ通報が入っていませんでした。池田市にもたいへん迷惑をかけました。

 まず防犯訓練で述べたいと思います。
 防犯訓練は、まず被害者を想定してほしいということです。池田の場合は、亡くなった子どもさんが8人。怪我した子どもさんが13人です。私の知る限りは、あちこちの防犯訓練をお聞きしても、2人ないし3人がマックスではないかと思います。
いろんなことが考えられます。それからいろんな場面を想定してほしい。学校がまだ始まっていず、先生方も全員がそろっていないとき、あるいは昼食時間。いろんな場合を考えてほしいということです。それから警察への実際の通報。

 14は、私たちが緊急時のフローチャートを書きました。とくに、緊急の場合は何をしなければいけないのかという項目を右にチェックリストで挙げました。スライドは、ほんの一部ですが、ご活用いただければと思います。
 それからマニュアル、防犯訓練で私たちが考えていかなければいけないのは、学校の先生だけでマニュアルを作らないということです。あるいは、マニュアルの中に全職員が出てくるべきだと考えております。

 たいへん端折りましたが、私が附属池田小学校事件後に、附属池田小の校舎改築、あるいはこの報告書にタッチさせていただきました。少し時間をいただきたいと思います。

 子どもさんを亡くされたり、体や心を傷つけられた児童の保護者の苦しさ、無念さ、やりきれなさが、今なお、兄弟姉妹が学校へ通学されると、今日は無事に帰ってこられるかと心配もされています。そのような心配を少しでも小さくするために、安全な学校にしなければなりません。附属池田小学校は、安全に配慮した新しい校舎ができました。今後、見学していただく機会も多いとおもいます。しかし、この新しい校舎に入りたくても入れない、楽しく動き回っているお子さんを見たくても見られない方々もおられます。学校で、わが子が友だちと語り、将来の夢を育み、その姿を何よりも楽しみにしておられたのがかなわない保護者の方々を私たちは忘れまいと思います。
 なぜ、この校舎ができたのか、なぜ新しくなったのかをあらためてお考えいただきたいと思います。
 池田の新しい校舎を今後の学校安全に生かすこと、その象徴として見ていただければ幸いです。何よりもわが子を失う、しかもいちばん安心してあずけていた学校で、子どもが体や心を傷つけられる無念さ、やりきれなさを、私たちがどこまで認識できるかにかかっていると思います。そのために、8ご家族や負傷児童のご家族の方々にお会いして、考えをお聞きすることがたいへん必要だと、自己反省をこめて、考えております。本当の理解はできないでしょうが、少しでも、心の一端を知ることで今回の事件が、わが学校での事件、わが子の事件と考えることが、すべての出発と考えます。今までになかった事件ですのに、今までの組織で考えようとしていることに無力感を感じたこともあります。大阪教育大学および附属池田小学校は、全国の学校安全面でリードし、率先しなければいけないと考えています。また、昨年の4月にスタートしました全国共同利用機関の学校危機メンタルサポートセンターが、学校安全管理において、全国の学校現場に受け入れられ、「なるほど」と具体的な提案をしていくことが急務と考えております。
 最後になりましたが、事件直後から全国の多くのみなさまから寄せられた義援金の一部をあてて、祈りと誓いの塔と銘文碑を建立させていただき、今朝、除幕式が行われました。その銘文を読ませていただき、私の報告を終了させていただきます。
 搭は旧正門から10メートルほど入って時計台のほうを見たところにあります。先ほど、学長も申し上げておりましたが、高さ4.5メートルあります。銘文碑は、旧正門の外側にあります。附属池田小学校は、この正門からの景色がひとつのシンボルゾーンでした。正門に立ち、時計台を見る。これが大きなゾーンでした。この祈りと誓いの塔に、その銘文のなかに私たちの思いが含まれていると考えます。



【祈りと誓いの搭の銘文】


平成13年6月8日

大阪教育大学教育学部附属池田小学校に暴漢が侵入し
8人の子どもたちの命が奪われ、多くの子どもたちが傷ついた。
我々は、このような出来事を二度と起こさないことを誓い
子どもたちにとって学校が安全で安心できる場所となることを願い
この出来事を深く悲しむ人々とともに
祈りをこめてこのモニュメントを建立する。

大阪教育大学
大阪教育大学附属池田小学校
大阪教育大学附属池田小学校PTA

(注)銘文碑では、日本語とともに英語でも表記しております。



どうもありがとうございました。

総合司会:これをもちまして、第1部を終了いたします。

(休憩)

 

「学校安全シンポジウム -子どもの安全をどう創りだすか-」


総合司会:これより第2部に入ります。
 第2部は、【子どもの安全をどう創りだすか】をテーマといたしまして、シンポジウムを開催いたします。
 ここで、シンポジウムのパネリストおよび司会のみなさまを順にご紹介いたします。
 壇上右側が、パネリストのみなさまです。

 最初は、中央のほうから東洋大学工学部教授の長沢悟さまです。長沢さまは、ご専門は建築計画学で、とくに学校建築について教職員や住民の方と話し合いを繰り返す計画プロセスをとりながら、全国各地の学校計画にかかわっておられます。附属池田小学校の事件後、文部科学省の学校施設の安全管理に関する調査研究協力者会議の座長として、「学校施設の防犯対策について」をまとめられました。現在、それをもとにした手引書の作成を進めておられます。

 その右隣が、池田市長の倉田薫さまです。倉田さまは、池田市のご出身で、池田市職員池田市議会議員5期20年を経て、平成7年に池田市長に就任されました。附属池田小学校事件発生以後、地元自治体として子どもの安全確保のために、各般にわたる取り組みをされています。また、平成14年に出版された著書、「首長の使命」、のなかで、地元自治体の長の立場から、附属池田小学校事件について、述べておられます。

その右隣が、学校現場を代表いただきまして、大阪市立九条南小学校長の有村道雄さまにおいでいただいています。有村さまは、大阪市教育委員会主任指導主事、大阪市教育センター首席指導主事を歴任され、前任の大阪市立苅田北小学校時代には、地域の方々と連携をされながら、こども110番の立ち上げに尽力されました。本日は、学校現場の校長という立場からのご意見を頂戴できるものと思います。

 パネラーの最後の方が、門真市PTA協議会から石谷真一郎さまにおいでいただいております。石谷さまは、平成8年から4年間、地域の子ども会の会長を、また、平成12年、13年と、小学校のPTA会長をお務めになったのち、平成14年、15年と門真市PTA協議会の会長をお務めになられました。現在は、同PTA協議会の顧問をしておいでです。石谷さまが中心となって、門真市全体に広がった学校安全への地域の取り組みは、マスコミ等に多く取り上げられ、全国の模範のひとつとなっています。

 続きまして、シンポジウムの司会のお二方を紹介いたします。
 舞台に向かいまして左側のお二方で、初めに、中央よりから、大阪府教育委員会指導主事の向畦地昭雄さまでございます。向畦地さまは、大阪府のご出身で昭和58年に大阪府立学校教諭として採用になったのち、平成13年4月からは現在の大阪府教育委員会に勤務されております。また、学校安全に関するさまざまな会議の委員としてもご活躍で、文部科学省の学校の安全管理に関する取り組み事例、事例集等の作成協力者、また同じく文部科学省の児童生徒等の防犯に関する教材等の作成協力者をお務めになり、さらに大阪教育大学の国立大学附属学校における安全管理のあり方に関する調査研究会の委員としてもご協力をいただきました。

 最後に、いちばん左におりますのが、大阪教育大学附属学校部長の岸本幸臣教授でございます。岸本教授は、住居学がご専門であり、現在、大阪教育大学家政教育講座の教授をしております。昨年7月からは、大阪教育大学に11あります附属高等学校、附属中学校、小学校、幼稚園、養護学校全体をとりまとめます附属学校部長を務めております。

