エッセイ

中学校
2021/02/04
生活科・総合的な学習の時間を児童生徒とともに
 

はじめに

教育に携わる者にとって、「教師冥利に尽きる」とは、子供たちが仲間と学びたい、探究したいという意欲を見せて取り組む姿をみとり、支援し、ともに喜ぶことに尽きるのではないでしょうか。

 

その1 平成元年 生活科告示の頃

生活科完全実施が平成4年、社会科・理科から生活科にという時代である。

私は横浜市南部のS小学校1年担任、S校は市の生活科学習研究校であり、私自身も市の教育課程委員の一員として単元開発に取り組んでいた。

校庭で自分たちの見つけたもの・こととかかわり、発表し合う学習中、校庭の岩石園で遊んでいた1グループが石をぶつけあって、割れた内部の模様を見て嬉々としていた。

他のグループが集まってきても割る作業をやめない。どうしたものかと私、その時、他のグループ児童が割れた石を、何と、ドレミと並べだした。ぶつけ合う音に交じって、ドレミと口ずさむ声が大きくなるにつれ、“石琴”の周りに大きな輪ができたのである。

割ることに夢中な子供とドレミと並べた子供は幼稚園の同級生、日ごろから仲良しでもあり、お互いの活動を見合っていた模様、次時では、克明に割れた石の模様の絵と響く音をメモにして、S校の自慢と表現した(理科学習では、割って観察まではしない)。

 

その2 令和2年 総合的な学習の時間

コロナ禍の中、私は定年退職後、S中学校で社会科担当の非常勤講師。

SDGsの理念をS中「S・アジア・アフリカとブリッジ」全校活動と関連付ける単元のT3としてかかわった。1~3年の生徒がSDGsの目標の「水を大切にしよう」と、アジア・アフリカで水を求めて何時間も歩く子供たちや教育が行き届かない現状を調べたり、泥水を飲料にするには?と、ペットボトルでろ過装置を作ったり、時には手作りの水鉄砲で的当てをしたりして、その活動を動画にした。S校は中高一貫校でもあり、S高校の教室を“水の博物館”になぞらえて活動の様子を展示した。

単元の活動中の話し合いで、アジアの山国に興味・関心が強いA児は、その山国の紹介の本をもとに、川から水を引いて生活用水にする大変さを紹介し、小学校時代の浄水場やダムの見学を想起し、その山国にも必要かもしれないと発表することができた。

一人ひとりの生徒のモチベーションや活動中の様子の見取りをもとにT1とT2の教師の連携によって、A児も含めた生徒たちは、アジア・アフリカの人々の生活の向上に自分たちも協力しようとまとめていた。(このイベントは、S校が、6年前から市の国際局や外務省、アジア・アフリカの大使館とも連携し、「アジア・アフリカを知って、自分たちのできることを」と進めてきた活動である。2020年は参加者の規模を縮小し、三密を避け、3時間おきに児童生徒・参加者も検温、手指消毒の励行等をシールチェックして見える化を図った。他地域にあるS校のネットワークによって、メッセージやシンポジウムもオンライン配信、実施した。)

 

まとめにかえて

平成元年に低学年社会科・理科を廃止し、生活科が発足し、その後、総合的な学習の時間も創設されました。平成29年の新学習指導要領・解説書、文部科学省のホームページには、「社会に開かれた教育課程」と今回の改訂の意義を明確にし、総則の前文には、「教育によってよりよい社会をつくる」とあります。学習するのは児童生徒本人ですが、学習の適切な支援をするのが教師です。

教師は、児童生徒が自己存在感、自尊感情をもち、自分の未来に希望をもって生きていくことができるよう支援することを「しごと」とできる喜びを味わえるのであります。SDGsの目標にも、教育の質を高めることが挙げられています。児童生徒とともに、生涯学び続けることのできる「しごと」に、教師を目指す学生の方々が増えることを渇望しております。