エッセイ

小学校
2021/01/20
13年目の再会
 

将来の夢は、「小学校の先生」でした。長らくの講師生活を経て教諭に採用されました。長年の夢が叶い天にものぼる思いでした。「初心忘るべからず」頑張っていこうと思ったものです。

初めての1年生を担任した時の事です。当校の校区内に住みながら、市立支援学校に通学するA君との交流が月1回のペースで始まりました。重度の「障がい」で車イスに座ることができず、バギーで通学していたA君との交流が始まりました。私は市立支援学校に以前勤めていたことがあり、そのおかげでクラスの子どもたちに支援学校のことを詳しく話すことができました。A君が大好きな音楽や図工などで交流しました。「ともだちになるために」という歌を手話つきで覚えてみんなで歌いました。

A君との交流があった日の放課後は、近所に住む子どもたちがA君の家に遊びに行ったり、クラスのお手紙を届けてくれたり放課後にも交流がもたれていました。A君の支援学校の担任のC先生はギターが上手で、クラスの子どもたちに「おひさまになりたい」という歌を教えてくださってみんなで歌ったのがとてもいい思い出です。

運動会が近づいてきました。A君は緊張が強く疲れやすいので、あまり無理できないということで、はじめは、団体競技「おみこしわっしょい」にだけ参加するということで練習していました。ところが、「団体演技のダンスにも参加できそう。」「徒競走にも出てみよう。」と、いうことで、気がつけば1年生の競技全てに出場することになっていました。特に80m走には、A君と一緒に走りたいという子が多い人気ぶりでした。1年生の終わりに多目的室でみんないっしょに歌ったり、ゲームをしたり楽しんでお別れしました。

あれから13年。1年生だった子どもたちも二十歳になりました。偶然にも神戸のコンサート会場でその時担任していたBさんに会いました。成人式で久しぶりにみんなに会い写真を撮ったという事でした。「A君も来ていて一緒に写真を撮ったよ。」という話を聞きました。1年生のときに交流した内容は覚えていなくても、こうやって、二十歳になった今も交流しているという事を聞いて、とても嬉しく思いました。 

ちょうど、その同じ年に市立支援学校の閉校セレモニーがありました。その時に13年ぶりにA君とA君のお母さんにお会いすることができました。二十歳の青年になり、おしゃれをして成人式に参列していたA君と1年生で交流のあった仲間たちが楽しそうに写った写真を見せていただきました。1年生のときに始まった交流が、時を経て続いていたことを知って、「教師をしていてよかったなあ。」と、改めて感じたひと時でした。

教師の仕事は、神経を使い多忙を極めます。大変なこともたくさんありました。しかし、たくさんの人との出会いの中で、子どもたちと一緒に自分自身も成長させてもらうことができる仕事だと思います。人の教育に携わる怖さを感じながらも続けていると、嬉しい報告を聞くことができ、そんな時に「教師をやっていてよかったなあ。」と感じます。