 それでは、よろしくお願いいたします。

向畦地氏:シンポジウムを始めます。よろしくお願い申し上げます。
 平成13年6月8日からちょうど3年が経ちました。先ほど、安井先生からご報告がありましたように、調査研究会では、アンケート調査も実施され、まとめられました。その報告について、説明がありましたが、附属池田小学校の課題がいくつも述べられていました。
たとえば、門の管理の問題、来校者の確認の問題、また、危険の告知、通報の問題など、本当にたくさん挙げられているわけですが、それらをまとめて申し上げるなら、まず、侵入を防ぐ方法はなかったのかということ、侵入のあとでも犯行を防ぐ手段はなかったのか。あるいは、少しでも被害を小さくして、人命を救助できなかったのか、という点になってくると思います。
 私事ですが、ちょうど平成13年4月から大阪府教育委員会事務局に勤務しておりますが、大阪府教育委員会では、この事件の約1カ月半後、7月25日に、再発防止に向けて、「学校における児童・生徒の安全を確保するために」という、指針を出すことになります。そのなかで、次のようなくだりがあります。
 「授業中に、突然、暴漢に襲われ、多数の死傷者を出す事態については、想定だにしておらず、この点についての学校の危機管理が、完全に抜け落ちていたことは、学校教育に携わるものとして、率直に反省しなければならない。」自戒をこめて申し上げるなら、大阪府教育委員会もまた、述べています。おそらくこのことも最大の課題のひとつだと思います。
こうした附属池田小学校から提起された諸課題をふまえまして、子どもたちのかけがえのない命を守るために、行政、教育関係者、学校、保護者として、どのようなことをしていけばいいのかについて、シンポジストのみなさまから、ご提言をいただければと思います。
 そこで、本日の進行ですが、4人のシンポジストのみなさまから、最初に、事件についての振り返りや、子どもたちの安全に関する現状などにつきまして、お話をちょうだいしまして、さらに、それぞれの立場からこれまでの取組みや課題をご紹介いただきたいと思います。
 そのあと、お話いただいたことをもとに、意見交換、議論をしていきたいと思います。なお本来ですと、フロアのみなさまから、ご発言をいただきたいのですが、約2時間という限られた時間でございますので、壇上だけで進めさせていただきます。
 それでは、早速ですが、シンポジストのみなさまから、お話をいただきたいと思います。
 まず、最初に、長沢さんからお願いしたいと思いますが、附属池小事件をはじめ、ちょうど1週間前に起こりました佐世保の事件、あるいは通学路などにおける犯罪被害の増加、これらをみますと、安全という点で、子どもあるいは学校を取り巻く環境が変化してきているように思います。これは、学校施設を考える上でも、極めて重要だと思いますが、長沢さん、このことについていかがでしょうか。

長沢氏:先ほど、学長のご挨拶のなかで、子どもたちが子どもであるがゆえに、学校が学校であるがゆえに危険にさらされるということをおっしゃっていました。子どもは、国、地域、家の将来を作っていく力です。人々の教育、あるいは学校にかける期待もそこからきていると思います。おとなが学校で勉強している子どもを襲うのは、考えられないことでした。その点できわめて異常な事件だったと思いますが、私たちは、そういう事件が起きるということを知ってしまいました。私は、建築の立場から30年近く、学校の研究や学校づくりにかかわってきました。その間、標準的な学校建築が変化してきました。たとえば、教育方法に対応した教育空間、あるいは、豊かな生活の場としての学校のあり方、そういった点からですが、もうひとつの大きな軸が、地域との関係です。それまで、地域に対して閉鎖的だった学校が、生涯学習に対応する施設、あるいは、さらに高齢化の問題、子育て、子どもたちの居場所、防災など、福祉あるいはまちづくりの領域にまで及んで、学校づくりはまちづくりだという気運ができてきたところでした。
 平成12年・13年度に旧文部省、建設省、厚生省の合同の調査研究として、学校を核とした住環境整備の調査研究をしていまして、連携の意味、あるいはそれを実現する、みんなが参加する計画プロセス、そういった議論をしていました。そういう議論のまっただなかに、附属池田小の事件が起きたわけです。この調査研究は、翌年、さらに1年間、継続して、安全・安心をテーマにして、地域と学校との連携をもう一度考え直すということで、議論が進められました。その間、各地で子どもたちの教育にかかわる多くの方とお会いする機会がありました。みなさんたいへん深刻に受け止めると同時に、安全を共通の関心事として、具体的な活動が進みだしているという様子も感じました。
 先ほどご紹介いただきましたように、文部科学省の学校施設の防犯対策に関する協力者会議にかかわることになりました。学校については時に激しく議論を交わしながらも、基本的に夢ふくらむ仕事だと、私自身は思ってきました。それに対してこの防犯に関する議論は、重くつらいものでした。その間、先ほど、安井先生のご報告にも、ご遺族の方々からたいへんな思いの中でのご協力が得られたとおっしゃっていましたが、この調査研究でも同様に、たくさんのご指摘をいただきました。この場を借りて、感謝申し上げたいと思います。
 学校と地域の連携は、まちづくりとの関係も含め、安全そのものを守るためにも大事なテーマだと思います。大きな学校づくりの目標を堅持しながら、安全をどう守るかは難しい課題だと思います。
 調査研究のなかで、欧米の学校を調査する機会がありました。期せずして学校を刑務所にしてはいけない、あるいは、金属探知機で学校は守れないという意見を各所で聞きました。つまり、学校としての守り方があるということだと思います。
 仮に、事件の前に、この附属池田小のような事件まで想定した施設計画が提案されたとして、それがすんなり受け止められていたかどうか考えてみる余地はあると思います。しかし、一度経験してしまった私たちは、同じことを繰り返してはいけない。そのために安全に対する厳しい姿勢と具体的な対策が求められていると思います。

向畦地氏:ありがとうございました。学校施設に防犯という観点が強く入りこんできたのが、附属池田小事件でした。また、この事件は、「大人が子どもを襲う」という事件で、その意味でも、日本中が震撼したわけですが、子どもたちを取り巻く環境がずいぶんと危機的な状況に陥っており、このことを日本中が痛感するようになったのも、やはりこの事件からであったように思います。
 事件当時も、池田市長を務めていらっしゃった倉田さん、ここであらためまして、附属池小事件をふりかえってお気づきになられた課題などをお話いただきたいと思います。

倉田氏:ちょうど3年前の3時19分くらいに、何をしていたかなと思いますと、今日もこの会場にお見えですが、当時の市議会議長といっしょに、市長室でテレビを観ていました。隣で起こっている事件にもかかわらず、人工衛星や放送局を経由して、池田に電波が届いているテレビを、大変なことが起こったといいながら、なすすべもなく観ていたというのが、非常に寂しい現実でした。遠くの親戚よりも近くの他人ということわざがありますが、あの事件が起こってあらためて感じたのが、非常に近いところ、すなわち、池田市のエリアにある学校だけど結果的には遠かった。だから、あの事件が起こったという短絡的な結論に結びつくわけではないのですが、でも、もう少し近い関係であればよかったという反省をしました。
 6月8日は、金曜日でしたので、土日をおいて、長江教育長といっしょに、私たちが学校を訪問するときは、お悔やみなりお見舞いなりが私たちの仕事ではない、池田市の教育委員会が、あるいは、行政としての池田市が、附属池田小に対して、どんなサポートができるかというメニューを出そうと。たとえば、学校は休校せざるを得ないだろうけれど、仮に5~6年生だけでも授業を再開したいというのであれば、たとえば池田市立の緑ヶ丘小学校は何教室があいているだろうかと、そういうメニューを出そう。あるいはプール、あるいはこの文化会館、体育館、遠慮なくご使用いただいてけっこうですよといろんな意味で、お手伝いできるメニューを出すことができないだろうか。そういう相談をして、11日の月曜日に附属学校を訪問し、副校長とお会いして、いくつかのメニューを提案しました。これは冗談めいた話なのですが、当時、議会でもそうですが、池田市内にいくつ空き教室があるかとなると、ほとんど空き教室が出てこない。十年前と比べて児童数は三分の一も減っているのに、空き教室がないということはない。学校側が出してくれない。ところが、こういう事件が起こって、みんながその気になって考えたら、近くの緑ヶ丘小学校だけでも、10教室近くが空いてきたと。これはもともと空いていたのですが。そういう状態で、われわれはひとつの役に立ったかどうかわかりませんが、近くの他人としてのメニューを提供したのだなあということが、6月8日を迎えたときの第一印象で、今なお大きく反省をし、後悔をしている点です。以上です。

向畦地氏:ありがとうございました。近くの他人という表現をされましたが、まさに附属池小が、国立大学の附属学校であるがゆえの課題点も含まれているように思います。
 さて、附属池田小事件以後も、さまざまな場所で、子どもたちが犯罪被害にあっている現状がたくさんあります。有村さん、いかがでしょうか。学校でもさまざまな事件に心を痛めていらっしゃると思いますが、最近の状況を含めてご紹介をいただきたいと思います。

有村氏:従来から、学校においては警備および防災の計画を策定し、自然災害、あるいは火事などに対して、安全指導、避難訓練を行ってまいりました。しかし附属池田小学校のような事件、防犯の視点を入れた安全確保の体制が、学校としてとれていなかった。きわめて不十分であったということを、率直に認めざるをえないと思います。
 現在、大阪市の学校では、不審者を学校に入れないということを大前提に、正門玄関のオートロック装置、モニター付インターホンの設置、警察と直結する電話の設置等、いわゆるハード面の充実、安全教育、防犯教育等の実施等、ソフト面の対策を整えました。
しかし、事件を教訓化しているかというと、2つの点で不十分だと思います。
 附属池田小事件以降も、大阪市内において、子どもたちの安全を脅かす事件が続いて発生しています。こうした事態を考えますと、たとえば不審者侵入をとってみても、不審者が学校に入ってきたときに、学校教職員が、あるいは子どもたちが十分に対応できるのか。あるいは、校内の侵入阻止は一歩進んでいたとしても、登下校、放課後の子どもたちの安全が確保されているのかということには、課題が山積している現実です。
みなさんもご存知のように、インターネットの掲示板を使っての悪質な事件を簡単に述べたいと思います。
 去る4月22日の午後、インターネットの掲示板「2チャンネル」で、大阪の小学生を殺す、明日、絶対に殺すという書き込みがありました。同様の書き込みが、連休明けにもありました。相手はもちろん、場所も特定できない。九条のどこかも人相も何もわからない形のなかで、子どもたちへの犯罪予告がなされた場合、私たち学校、保護者、PTA、地域はどうした対応をしたらいいのか。実際、九条南におきましても、学校行事等を含めて、あるいは、23日の集団登下校をどうするのかということを含めて、対応に走ったという事実があります。幸い予告ですみましたが、いつもこれで終わるわけではないと思います。書き込み犯の特定、取調べこそが、より有効な犯罪抑止力になると思います。法的な整備を含めて、インターネット社会における犯罪に、われわれが有効な手段を用いていくことが大切だと考えます。
 私自身、校長として、教職員はもちろん、PTA・保護者、地域のみなさんとともに、さらに子どもの安全を確保し、生き生きとした学校、学校に来たら安心だ、勉強するんだ、友達と遊ぶんだという環境を作るために努力していきたいと思います。

