令和4年度系における研究活性化プロジェクト

令和4年度 系における研究活性化プロジェクト

 教育研究の活性化のため,令和2年度より本学では組織改革を行い,教員組織として系を設置しました。
 そこで,改革の有効性を高める教員組織での研究を推進するため,系単位または系横断による新たな研究プロジェクトを立ち上げました。

高度教職開発系

プロジェクト名

教職大学院の共通科目開発と質保証プロジェクト

プロジェクト構成員

 

臼井 智美、餅木哲郎、木原俊行、梅川康治、平井美幸、糸井川孝之、大内田裕、田中眞秀、南野起一

プロジェクト概要

本プロジェクトでは、次の2点を目的とした。

1つめは、フラッグシップ(以下、FS)大学構想で挙げられている「教職大学院の共通5領域の必修単位数の弾力的措置の活用」に対応するため、既存の研究科共通科目を再編するとともに、本学がFS大学構想で挙げた新たな4領域に対応する共通科目を開発することである(検討課題①)。

2つめは、FS大学構想の実施においては、本学では昼間開講キャンパス(柏原)と夜間開講キャンパス(天王寺)の2キャンパスで、計150名の学生に対して研究科共通科目(必修、選択必修、選択)を提供できる体制を整備する必要がある。そのため、FS大学構想に適した、高度な教育の提供と質保証の方法を明らかにすることである(検討課題②)。

 

<検討課題①について>

教職大学院に必置の既存共通5領域(*)に関しては、令和4年度入学者まで開講されてきた計9科目を、5科目10単位(いずれも必修科目)に再編した。

また、FS大学構想に対応する4つの新領域に関しても、「教育DX・STEAM実践に関する領域」、「教育グローバル人材の育成に関する領域」、「多職種協働による組織マネジメントに関する領域」に対応する科目を各1つ(いずれも必修科目、計6単位。新規開講)、「ダイバーシティの理解に関する領域」に対応する科目を4つ(いずれも選択必修科目、計4単位。既存科目の改編)を設定し、FS新規開講に向けて、授業内容やFS科目間の相互関係等の検討を行い、各科目のねらいや修得を目指す力の明確化を図った。

これらの科目はFS本実施の令和6年度入学者のカリキュラムから適用するが、一部の科目については、令和5年度入学者のカリキュラムに先行実施・試行として位置付けた。

(*)教育課程の編成及び実施に関する領域、教科等の実践的な指導法に関する領域、生徒指導及び教育相談に関する領域、学級経営及び学校経営に関する領域、学校教育と教員の在り方に関する領域

 

<検討課題②について>

これまで教職大学院の既存共通5領域で開講してきた科目はいずれも、柏原と天王寺のそれぞれのキャンパスに授業担当教員を配置し、科目によっては教職キャリアを考慮したグループ編成をするなどして、1科目当たり3~4クラスに分けて実施してきた。しかしながら、FS新領域のうち、特に新規開講となる3領域の3科目については、「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」(中教審答申令和4年12月19日)の趣旨も踏まえ、多様な専門性を有する学部卒院生と現職教員院生の協働的学習と各学生の専門性の伸長の実現のため、2キャンパスの学生が合同で授業参加できる方策の検討を行った。

新規開講3科目のうち、「教育DX・STEAM実践に関する領域」の科目については、令和5年度から先行実施することとした。同科目では、2キャンパスの学生の合同授業の試行として、仮想空間を使用した合同成果発表会と成果物に対する意見交流の機会を設定した。また、より質の高い高度な教育の提供を目的として、教職大学院専任教員(W専任を含む)のみならず、本学の他部局所属教員の中で科目趣旨に見合った学術的・実践的専門性を有する教員を授業担当教員に加え、専門性の見地から教職大学院教育としての高度な授業内容の組織化を図った。同科目の運営の結果を踏まえ、他の新規開講2科目についても、合同授業の実施方法や高度な教育の提供と質保証の方法の検証を継続する。
 

 

総合教育系

プロジェクト名

「ダイバーシティ大阪」科目群開発プロジェクト

プロジェクト構成員

高橋 登、今枝史雄、小松孝至、齋藤直子、佐久間敦史、寺坂明子、平賀健太郎、森本和寿、八田幸恵、吉田茂孝、中山あおい、米澤千昌

プロジェクト概要

 

 

2022年度4月,本学は教員養成フラッグシップ大学に指定された。フラッグシップ大学には,先導的・革新的な教員養成プログラム・教職科目の研究・開発,全国的な教員養成ネットワークの構築と成果の展開,取組の検証を踏まえた教職課程に関する制度の改善への貢献等が求められている。また,制度上の特例として,教員免許取得単位の弾力化および,教職大学院の必修単位の弾力化が認められている。

