教育学研究科の院生らと理数情報教育系の安松健特任准教授が人工知能学会全国大会優秀賞を受賞

2022.12.16

教育学研究科の院生らと理数情報教育系の安松健特任准教授が人工知能学会全国大会優秀賞を受賞

 大学院教育学研究科の教育ファシリテーションコース2回生の田中友理さんと加瀬佳樹さんが理数情報教育系の安松健特任准教授とともに、人工知能学会第36回全国大会で論文を発表し、全国大会優秀賞を受賞しました。
 この賞は、一般社団法人人工知能学会(*1)が主催する全国大会で発表された研究を表彰対象とし、特に優秀な研究を発表した者に授与されるものです。

 今回受賞した論文のタイトルは「芸術作品から受ける感動についての構造分析」で、大学院の授業「先端技術・データ活用演習」のグループワークの1つで行った調査分析結果をまとめたものです。芸術作品から受ける感動について明らかにすることを目的に、どのような人が、どのような作品を見て、どのように感じたかを、芸術作品鑑賞の定性的知見からアンケートを設計し、収集データを因子分析とペイジアンネットワーク(*2)というAI技術を用いてモデリング・分析をし、美学的観点で考察を行ったものです。

 田中さんは「大学院入学前には、このようなチャレンジが待っているとは、そして栄誉ある賞をいただくことになるとは、想像もしていませんでした。共著者の加瀬さんは、書を専門にした芸術専攻の、美学に関心を持つ方です。芸術に深い縁がなかった私とは、見えている世界、感覚意識は全く別で、授業の帰り道に『田中さんって学生時代に体育会系なら、あんまり柔らかいとか、滑らかだとか、優美なものには感動しづらかったりしますか?』と問われた時には、なんて面白い捉え方だろう、もっと知ってみたい、その世界を引き出したいと胸が高鳴りました。論文作成には、同級生等からの温かい応援が原動力となり、ともに走り続けることができました」と、加瀬さんは「本授業名に惹かれて履修をしたことが異分野交流のきっかけでした。教育行政を専門とする社会人院生の田中さんが仕事での経験を生かし、今回の研究を積極的に引っ張ってくれました。また、安松先生は、私たちをファシリテートしてくださり、理数情報の観点から、私たちが知らない分野を多く教えてくださいました。今回の研究はまさにAIと芸術をテーマとして、互いの専門性を活かして異業種の交流が成果として結実したものであると思います。『大学院で様々な人との豊かな交流、学びをしたい!』そう思っていた入学時の私に、改めて自信を持って勧めてあげられる居場所、それがこの大学院であると伝えてあげたいです」とそれぞれ感想を述べました。

 安松特任准教授は、「田中さんは教育行政学、加瀬さんは『美』について研究に取り組んでおり、私は理数情報教育系です。このように多様なメンバーが交流できるのは、本学の特徴だと思います。本学は、1つの学部に理系・文系・スポーツ系・芸術系の教員・学生が所属しており、本授業でも様々な専門の学生が履修し同じ教室で学習します。また、加瀬さんが、田中さんが社会人としての業務経験を生かし、研究を積極的に引っ張って下さったと言うように、社会人院生と学部卒院生の玉石混合の具合もコラボレーションが生まれやすい環境だと思います。当初、この論文を書く計画もありませんでしたし、分析の結果を見ても教員の私は解釈できず、分析の価値を理解することはできませんでした。しかし、加瀬さんの美学の知見を通した考察により、これは論文として発表すべきではないかと考えるに至りました。このような多様性ある授業環境によって、この『芸術×AI技術』という研究が生まれたと思います」と総括しました。

*1 人工知能に関する研究の進展と知識の普及を図り、学術・技術ならびに産業・社会の発展に寄与することを目的として設立された学会。
*2 ベイジアンネットワークとは、多くの変数がある時に変数間の定性的な依存関係をグラフ構造によって表し、定量的な関係を条件付き確率で表したモデル(参考文献:本村陽一、佐藤泰介 (2000) 「ベイジアンネットワーク:不確定性のモデリング技術」人工知能学会誌,15(4),575-582.)。

 

 

  


表彰状を手に記念撮影(右から、安松特任准教授、田中さん、加瀬さん)

(教育学研究科)