向畦地氏:インターネットのお話を含めましてお伺いいたしましたが、私も保護者の一人といたしまして、非常に不安を感じているところではございます。保護者の代表といたしまして、PTA協議会の会長としてご活躍なさっていました石谷さんには、学校や子どもを取り巻く地域の状況などにつきまして、ご心配されたこともおありだと思います。その点につきましても、お話をお伺いしたいと思います。

石谷氏:門真市PTA協議会が、子どもたちの安全に対して、具体的に推進していった経緯について、少しお話をさせていただきます。
 私は、平成8年から本年まで、9年にわたって、子どもたちとのかかわりのなかで、地元地域の変貌を垣間見てまいりました。
 今から9年前、バブル経済が崩壊し、経済状況が悪化しはじめたころに、子どもたちが遊ぶ町の大規模公園におとなたちが侵食し、子どもたちが安心して遊ぶ環境でなくなっていく公園を危険なものとして感じていました。そのころから、安全な場所であるはずの公園が危険な場所に変わっていきました。社会環境の悪化は、とくに子どもたちを取り巻く環境の悪化は、世の中の経済状況の悪化に大いに関係するものと推察されます。また、子どもの安全をおびやかす加害者は、自分より弱いものを相手にする社会的弱者であり、社会に対する不安、不満、うっぷんを晴らす方法として、自分よりも弱い子どもをターゲットとしているのが事件であると想像できます。このような状況が子どもたちの安全を脅かす結果につながっているのだろうと考えられます。
 さて、私が直接的に危機感をもち、子どもの安全対策を行わなければならないと思いましたのは、平成13年にある中学校区で多発した痴漢事例が引き金になっています。当時、私は小学校のPTA会長をしていましたが、そのとき中学生だった私の次女が、ある日、夕食中に「お父さん、友達が痴漢にあったんだって。大声を出したら逃げて行ったけど、同じ犯人がすぐ別の子に痴漢するらしい。そんな変なおっちゃんが、朝、何人もいるんよ。お父さん、なんとかして」という声が私を動かしました。
 クラブ活動で、朝練のために早朝に登校する子、それよりも若干遅れて登校する子、普通に登校する子など、登校時の時間差を利用して、女子中学生を連続して襲う痴漢が、当時、おりました。
 大勢の中学生が被害にあっていることを知り、その現実を調査して、その中学校を中心とした近隣の小学校3校とで、痴漢対策連絡会を結成し、連絡を密にしてその対応策を行い、事件を沈静化させました。このことが、今のわれわれの活動に結びついています。その後。平成14年に、市内7中学校と17小学校の集合組織体である門真市PTA協議会の会長に就任すると同時に、門真市PTA協議会のテーマを、「1万800人の子どもたちの安全のために!」として活動を行いました。

向畦地氏:弱い子どもが狙われる痴漢事案から対策協議会を立てられて、PTA協議会の活動につなげていっていただくその動きについてご説明を頂戴しました。
 ただいま、お話いただいた課題あるいは昨今の状況を踏まえまして、子どもたちをいかにして守っていくのか、その参考となるお話をみなさんにお伺いしたいと思います。
では、いったん、進行を変わります。

岸本氏:ありがとうございました。
 今、子どもたちの置かれている危機的な状況、犯人が学校の中に侵入してくるという状態以上に、学校外もそのような環境になっているなかで、それぞれ非常にご苦心されているということがよくわかりました。
 先ほど、どちらかというと現状をどう理解するのかということで、お話いただきました。もう一巡、具体的に現状認識を受けて、どういう取り組みが考えられるのか、どういう課題が見えているのかについて、お話を伺いたいと思います。
 石谷さんのほうから、取り組みについての動機づけのお話がありましたが、具体的に門真のPTA協議会で取り組まれた内容についてご紹介いただければと思います。

石谷氏:門真市PTA協議会が行いました安全対策の流れについて具体的にご説明させていただきます。
 門真市PTA協議会は、携帯電話やインターネットを使いまして、事件事故情報の一斉配信システムを作り上げています。ここに行きつくまでに、いろんなことがありましたので、そのことを踏まえてご説明します。
 先ほど話しましたが、大規模公園で子どもが悪さをされる事件が少しずつ見えてまいりました。そのときにPTAが行ったことにつきましては、まず、今、公園に行くと、痴漢に注意とか、子どもにとっては、なんら影響のない看板がたくさん立っています。痴漢に注意と言われても、子どもはどう注意をすればいいの?という具体性に欠ける看板でしたので、私たちは、おとな向けの看板と子ども向けの看板をペアで作りました。
 子どもたちには、「公園には、いろんな人が来ます。次のことを守りましょう」という具体を訴えました。ひとつは「知らない人には、絶対についていかない」「ひとりでトイレに行かない」「みんなで遊んでみんなで帰る」「暗くなる前に帰りましょう」「怖いときは大声で、助けてと叫べ」という看板を子どもたち向けに作りました。その看板の横に「地域のみなさまへ、子どもたちの安全へのお願い」という看板も作りました。「子どもにいたずらする痴漢、変質者が出没しております。あやしい者がおれば、行動を監視し、必要があれば、110番をお願いします。何かあれば大声で助けを求めてください。みなさま、どうか子どもたちを見守ってあげてください」。このようなペアの看板を大規模公園すべてにつけました。もちろん、公園を管理しているのは門真市役所なので、門真市に設置の依頼を行いまして、PTA協議会が大規模公園にまず看板を立てるところから行動を開始しました。
 同時に、24校のPTAの生活指導委員会のお母様方にお願いして、パトロール巡視中という看板を、自転車のかごにつけていただきまして、だいたい、 15~30名くらいの方々が、パトロール巡視中という看板をつけた自転車で、買い物に行くときからも町をうろうろしていただく形で行いました。
 次に行いましたのが、子ども110番のナンバリングパネル240枚の設置です。みなさまのところにも、子ども110番の旗はたくさん立っていると思います。ただ、無作為に子ども110番の旗が立っていても、子どもが飛び込んでいってもそれに対応するのに時間がかかってしまいます。まず、私どもが行いましたのは、子ども110番のパネルを、腐らないようにプラスチックボードにしました。そのパネル一枚ずつにナンバーをつけました。門真市は、7つの中学校があり、その傘下に小学校があるのですが、たとえば、1中は100番台、2中は200番台、3中は300番台、3中校区の某小学校は、310番台、某小学校は320番台。すべてにナンバリングをしました。ナンバリングをした子ども110番のパネルを家庭に配りまして、もちろん、配付場所は登下校経路、あるいは公園に近いところで。ひとつ重大なところなのですが、子ども110番の旗は無作為に立てますと、お留守になっているところに旗が立っていたり、昔、自治会長をされていた家にも立っています。これだと意味がありません。確実に子どもの対応ができるというところにお願いをして、住所・氏名を控えさせていただき、ナンバーと住所氏名を控えたものを警察に届けました。子どもたちが飛び込んできたら、ナンバーを警察に言うだけで、門真警察は動ける体制をとっていただきました。中学校校区で分けますと、だいたい1つの校区のなかに交番は2箇所ございます。その2箇所のうちのいちばん近い交番から子どもが飛び込んだところに行けるように門真警察にお願いして、地図と住所氏名とその状況を伝えまして、もし、子どもが来たら、こういう形になりますので、番号が警察に連絡があったら、近くの交番からすぐに行ってくださいとお願いをしました。
 次に、小学校、中学校の生活指導委員会の委員にお願いして、自分たちの子どもにとっていちばん危険な場所を抽出してもらい、それを門真全域の地図にプロットしてみました。その内容は、痴漢変質者出現場所、交通関係、川や廃屋などを集めますと、151箇所の危険場所が出てきました。門真は12.28平方 kmしかありません。そんな小さいなところで151箇所も危険な場所があるのがわかりました。特に、痴漢変質者出現場所62箇所については、危険場所特定看板を設置しました。このへんには、痴漢変質者が出るんだと見える看板を作りました。
 そのあと、平成15年度に、子どもの安全確保のためには、危険情報の共有化と、迅速な情報入手が不可欠であるという観点から、専門委員会となるIT推進委員会を立ち上げ、携帯電話のメール機能とインターネットを活用した危険情報の瞬時一斉同時配信システム、双方向性の情報一斉配信システム「セーフティネットワークシステム」を開発しました。
完成まで、3~4カ月かかったのですが、携帯電話からメールを送るだけではありません。携帯からメールを送るには、機種やメーカーによって、メールの到着に時間差が生じるなどの問題がありました。そのへんのこともインターネットを経由して、携帯メールをすれば、同時にメールが着くのがわかったりとか、携帯電話によっては、文字数が短かったり、文字化けするなどの問題をクリアしまして、昨年の11月15日に門真市PTA協議会の研究発表の中で、発表しました。
 このシステムの特徴は、携帯電話からインターネットを活用して、双方向で危険情報の配信ができるということです。また、携帯電話やパソコンを持っておられない方には、ファクスや、パソコンによる合成音声による電話配信も可能としていますので、文字が読めない人や、携帯を持っていない人にも対応しています。
 そもそもこのシステムを開発するに至った理由は、子どもたちが事件事故にあった情報は、今までは、子どもが学校から持って帰ってくるプリントしか保護者のもとには届きませんでした。たとえば、実際にあった事例ですが、朝、中学生が登校中にある男にナイフを持って追いかけられ、かばんで防御したが、犯人は逃げてしまった。その情報が学校から帰ってきたプリントで、「きょう、こんなことがあった」と知らされることになります。これでは、親としては、なんら対策が取れない。たまたま子どもたちは無事に帰ってきたが、もし事件が起こっていたら、誰が対応するのか、ということで、このシステムの開発に至りました。
 もうひとつ、このシステムを作り上げた効果としては、これまでは、誤った情報やうわさ、とくに性犯罪に関する情報は間違ったうわさが被害者を逆につらい目に合わせていました。みなさんが同じようにたくさんの方が同じ情報を共有すれば、そのようなことはなくなるだろう。「あの小学校のあの子がいたずらされたらしい」という話が、1週間で大きなうわさ話しに広がり、結局、その子は学校にこられなくなったという事例もありました。それなら、みんなに本当のことを教えてあげればいいということで、たくさんの方に情報を配信するのもひとつのメリットだと思っています。
 お手元に、門真市セーフティネットワークシステムについての資料が2枚あると思います。その2枚目のいちばん下に、門真市PTA協議会のURLが書かれています。そのホームページに、このシステムについて、なんの隠し事もなく書かれています。このシステムがたくさんの人に使われて、子どもが安全になるのであればいいではないかと、開発者で保護者でもある萩原氏がシステムをオープンにされています。
 一方で、このシステムを作るのに、いろんなところからいろんな圧力がありました。情報を配信するのだから、誰が責任を持つか、文面はどうするのか、子どもを傷つけたらどうするのかという話も出てきました。われわれは、情報の配信問題、プライバシーや文章の校正については、門真市教育委員会の教育長のご指導のもとで、教育委員会と校長会とPTA協議会で、プロジェクトチームを作りまして、セーフティネットワークシステム運用要綱と実施要綱を作りました。その運用要綱、実施要綱についてもホームページに詳細に書いています。
 ちなみに現在、登録会員は1700名。この2年間に子どもたちの安全のための環境整備をしてきましたが、ほぼ計画どおりに構築できたと自負しております。ただ、いちばんありがたかったのは、私どもの作り上げたシステムをマスコミに取り上げていただいたおかげで、門真市の市民の方々が、子どもたちの危険な状況を認識していただけたのが、いちばんありがたい結果となってつながっています。
 今、門真市のいろんな社会団体の方が子どもたちの支援をしていただいています。ある小学校では、団体のおじいさん、おばあさん、あるいはご婦人がたが、1年生の下校に付き添っていただいているところもあります。帰りに何か事件があったら怖いだろうということで、私どもが要望しているわけではありませんが、あちらこちらの子どもを送り届けてくれています。
 私どもは、セーフティネットワークシステムを使って危険情報を流していますが、本当にありがたいのは、このようなことであればわれわれも手伝いましょうという市民の方がたくさんおられるのがわかったことです。
 今、われわれの活動目的は、大きく前進しようとしています。