本学が掲げるテーマは「ダイバーシティ大阪の諸課題に応え,学習者の学びに寄り添う教師の育成」であり,多様化する社会の中で,①子ども達が多様な他者と協働しながら,他者を価値ある存在として尊重し,様々な社会的な変化を乗り越え,持続可能な社会の創り手となることができるような(学習指導要領?),また,②すべての子ども達が日本社会の周縁的な存在としてではなく,多様性を持った日本社会の成員として生きて行くこと(社会的包摂)を支援できる教員の育成を目指している。

この目的を実現するために,本学ではさまざまな取り組みが進んでいるが,とりわけ上記の目的との関わりの中で,総合教育系所属教員を始めとする関連領域の教員が深く関わるのは,次の4科目からなる「フラッグシップ特例科目群」の開発である:「ダイバーシティと教育」,「現代社会と子どもの権利」,「インクルーシヴ教育入門(仮)」,「外国人等の幼児・児童及び生徒に対する理解(仮)」。そこで本プロジェクトでは,プロジェクトメンバーの専門領域の視点から,本学のフラッグシップ構想,とりわけダイバーシティ科目群について,国内外の状況をふまえながら,その方向性と課題を明らかにすることを目的とした。具体的な検討課題は次の2点であった:① メンバーの専門領域からみたダイバーシティ大阪の現状と課題,② ダイバーシティ科目の内容,授業形態や評価方法,既存科目群との構成上の課題。

プロジェクトでは,最初に人権教育(佐久間・齋藤担当),インクルーシヴ教育(平賀・今枝担当),外国人児童生徒等の教育(中山・米澤担当)の3領域について,関連領域の教員による報告に基づいて,日本および大阪の現状と課題について検討した。つぎに,それをふまえた上で,主体的な学び,対話的な学びの観点から見たダイバーシティ科目の授業の在り方・評価の在り方(吉田・八田・森本・小松担当)について検討を行った。

理数情報教育系

プロジェクト名

附属学校園横断型の先端生物学教育プログラム開発研究プロジェクト

プロジェクト構成員

鈴木 剛、日高翼、仲矢史雄、岡本圭史(附属高校平野校舎)、井村有里(附属高校天王寺校舎)
岡本元達(附属高校池田校舎)、森中敏行(附属高校天王寺校舎)、木内葉子(附属高校天王寺校舎)、中西亜実(附属高校平野校舎・大学非常勤講師)

 

プロジェクト概要

高度専門性を持った生物学教員人材を活用して、高校生物での「探究や見方・考え方を重要視した学び」を目指して、附属高校3校舎で共通して先端科学的な生物実験授業を行えるように計画・準備し、ホンモノの先端研究に触れて生徒のワクワク感を生み出せる実験授業実践を行い、その成果について3校舎で比較分析する。大学教員が先導して3校舎の附属学校教員が連携して行う実験授業実践の事例となるプロジェクトである。

 

背景の異なる平野・天王寺・池田の各附属高校において、身近な植物タンポポの雑種判定をテーマにPCR実験を行う共通プログラムを開発した。授業実施に際して、AIを用いた意見共有システム(Aska)での事前・事後アンケート調査を行うとともに、360°カメラを用いた生徒行動分析も併用し、3校舎での比較分析を目指した。

 

本学Teamsにプロジェクトチームのチャットを設けて、実習プログラムについて議論した。附属高校平野校舎において、DNA解析でタンポポの系統分類を行ってきた実績があり、それを改変したプログラムを作成した。基本的には、専門的な研究レベルの遺伝子実験を生徒に体験させることで「生徒のワクワク感」を引き出したい点と、ただの実験ではなく「探究的要素」を入れられる点を重要視したプログラムとして「PCRによるタンポポ雑種判定」をテーマに決定した。その際、通常はDNAの配列決定まで行うが、授業の時間的制限もあるため、PCRの増幅断片の長さによって系統判別できるように、葉緑体DNAの一部領域を増やすプライマーを用いた。

 

平野校舎では、2022年10月24日(月)と27日(木)の「生物」の授業中に実習を行なった。参加者は3年生24名であった。事前準備として、教員が平野校舎内外でタンポポの葉を8サンプル(H1〜H8)採取し、キットを用いてDNAを単離した。実習は、マイクロピペットによる微量な液の分注法を学ぶところから始め、PCR装置にかけるところまでで1日目とし、PCRにより増えたDNA断片の電気泳動による確認は2日目に行った。マイクロピペット操作の失敗などにより結果がうまく出なかった班もあり、今後の課題も見られたが、概ね生徒の興味を引きつけることができ、Askaの事後アンケートで「大学で自分の実験をしたいと思った」や「マイクロピペットを使うのが楽しかった」などの生徒の意見に対して共感が得られていた。