岸本氏:今、いろんな取り組み事例をご報告いただきました。とくにインターネットを使って迅速に的確に多数に情報を共有するという効果的な事例をお伺いしました。
 有村先生のほうからは、学校に不審者が侵入した場合に対応する能力には、限界があるのではないか。侵入を許さないというのがひとつの大きな課題になってくるというのと、もうひとつは、両刃の刃のようなところがありますが、インターネットを使ったバーチャルクライシスのようなものが出たら、対応ができない。情報を共有する点では効果的ですが、今度は、違った次元の犯罪がそれを通して行われるという非常に苦渋に満ちた状況が問われているわけですが、先ほどご提案いただいた問題認識のなかから、具体的な取り組みや課題があればご紹介いただきたいと思います。

有村:私の学校だけではなく、大阪市内各校で取り組んでいることを2つほど具体的にお話します。門真のような事例には及びませんが、私たちはこういうふうに考え、どういった組織で行おうとしているかということ。もう1点は大阪市としてどのような形で、子どもたちの校外における生活を守ろうとしているかについて、少しふれていきたいと思います。
 先ほど、子ども110番の家に番号をつけていると聞き、これはすごいと思いました。このこども110番の家は、地域の人が子どもたちを守ろうということで、駆け込み寺の意味合いかもしれませんが、なんとか子どもたちが逃げ込めるところということで、商店や会社、コンビニ等も含めた形で平成9年以降作られています。しかしながら、地域の人たちが作ってくれた子ども110番の家を子どもたちが熟知していないという現実もあります。現在、始まっている総合的な学習の時間、生活科の時間、あるいは社会科の地域学習の時間において、子どもの家110番が地域のなかの通学路のどこにあるのかというのを、子どもたちが校区地図に書き込んでみる、あるいはスタンプラリーという形で自分たちの校区にある子ども110番の家をまわろうという取り組みをされている。そのなかで初めて子ども110番の家の人と話しをし、子どもたち自身も「そうか」と得心できる。安心もできる。顔も知らないところに飛び込むのではなく、顔を知っている子ども110番の家に飛び込めるという形を作っていくのは、教職員としてもきわめて大切だと思っています。
 もうひとつ、たとえば、昔だったら、子どもたちが登校しようと思ったら、玄関で「行ってらっしゃい」という声かけがありました。九条南も歴史を重ねている地域ですので、こうした温かい声掛けがたくさんあります。市内の校区においても、この危ないときにこそ、登校するときや下校するときに、玄関前に立ってあげよう、ジョギングや散歩の時間も子どもたちに声をかけよう、という取り組みをいろんなところで始められています。
 これらを支えているのは「はぐくみネット」。たとえば、九条南でいえば、九条南小学校区教育協議会、名前がかたいのですが、地域のいろんな団体があつまって、子どもたちの健やかな育ちを地域における人と人とのつながりによって、保障していこうという取り組みを、大阪市教育委員会のほうで始めております。このなかでは、単に学校教育の支援ということだけではなく、学校教育の支援にゲストティーチャーとして、地域の人に入ってもらうなかで、「君は、だれだれのお孫さんか」というまさに人と人とのつながりが、学校教育のゲストティーチャーだけではなく、地域における先生として子どもたちが見るようになるということも、生まれてきています。
 これらのことは、自分の校区の子どもたちの危ない様子を聞いたおとなや地域のお年寄りの人たちが、何か私たちにできることはないかというところから出発してきたと思います。
 現在60校、今年120校の小学校区で「はぐくみネット」ができます。298のうちですから、まだ半数に至っていませんが、この形をさらに進めていくなかで、ごく自然な形で情報を共有して、学校の子は、まさに地域の宝なんだと。学校、地域、家庭がいっしょになって、子どもを育てていきたいと思っています。
 もうひとつは、大阪市の管理作業員さんが、「営繕作業班、営繕園芸事務所」というのを作っています。これは建物修理や学校のなかの剪定等をしていただく組織です。もうひとつは学校間の文書連絡をするところとして、「校園事務所、逓送事務所」というのがあります。
営繕のほうが4箇所、逓送事務所が11箇所あります。たとえば、逓送事務所は、大阪市内にある520余の校園を毎日、午前、午後の1回ずつ回っています。車の台数は、営繕と合わせると70台ある。これで、市内の校園を回っているのも大変なのですが、回っているだけではなく、そこに現在パトロール中であるという表示をして、巡視をしてもらうと同時に、子どもが危ないというときは、すぐにその車に乗せられるような体制を作ろうとしています。こういったことは、取り立てて珍しいことではありません。
 たとえば9月に九条南においては、ウサギ小屋を営繕園芸事務所に作っていただくことにしました。ほぼ1カ月近くかかりましたが、ずっと校庭でウサギ小屋を作っていただいているときには、「こども安全パトロール中」というものを作業中、ずっとつけていただいていました。これをつけることが先ほど、学校内に不審者が侵入したときにはどうしたらいいのかということなど、非常に私たちには大きな課題がありますが、学校の中には、たくさんのおとなが子どもたちを見ているんだということをわかってもらえる意味でも非常に効果的なことではないか、より大きなもっとすばらしい、門真さんのようなことができればいいのですが、市全体としても人と人とのつながり、巡視の目を細かくしながら、子どもたちを守ろうという取り組みを進めさせていただいております。

岸本氏:ありがとうございました。地域の人々に積極的に参加していただくようなしくみをご紹介いただきました。
 倉田さんからも、情報の共有や危機状態の共有ができていないというお話しがありましたが、自治体が支援やいろんな情報を出していこうとするときに、どのような取り組みが具体的にできるのかという事例からご紹介いただければと思います。

倉田氏:もう一度、頭を3年前に戻していただきたいのですが、教育長とメニューの提案をして、その次にわれわれにできることは、小学校といえども、教育大学附属池田小学校ですから、先生方は大学の意向を伺っているなと、スピーディーに行動できないのではないかという懸念を抱きました。池田市は、教育大学の跡地利用の特別委員会が議会にあったので、議会の皆さんとご相談の上で、大胆で勝手な提案をしました。たぶんあの小学校では授業ができないだろうと。その大学の跡地が残っているわけですので、いっそのことそこに建て替えればどうかと。事件のあった場所をメモリアルパークにする。あるいは子どもの救急救命センター、あるいは、心のサポートセンターにしてはどうかという提案を国にさせていただきました。
 1日のうちに3人の大臣、2人の副大臣、3人の事務次官にお会いができたのも、あの事件の起こった不幸なまちからやってきたということでご配慮いただいたと思います。
しばらくして、知り合いの代議士と話しをしていたら、こういうふうに言われました。
「倉田さん、あなたの提案は非常にわかる。女房も新聞を読んで、池田市の提案はきわめて理解しやすいと言っている。ただし文部科学省に問い合わせると、こんな答えが返ってきた。あれは池田市が勝手にやっているんです。なぜなら、学校当局でもなし、附属小学校のPTAの方もそれを欲しているわけではない。あれは池田市単独のパフォーマンスですよ」と。こういうことで片付けられてしまったのがひとつ。ただ、私どもの意向を大学当局、小学校のみなさん方にも理解をしていただいてできたのが、今日の「祈りと誓いのモニュメント」だと思っています。でも、われわれは、極端な提案だけはしておこうと。
 次になすべきことは何かというと、実は事件が起こってすぐ子どもが飛び込んできた市場のおじさんがいるのですが、その人から義援金を持って申し入れがありました。「自分の気持ちとしては、なんとかしたいのですが、どこに渡していいのかわからない。」と。事件が起こってすぐですから、学校当局はパニック状態。そんなときに義援金の窓口ができているわけではなかったので結果、お返ししました。お気持ちだけいただければありがたいと。このへんが市長の勝手な思いですが、ある種、もったいないなあ、と思いました。あのパニック状況の中で多くの池田市民が学校の安全を考えるときに、少々のお金を出してもいいから、行政が先頭になって動いてくれという要望もあったものですので、安全条例に基づく「安全基金」を設置しました。池田市では、マッチングギフト制度という寄付制度があります。たとえば一千万いただいたら、一千万の池田市の税金をそこに注ぎ込んで、二千万にすると。おかげさまで1千万に近い寄付が集まりまして、二千万を超える基金ができました。
 次は、その基金を有効に安全のために使おうということで、ひとつは、有人警備です。しばらくの間は、ガードマンの有人警備をしましたが、それはいつまでもできるわけではない、ということで、池田市では、セーフティーキーパー構想に基づく安全パトロール隊を3年前の10月に発足したわけです。安全基金でダイハツのムーブを1台、買いました。ありがたいことに、池田市にはダイハツの本社がありますので、市で1台買うと、ダイハツさんが1台くれました。これで2台になりました。
かわいいウオンバットの絵を描いて、かわいいけれど目立つ安全パトロール車が2台。毎日、消火栓の点検に行っている消防車があるので、これも安全パトロール隊に入れようと。道路パトロール車があるので、これも安全パトロール隊に入れようと。4台の安全パトロール隊が、先ほどの学校の見回りといっしょで52 の施設をまわって点検をするシステムができました。ちなみに事務服を来て帽子をかぶっているだけでは目立たないので、今日6月8日から、カーキー色の派手な制服にしました。彼らには、逮捕権も質問権もないわけですが、安全パトロール隊が歩いているということが目立っていればいい。犯罪を起こそうとする人は、そういうものを見たら、身を隠す神経になりますので、そういう形で動きました。
 実は、三年前の事件のときに、儲かった会社があります。内緒にしておいてもらわないといけませんが、阪急タクシーです。当時、先生方がお見舞いにいかれたり、いろんな交渉で夜、遅くなられたりしたときに使われたのがタクシーなんです。阪急タクシーは池田に本社がありますので、阪急系列の阪急タクシーがたいへん活躍をいただいた。そうすると、その運転手さんたちが、僕たちも何かできないかということで、運転手さん同士で話しをされたそうです。「あの事件が起こって、呼んでもらえるのはうれしいけれど、うしろの座席の会話を聞いていたら、本当にたいへんなんだなと、何かできないか」、それならば池田市でセーフティキーパー構想に入ってくれませんかとお願いしました。何かあったときの見守り部隊になってください。何かあったら、警察に通報いただくだけでいいんです。阪急の無線局に通報いただくだけでいいんです。運転手さんによっては、毎日、附属池田小学校の前を通って車庫に帰るんです。何か起こっては大変だから、自分たちでもお手伝いしようと。ということで阪急タクシーがセーフティキーパーの仲間になりました。
池田の郵便局の人も仲間です。郵便配達に行っている人が仲間です。池田タクシーも今年から仲間になりました。それから池田のガードマンの会社も仲間になってくれました。これは、池田市で、危機管理課を発足して、危機管理体制をより充実しようという姿勢を発信したら、受けていただきました。
 来月の7月8日、池田市で市民安全大会を行います。6月8日に事件が起こって、われわれの池田市における会合はすべて、黙祷から始まりました。どんな会合もすべてあのいたましい事件で犠牲になった8名のご冥福を祈って、黙祷。でも、その黙祷をわれわれはいつまで続けるのだろう。夏になってきたら、盆踊りや夏祭りの時期です。自粛をしてやめるべきだという意見もありました。当時、花火大会は中止としました。でもそれは違うだろう。子どもにとって夏休みで夏祭りは楽しみなはずだし、天国に行った8人の天使もおそらく天国から、あの祭りを見たいと思っているはずだという思いのなかで、池田市としてけじめをつけようということで、事件から丸1カ月後の7月8日を安全の日ということに決めて、7月8日に安全大会を開催しています。今年で4回目になります。
 この安全大会の日に、門真市のいいところを見習おうということで、6月1日から申し込みを受け付けて、今日、テスト送信をしました。池田市特有の「安心メール」というシステムです。これは携帯電話のメールシステムで、さっき言われたのですが、「メールだけだと高くつく。インターネットを使わないと」と。これからもうちょっとわれわれも勉強しなければいけませんが、1000人を超す登録をいただいて、今日、テスト送信をしました。7月8日は、実際に事件を起こします。池田のどこかの公園で連れ去り事件が発生したということで、瞬時に安心メールで発信をし、セイフティキーパーに連絡をします。何時間以内に犯人が発見されて逮捕されるか。これを警察との連携のもとで、池田で一度、模擬訓練をしようと思います。今、犯人役を公募しているのですが、なかなか犯人役は現れないので、もし応募者があれば、お願いしたいのですが。そういう形でいろんな人の見守りの目の数が多いことが、いかに犯行を未然に防ぎ、犯行が起こってもいち早く逮捕につなげられるかという実験を7月8日に行います。
 安全基金、まだわずかに残っていますから、たとえば、今年は、小学校の児童全員に、防犯ブザーを持っていただくようにしました。各学校の校長先生に相談して、安全基金から1校100万しかお金がない。有人警備をやめる代わりに100万円のお金を渡すから、うちの学校は100万円をこういうふうに使いたいという提案をしてくださいとお願いをしました。たとえばモニター付インターホンの設置など、そういうふうにしながら工夫をして、池田を二度とあのような事件の起こらない安全な町とするために連携を取りながらがんばっているというのが実情です。

岸本氏:子どもたちを犯罪や危険からどう予防するのか、そのためにいろんな取り組みや地域の方の参加があります。全国的にみても、「わんわんパトロール」など地域の方が非常に積極的に子どもたちの安全のために参画してくださっています。
 長沢先生が学校というところは、安全な空間だという共通理解があり、学校には学校特有の守り方があるのだというご提言をされました。「地域と連携して守る学校」をどういうふうにとらえていけばいいのかについて、お話していただきたいと思います。

長沢氏:安全を守るためには、門や塀などの施設設備的なものがありますが、基本的には、システムとしてとらえないとだめだと思います。安全を守るのは、ひとつひとつの足し算ではなく、掛け算です。どこか抜け落ちていたら、つまり0を1つかけたら答は0となる。トータルには安全は守れない。そして施設設備だけではなく、そのシステムには人もかかわるということだと思います。またその学校を施設設備とかかわる人々とが、点として守るのではなく学校を取り囲む面として守る。さらには学校と地域をシステムとしてとらえて、全体を安全のためのシステムとして組み立てていくことが大切だと思います。地域との連携を強めることが安全のシステムを作ることにつながる。そういういいサイクルを作りながら、どう守っていくか考えることが大事だと思います。
 スライドを見ていただきたいと思いますが、限られた時間で、見苦しいところがあろうかと思いますが、イメージを心にとめていただいて、安全について考えていただくときのヒントにしていただければと思います。