 

同様の実習プログラムの授業実践を、授業外の実習として、天王寺校舎では、2023年1月28日(土)に2年生中心に14名の参加者で行い、池田校舎では、2023年3月13日(月)に11名の参加者で行った。いずれも順調にPCR実験とその後の電気泳動確認を連続的に半日で実施できた。



理数情報教育系

プロジェクト名

学習障害の聴写テスト回答特徴のベイジアンネットワーク分析

プロジェクト構成員

仲矢 史雄、安松 健

プロジェクト概要

公開調整中
 


健康安全教育系

プロジェクト名

スクールカウンセラーの視点からみたチーム学校の実現に向けた課題と展望

プロジェクト構成員

奥田 紗史美、茂野 仁美、寺坂 明子

プロジェクト概要

【問題と目的】

学校現場への教員以外の専門家の参入が本格的にスタートしたのは,1995年の文部省(当時)によるスクールカウンセラー活用調査研究委託事業である。参入から30年近くがたち,スクールカウンセラー(以下SC)と教員が連携協働する事例が積み重ねられる一方,課題も多く報告されてきた。その問題点は,学校のどこにSCに任せられる役割があるか,どうすればSCがその役割を果たせるかという目線で整理されることが多く,SC視点からみた学校の閉鎖性や連携上の問題を洗い出し,相互理解を促進して現場で生かすという流れはあまり活発とはいえない。教師とSC,それぞれの専門家の互いの目線からみた連携上の課題とその「ずれ」は,それ自体が「チーム」で検討する意義のあることである。今回のプロジェクト研究では,その専門家間の「ずれ」の価値を評価する一助となることを目指した。具体的には,SCの視点から見た学校現場の連携と協働の難しさやその背景を調査し,SCという外部者から見た「チーム学校」の実現に向けた多職種連携における課題と今後の展望を整理することを目的として行った。

【方法】

中堅以降のSCを対象に,対面もしくはオンラインによる半構造化面接を行った。調査協力者は11名であり,調査協力者の臨床歴は8年~38年,SC歴は7年~19年であった。全て公立校でのSCの経験があり,公認心理師かつ臨床心理士であった。データは調査協力者の同意を得て録音(オンラインの場合は録画)し,面接調査時の調査者の所感を記したメモも作成した。調査の内容は,①現在のSCとしての勤務状況,②現在どのような形で学校内外と連携をとっているか,③うまく連携が機能した場合何がそれに寄与したと考えられるか,④連携が難しい場合何がその原因・背景と考えられるか,⑤今後の教員養成やSCの養成に期待すること,今後教員に期待する資質など。実際の面接ではまず現在の活動について自由に語ってもらい,その後,調査者の方から不足する点や詳細について質問を行った。

【結果と考察】

SCにとって連携の取りやすさは学校によりかなり差があるとの報告が多くの協力者の一致した意見であった。連携にあたっては,SCの方から気になる子どもや面接を行った子どもの担任や関連する教員,管理職などに積極的に話しかけ,共有すべき内容を報告しているとの回答が多かった。連携のしやすさには,SCに学校内の情報を積極的に伝えたり,子どもや教員を適宜つないだりというコーディネーター的役割を果たす教員や,SCを積極的に活用する意欲がある管理職の存在などが寄与するようである。また教員養成や教員に求める資質についての語りは多様であり,発達障害や不登校など,こどもの問題の心理学的な基礎知識を学んできてほしいという意見や,自分を労り大事にすることを学んできてほしい,学生時代に教職とは関係のないことでも様々な経験をしてほしい,などの意見があった。

今回の調査協力者は概ね,集団守秘義務の前提のもと,子どもの利益になる情報は共有するという姿勢であったが,共有する相手の教員の資質(秘密を守れるか,SCからの伝達内容を本当の意味で理解でき,子どもの利益につながるか)などについては慎重に見極めているようであった。SCを交えた情報共有の会議などが設定されている学校もあるが,実際のところ連携を支えるのはシステムよりも,SC個人が閉じずに有効な働きかけができるかという点と,それを受け入れ活用する柔軟さが学校や教員側にあるかどうかという点に左右されており,それが学校により連携の取りやすさに差があるという報告につながるものと考えられる。