(スライド開始)
 「開かれた学校」という言い方が、事件との関係でいろいろ議論されました。開かれた学校という言葉が誤解を生むとすれば、地域と連携するということでとらえていく必要があると思います。ご覧いただくのは、具体的に地域といろいろ連携している例です。地域の教育力を活用する。それも地域との連携です。新しい町のコミュニティケースの拠点として学校をとらえていこう。そういった場合に、学校支援、ボランティア、防犯パトロールなどがまた安全につながっていく。
 高齢化が進む地域とのコミュニティ再生、市民と行政の共同による安全な町づくり、新規ニュータウンのコミュニティ再生、など。学校を中心にすえながら、地域のことを考えていくところに可能性、テーマがあると思います。それを、きちんとおさえていきたい。

(スライド)

 そういう地域づくりの例を写真で見ていただきます。これは、ダムで沈む地域が、地域再生の思いをかけて、同じく沈む公民館、幼稚園と複合して作った例です。全体を年代をこえて学ぶ場として、これは中郷(なかさと)地域といいますが、中郷学校と呼ぶことになりました。

(スライド)
 小学校、体育館、公民館、幼稚園があります。

(スライド)
 そういう場で地域と子どもたちがいっしょになった活動が展開されます。

(スライド)
 一方これは、都心の複合的な施設の例です。

(スライド)
 これもそういった例で、小学校があり、公民館があります。ただこれは附属池田小の事件を考えると、少し考えなければいけない点があります。つまり大人と子どもが混在する空間をどう守るかという問題です。この空間への出入りは、ガードマンが見守っています。

(スライド)
 今の学校です。特別教室と地域の利用する施設を廊下をはさんで配置しているのですが、これは附属池田小事件を考えると考え直す必要があるかもしれません。

(スライド)
 人口750人という小さな村の学校です。3歳の子どもから小中学生、さらに大人までいっしょに学ぶ場を作ろうということで、三十数回議論をしてできました。これを全体を浪合学校と呼ぶことにしました。先程の中郷学校はこの考え方に共感して名付けられたものです。

(スライド)
 さらに発展して、村全体を学校と呼ぼうということにしました。ところが最近になって、当時かかわった人たちから、昔の学校づくりのときの精神を思い起こす会を持ちたいということで相談を受けました。それは附属池田小の事件が起きたあと、管理が中心になってしまった。自分たちの学校という思いで作ったのに、そこに赴任してくる先生にとっては、小さな村の学校ではあっても、管理を気にされ、たいへん敷居が高くなってしまった。そこで、当時、どういう精神で学校づくりをしたかということを若い人、当時かかわった人といっしょに議論しようということになったのです。そのときにいろいろ議論がありました。敷居を低くするために、自分の場を取り返すためにどうしたらいいか。それには、地域の人たちがまた学校の安全を守るためにどういう役割が果たせるか。自分たちの新たな役割を考えながら、もう一度、地域の中の学校という姿を考え直していこうということになりました。

(スライド)
 つまり、自分たちの思いの場、地域づくりの学校というふうに考えても、安全安心が確保されなければ、その思いが遂げられないという状況があるわけです。安全安心を守るときに、学校と地域の連携という課題を忘れないようにしたいと申しましたが、逆に、それを実現するためには、安全安心を考えなければいけないという、それが今の学校の置かれている状況だと思います。

(スライド)
 これは学校での事件数です。

(スライド)
 ちょうど昨日の新聞に出ておりました。校内への不審者侵入、それから登下校時の被害ということで、15年度の統計です。14年度と比べると、共に倍近くなっています。弱者を襲う社会といいますか、われわれは、そういう社会を迎えてしまっているのかということで、暗い気持ちになりますが、それに負けない対応をどう考えていくかが大切です。

(スライド)
 安全を守るための設計の目的は3つくらいに整理できます。まず犯意の抑制です。2つ目が被害の軽減。侵入されたときの対応ですね。もう1つは、安心感の向上です。そのためのシステムをどう組み立てていくかが課題になります。

(スライド)
 そのための施設計画の基本的な考え方として、基本的に4つの原則が言われています。
 ひとつは、監視性、視認性の確保。つまり見通しをよくするということです。2つ目は、領域性の明確化。どの領域・範囲を守るのか、あるいはどの領域にいる人については、きちんと対応しなければいけないか。3つめは、接近侵入の制御ということで、不審者の動きを限定する、あるいは具体的に接近侵入を防ぐ。もうひとつは、被害対象の強化ということで、こわされにくくするということです。たとえば、塀についても門についても、いくつかの役割をあわせもっています。それぞれのケースに応じて、どういう役割をもたせるか。それによってシステムを組み立てていくかが大事になります。たとえば領域性についても、学校全体を守るのか、校舎の中を守るのか、あるいはある学年の教室とその前の庭を守るゾーンとして明確にするのか、それを明確にするための区画の仕方、あるいはそこへの接近侵入の防止、それらを総合的に組み立てていって、施設的には安全安心で守りやすい空間ができるということになります。

(スライド)
 既存の学校の場合は図面による点検、現場における点検が必要です。先ほどの安井先生のお話の中にいろんなケースを想定してということのご報告がありました。図面の中で、現場の中で、みんなで確認していくことが大切だと思います。

(スライド)
 それをどう守るかということです。施設設備で守る、人が守る、地域が守る、これ全体を組み合わせて守る。この組み合わせがシステムということになります。どれが落ちても、学校と地域の全体の安全は守れないということになります。

(スライド)
 これは、先ほどから話が出ているPTAによる子ども110番で、市によっていろいろなロゴマークがあります。

(スライド)
 見通しを良くし、守る範囲を明確にし、侵入を制御するということでは、京都の日野小学校の事件のあとの対応の仕方が好例です。地域の環境をよくしながら視認性を高め守りやすい空間を作った、そういう例としては、高く評価できると思います。

(スライド)
 一方、これは、アメリカで行われている門と塀で守る例で、二重のゲートがあります。

(スライド)
 手前にゲートがあり、開くと奥のゲートが開く。中庭は安全な空間です。防犯的に不安のある地域ということで、こういうシステムを取り入れています。

(スライド)
 これもアメリカの例で、犯罪の多い地域にある小学校です。

(スライド)
 門から10m程のアプローチを通って、玄関ホールに入ります。

(スライド)
 そこで安全を確認してから中の扉が開く。これが子どもたちの入るエントランスです。

(スライド)
 そういう守り方をしなければいけない場合や地域もあるし、そういう守り方はいやだということもある。いやだという場合は、安全確保のためにどういうシステムを組み立てていくか、人がどうかかわっていくかの議論が次にこなければいけないわけです。

(スライド)
 アメリカの高校です。塀で守るタイプで、無断立入についてたいへん厳しいことが書かれています。

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 町の警察官が各学校に専属に配属されて守っている。防犯教育や避難訓練にも関わっています。アメリカにはこういう地域もあります。

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 これは緊急時のマニュアルで、レッドブックと呼ばれています。

(スライド)
 来校者に対しては、基本的にはウエルカムの姿勢ですが、ちゃんと来訪者登録をし、名札をつけることが求められます。

(スライド)
 登録する受付は、とてもアットホームな場所の雰囲気づくりがされています。受付をした瞬間に、その人も子どもたちを守るパートナーになる。そういう場です。そういう場としての雰囲気をもった場所になっています。

(スライド)
 その代わり、ルールは非常に厳しく、ここで登録をしていないで、中にいることが発見されたら、かなり厳しく注意されます。2度見つかったら、何カ月か来校は遠慮願うというルールがあります。
 ボランティアなど学校を支える人たちには、別の名札が用意されています。

(スライド)
 とくに学校にかかわりのある人たちのメンバーズボードです。こういった心遣いが人々の学校に対する協力意識が増していくと思います。

(スライド)
 教室の入り口の近くにある緊急時のマニュアルです。

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 これもそうです。

(スライド)
非常用電話で、表示されている911が緊急通報ナンバーです。

(スライド)
 避難訓練の様子です。たとえば、暴漢が侵入したり、火災やサイクロンが来、近くで化学物質を積んだ列車が転覆した、など、様々な場合が想定され、それぞれどういうふうに逃げるか、地域、警察、消防と連携をした避難訓練が、常時、行われています。

(スライド)
 これは、避難した後、子どもの安否を確認するために全員の写真入りのリストが用意されています。

(スライド)
 そういったものが七つ道具として、非常ボックスに入れられて、常に対応できるように用意されています。物もからめて守る体制を整えているということです。

(スライド)
 一方、これはイギリスの小学校で、塀はたいへん低い。乗り越えようと思えば乗り越えられる。でもこの塀は、先ほどの領域性を作るという点では重たい塀です。この中に一歩入るとそこにいる人は厳しく問われる、あるいは厳しく問う姿勢を各教職員がもっているということです。

(スライド)
(スライド)
(スライド)
 これは日本の例です。
 今までの学校の校門は開閉の役割だけで、入っていい人に対するしつらえが多くの学校でなかった。地域の人をきちんと受け止めるための門を作っていくこともまた大事です。

(スライド)
 地域が学校を守るということを基本に、地域で子どもを育てていこうという一環のなかで安全の問題もとらえている町の例ですね。

(スライド)
 これはゲストティーチャー用の名札です。

(スライド)
 PTA用のカードがあったり、評議員のカードがあります。

(スライド)
 今日は通学路のお話もありましたが、通学路の安全点検で町会長さんも先生もいっしょになって歩いて点検をする。それをみんなで発表しあう。目標を明確にもって、安全のシステムを構築する。ひとつひとつの施設、あるいは人、あるいは地域がかかわるなかで、もう一度、学校の安全を見直し、それを地域づくりとつなげていく。そういう知恵と体制が求められているように思います。

岸本氏:ありがとうございました。
 パネラーのみなさんにそれぞれ具体的な取り組み、事例について詳細なご紹介をいただきました。時間が限られていますので、十分な意見交換は難しいと思いますが、若干の意見交換をしていただければと思います。
 先にご発言いただいたことについて違った側面からのコメントでもよろしいし、ほかのパネリストの方々へのご質問でもいいと思います。

倉田氏:門真に7つの中学校があって1万人をこえる生徒・児童がいらっしゃると思います。われわれの反省でいきますと、附属の小学校、中学校のPTAのみなさんにも、池田市のPTA連合に入っていただくよう呼びかけをしていこうと思います。門真の例でいきますとどうですか?

石谷氏:セイフティネットワークシステムについては、マスコミに取り上げられましたので、いろんなところから問い合わせが入るようになりました。たとえば、「うちは、門真のPTAではありませんが、情報はもらえますか」「うちの孫は幼稚園だけど、情報をもらえるのか」などありました。そのようなかたがたについては、PTAではないのですが、保護者としては、子どもを守る気持ちは同じですので、アドレスさえちょうだいできれば、お送りしますよということで、みなさんに入っていただいております。
 私どものシステムはややこしいように思いますが、アドレスさえいただければ、いつでもお送りします。
 情報を配信したいという方については、少し勉強をしてもらわなければなりません。メールを送るのは非常に簡単なシステムです。
 受信をしたいという方につきましては、いろんな団体の方が入っておられます。青少年育成連合会の方や、子ども会連合会の方も入っていただいています。そのようなオープンな形で運営をしております。

岸本氏:附属学校というのは、地域と足場を共有する部分が非常に少ないという弱点があります。そういう点で私たちは、各附属学校に「学校安全管理委員会」を設置して、地域との連携強化に努めていますが、それをこえて、あるいはその地域のPTAのなかに広く連携していく必要があるのではと思っています。
 有村先生、さきほど長沢先生のほうから学校安全を守るためのいくつかの提言がありました。よく見える存在であるとか、テリトリーとしてのコミュニティをどう形成するのか、あるいは、犯罪者が近づいたときに違和感を感じる空間である必要があるとか、防犯の4原則のお話がありましたが、これを学校現場として受けていく場合に、何かお感じになることはありますか。

有村氏:たとえばオートロックをしていますが、構造上、課題を抱えている校園もあります。学校の中にはたくさんの死角があります。今後、校舎建築を含めた場合には、そういったことも十分に考えたうえで、本来、ありえないことが起こっている現実のなかで私たちの校舎建築自体も学校環境をどう考えていくかということも、防犯の視点で見た場合に考え直さなければいけない点がたくさんあるということを、スライドなどを見て考えさせていただきました。

岸本氏:私たちもアラームやセンサーなどの機能が、頻繁に誤作動してしまうと、慢性化してしまう中で難しい対応をせまられています。附属池田小事件で、われわれが最大の教訓として、「まさかここでは起こらないだろう」という心のゆるみが大きな事件を招いてしまったという苦い経験があります。だから今日の非常に難しい状況の中で、地域がそれを支えていくのが有効な受け皿になるのかと思います。
 保護者が地域に加わっていただいて、学校安全を考えていくときに、それが町の再生の「核」になっていくという話、あるいは、地域が学校を守るための受け皿にするという点では、非常におもしろいご提言だと思っています。街づくりの点からも非常に効果的だという点について、長沢先生、もう少しお話いただければと思います。

長沢氏:まちづくりの目標は生きがいをもって、健康に、かつ安全安心に過ごしていけることだと思います。安全安心は、まちづくりの基本的な要素です。今までは地域づくり、学校と地域の連携のなかでことさら意識されることもなかった。それが抜けていたとすれば、肝心なものが抜けていたということになります。
 今、安全安心については皆の問題意識が高くなっている。そのテーマですとみんな議論に加わろうとするテーマにもなっていると思います。まちづくりの議論をしていくうえでも、非常にいいテーマで、それが学校にも返ってくると思います。

岸本氏:障害者等にとって、バリアフリーという空間が、健常者にとっても快適な空間という意味で、そういったものを標準化するというのがノーマライゼーションの考え方、ユニバーサルの考え方ですが、子どもが本当に安全、安心で守られた学習環境というのは、弱者、一般にとって安全であるということが重要な前提条件であると思います。子どもたちだけの安全ではなく、地域社会全体が安全になっていく取り組みがぜひ必要であるし、そういう方向に向かっていかざるをえないだろうと思っています。子どもの安全をふまえて、自治体として地域全体の安全、地域全体の取り組みとして何かご意見があればお願いします。

倉田氏:ひとつは、近くて遠い仲だった附属池田小と池田市は、不幸な事件を契機として、近くて近い関係になっているということをご報告申し上げます。たとえば、こういう場所に池田の市長をお招きいただいたことです。実はこの手の会合は、池田の会館でしていなかった。豊中の市民会館でされたりとか、地元意識が薄かったな、と。ときどきほかから変化球を投げて皮肉を言ったりしていたのですが。附属池田小学校の市民権は、池田市にあります。住民票は池田市にあるんです。ということを保護者の方々にもご理解いただいているのではないかと思います。
 ふたつめは、安井先生の報告のなかで、非常に気になることがあります。今日は学校関係者が多いと聞いていますが、学校の安全を守るために、法律を作らなければいけないと。学校に安全管理士を置くと。でも、安全管理士ができたら、その費用はどこがもつのでしょうか。学校の先生の給料は、国と府です。そういう論議が抜けていて、ともかく法を整備したら、あとはなんとかしろと。これでは困るので、予算措置も含めてなんとかしてほしいということをきちんと、今、言っておかないと適当な法律ができてしまうという気がしてなりません。
 それから、附属小学校をごらんいただきましたか。リニューアルできた小学校。すごいです。でも池田に11小学校があるのですが、あれの2割のリニューアルをしただけで池田市は破産します。そうすると、また近くて遠い仲になるのか、どうして附属だけなのかという話しになりますが、これは例外なんだと。悲しい事件の起こった学校としてひとつのモデル校としてリニューアルしたのだと。その安全を守るための費用についても、国がしかるべき処理をしてくれないといけないということを、われわれが心をひとつにして訴えていかなければならない。

岸本氏:附属池田小学校がセキュリティ、あるいは子どもたちの安全を守るための空間構成上、すぐれたモデルとなったわけですが、決してすべての学校がそういう状態になれるわけではないと思います。我々が、事件校として責任を感じている一端は、そういうことにたいして、職員が効果的にハードをどう生かしていくのか。そういった意味で当事者の自覚や意識変革がなければ、設備を整えるということだけでは、安全は守れないという結論になります。
 どういうふうに、子どもを守るということについての意識変革をしていくのが、重要な課題になっていると思います。このあたりのことは、有村先生いかがでしょう。学校現場で意識変革をどう問いかけていくことが可能なのか。

有村氏:かつて、学校は安全なところだということがあり、柵も何もなくても放課後、自由に遊びにきていたのが、そうでなくなってきたということを考えたときに、私は、学校というのは、地域の安全が担保されていなければ学校の安全はないと思います。そういう意味で、何かあったとき地域にお願いごとをする。先ほどのお願いごとをするのではなくて、常日頃から、学校と地域、当事者である保護者、教職員が一体となって、初めて安全な地域があり、安全な地域にどっしりと根付いた学校があるのではないかと。残念ながら、今の現実は、そうはなっていないだろうと思います。
 この地域は、いろんなネットワークで守られているんだということが、もし悪いことをしようとしている人の気を変えさせ、不審者の侵入を地域からも、学校からも排除していくという意味でいえば、人と人とのつながりというなかで、ハード面が当然大切なのですが、それを運用する私たち自身の力が試されているのではないかと思います。
 児童憲章のなかでは、すべての児童は、よい遊び場とよい文化財を用意されて、悪い環境から守られている。これは昭和26年、1951年のことなんです。この考え方は、子どもの権利条約においても、あるいは、児童の権利に関する条約においても、すべてに共通するだろうと思います。おとな、学校関係者がこのことをきちんとおさえて、子どもたちが公園や学校で、自由に安全に安心して勉強したり、遊んだり、友達を作ったりできるような環境に変えていく、工夫できることがないのかということを考えていくことが大事だと思います。

岸本氏:ありがとうございます。
 終了時刻が迫っておりますので、意見交換は、このあたりで方向転換をさせていただきたいと思います。

向畦地氏:最後にお一方ずつ、どうすれば子どもの安全を確保できるかにつきまして、キーポイントをご提言いただければと思います。

有村氏:地域の安全が担保されて、学校がある。学校は地域のなかの宝であるというのなら、教職員、保護者も含めて、地域と語り合う場、地域とのネットワークづくり、大阪市でいえば、「はぐくみネット」のような形で、情報の送受信をやっていく形を作ることがたいせつだと思います。

石谷氏:いろいろなところで安全のためのマニュアルやシステム作りが盛んに行われています。私たちも、危険場所マップやセーフティネットワークシステムを作り上げました。しかし、そのこと自体で、子どもたちの安全が確保されるわけではありません。それを使いこなすのは人です。それに人がかかわってこそ、システムが生きてきます。
 私事で恐縮ですが、私の生活心情は、主体的に、具体的に、能動的に、です。子どもの安全確保は、まさにこのことがキーワードだと思います。子どもたちを、安全に健全に育んでいくには、保護者が責任をもって自らが主体的に具体的に積極的に活動しなければなりません。世間では、家庭、学校、地域の三者の連携を密にして、と声高に叫ばれていますが、とくに子どもの保護者であるPTAは全国に1千200 万人の会員がいます。日本の人口の10%が、われわれPTAの会員です。われわれが、保護者が一致団結し、ひとりひとりが責任をもって、実際に行動してこそ、安心安全な環境になります。どうぞ、安全のためのフロントランナーとして、今日からいっしょに行動しましょう。人がかかわってこそ、行動を起こしてこそ、安心、安全な環境になるのです。

長沢氏:今、倉田市長からこんなにお金をかけたら…というお話がありました。確かにお金もかけて立派に作られています。ただ、そこで、安全を守るためにとられている原理自体は、どこでも生かせるものだと思います。それはさっきの4つの原則、原理の部分をきちんと見極めるということです。残念な事件を経て、学校の守り方として得たいろんな知見があると思います。それを生かしていくことが必要だし、フォローしていかなければいけません。
 先ほど、安全はシステムだと申しました。このシステムをどう作っていくかということですが、最も頼りになると同時にあてにならないのは、人です。人の意識をどう保つかということは考えておく必要がある。今日は、忘れられない日ですが、そういう日の催しであったり、記念碑であったり、マスコミがきちんととりあげてくれるというのも大事だと思います。システムは、社会全体のシステムとして作っていくことが必要だと思います。
 もうひとつ大事なのは、どこまで想定するかということです。附属池田小の事件はそれまで想像つかない、世界的に見ても稀有な事件でした。しかし、それ以上に想定する必要があるのかもしれない。そういう意味で、こういう言い方は適切ではありませんが、事件が起きたときに悔いがないようにする、あるいは、説明ができるかどうかが関係者に、自分たちみんなに問われるところがあると思います。
 最後に、子どもだけにしない、ということが教師の務めと思うところがありました。
 文部科学省の防犯の会議で、警備業界の人から、立ち向かえといわれたら、それは私たちの業務の範囲外です。武器も与えられていないのに立ち向かえといわれてもできないと聞いて、たいへん驚きました。先生方にしても、立ち向かうのはなかなか難しい。その時、最後まで子どもによりそってあげる、抱きしめていてあげる、そういう意味では教師とはたいへん重たい仕事だと思いました。
 だからこそ、そうさせないための安全のシステムとして施設設備で何をしておく必要があるか、地域の人たち、あるいは学校関係者にどういう役割が果たせるかということを常に考え続ける。その意識レベルが低下しがちだということもおさえながら、安全に対する意識を高く持ち続けておくことが大事だと思います。

倉田氏:「I」から始まる附属池田小学校、「I」から始まる池田市ですから、安全のキーワードは「愛(I)」だということでしめさせていただきたいと思います。

向畦地氏:ありがとうございました。
 最後にわれわれ司会のほうから一言ずつ発言をさせていただきまして、終わりたいと思います。
 冒頭にも申し上げました大阪府教育委員会が作成した指針の中で、安全管理の一つの柱として、「子どもを守る大人のスクラム」というスローガンを掲げております。まさに本日のキーワードとなりました地域との一体化、ネットワークづくりを示したものですが、子どもたちを守るためには学校だけでも家庭だけでもすでに困難な状況になってきている今、どうやって、学校、家庭、地域、行政などが、連携していくのか。どうやって、しくみを構築していくのかについても非常に多くの示唆にとんだお話をちょうだいしました。
 まずは、倉田さんの「首長の使命」と書いて「クビチョウのミッション」とお読みするそうですが、そのご本のなかで「ノーモア2001年6月8日」というのが、非常に印象に残っています。まずはその意識をもって、肝に銘じて、学校として侵入者対策にきちんと取り組むことが、まず第一歩だと思います。
 その上で、安全に関する情報を家庭、地域に発信していく。本日の2つめのキーワード「情報の共有化」は、非常に大きなものだろうと思います。情報が地域で共有できるように、学校から発信していくのが大切だと思います。これが第一歩となって、その上で、「人が動く」という言葉がありましたが、行動につなげていく。
 最近、多くの小学校では、児童が被害にあいそうになった場合に、保護者に即日お知らせをするということをされています。非常にいい取り組みだと思います。せっかくいいことをしているのですから、次のステップに進めていきたいと。たとえば、昨年一年間に通知やお知らせがいったいどれだけあったのか、これを一覧にして保護者にお知らせする。たとえば校区内でしたら、マップに作ってお配りすると同時に、地元の自治会の役員さんにお渡しする。それを機に地域の子どもの状況をお知らせしながら、子どもの安全のためにできることはないかと、自治会などで話題にしてもらえるようにお願いをする。学校が「助けて」ということではないかと。そこから初めて、リスクコミュニケーションがとれていくのではないかと思います。実はそういう連携づくりのきっかけになってほしいという思いをこめて、府教育委員会で平成14年からこういうポスターづくりを始めています。実は、公立小学校には、このポスターを1校あたり22枚お配りしていまして、20枚は地域に貼ってくださいとお願いしております。おそらく、学校のほうから地域にこのポスターをもって、お願いに行っていただかないといけないと思います。これが、学校と地域との連携、一体化、この一歩を踏み出すためのきっかけとなればという願いをこめております。
 附属池田小学校では、「地域」ということが公立小学校と異なる。これが、附属の特有の課題として考えられているということですが、本日は倉田市長にも、こうしてご出席をしていただきまして、池田市にある学校として新たな一歩を踏み出していくことができるのであろうと思います。そのためにも、附属小学校として、地域に何が還元できるのか、ということも含めて活発に意見交換が行われればよいと思っています。
 本日は、4人のシンポジストの方からたくさんのヒントになるお話をいただきました。
 会場のみなさまには、ぜひ今日のお話を持ち帰っていただきまして、子どもの大切な命を守るための「大人のスクラム」の形成にご尽力たまわりますようお願いいたしまして、まとめにさせていただきます。

岸本氏:今、整理していただきましたが、私のほうからは事件発生後の教訓に基づいて整理しておきたいと思います。
 パネリストの皆様からは、非常にていねいで、ユニークなご提言をいただきまして、われわれ一同、それを受け止めていかなければならないと肝に銘じています。私たちとしては、附属池田小学校事件の教訓として、いくつかあるなかで、ひとつは危機意識が教職員のなかで非常に低かったという問題があります。それで、現在子どもが置かれている環境は、非常に危機的なものがあります。子どもであるがゆえに、学校であるがゆえに狙われる状況になっている事実を認識し、事件は自分の学校や地域でも起こるという意識変革がどうしても必要だろうと思います。
 それからもうひとつ、私は、危機が発生したときの危機管理体制の未熟さというものも、やはり、大きな教訓として、つきつけられたと思っています。しかし、これをどういうふうに具体的にマンパワーとして形成していくのかというのは、非常に難しい問題です。やはり、危機の特徴を理解したうえで、繰り返し実践的な予防訓練をしていく、そのことを通して対応行動を習慣化してしまう状況のなかで、もし危機が起こったときの場合に、その拡大を防ぐことも含めて、今日のご提言がいかせればと思います。
 附属池田小学校は装いが新たになっています。しかし、装いが新たになった学校で、もはや学べなくなったお子さんが8人いらっしゃいます。そして、その新しい学舎に立つことで心の痛みや体の痛みを訴えるお子さんも多数いらっしゃいます。事件が起こってしまえば、つぐないきれない負債をわれわれが負い続けなければなりません。「事件は決して起こしてはいけない、犯人を二度と侵入させてはいけない」という観点に立って、今日のいろんなご提言をそれぞれの現場で、ぜひ生かしていただきたいと思います。
 今日のご提言を持ち帰って、創意と工夫で明日からの学校安全に生かしていただきたいと思います。
 本日は長時間、ありがとうございました。