研究者であり続ける
教育協働学科 理数情報講座
堀 真子 准教授
高校時代の得意科目は国語、でも好きな科目は物理でした。「世の中の現象が1つの公式で表される。それってすごいなと思っていました」。この世の中の成り立ちを理解したい、そんな思いから、大学では地球科学を専攻します。
広島大学へ進学し、博士課程後期修了まで過ごしました。研究が楽しくなり始めたのは修士課程の頃。「それぞれ専門分野を持つようになって、同期の子たちとはお互いを認めあえる存在だったと思います」。自分の取り組む研究以外の分野にも興味がつきず、もっといろんなものが見たいと、違う研究室の友人のフィールドワークに同行することもよくありました。学業だけでなく、瀬戸内海での夜釣り、尾道へのドライブ、友人の家に集まっての家飲みと、広島での学生生活を楽しみます。
研究者としてやっていこうと特段決意したことはありません。ただ修士課程で既存の仮説を覆す研究結果を出したことから、その研究を完成させたいという一心で博士課程へ進みました。「迷いは全然ありませんでした。自分がどこまで行けるか試したいと思っていました」
卒業後、日本学術振興会特別研究員、台湾国立成功大学博士研究員、東京大学大気海洋研究所特任研究員などを経て本学に着任します。本学の第一印象は、「山の上にあって、自然がいっぱい」。広島大学での学生時代を思い出し、親近感を抱いたといいます。
現在は、炭酸塩堆積物や貝殻を分析して過去の地球環境を解明する研究に取り組んでいます。堆積物や貝殻を構成する元素などには、鉱物が沈殿した時の周囲の環境情報が間接的に記録されています。この情報を手がかりに、過去の環境や物質循環を復元することができないか探ります。研究にはフィールドワークが欠かせません。「今は温泉の調査をしているので、ゼミ生と一緒に奈良の温泉で試料を採取し、それを実験室で分析します」。学生時代もずっとフィールドワークにでていたので、外に出ないとちょっと物足りない感じがするのだとか。
教員という立場で学生を見ていると「答えを急いている」ように感じるといいます。「正解を揃えることに行動が集約されていて、最短距離を行こうとする。もっと試行錯誤して、いろいろやってみればいいのに。回り道はしんどいです。でも、そうやって自力で答えを探すから、それを将来の糧とするために頑張れるのではないでしょうか」
今後の目標は、研究者であり続けること。では、優れた研究者とは?「不可解な現象を前にして、それを例外だとはじいてしまうのは簡単ですが、そこで持っている知識を組み合わせて新しい仮説を立て、さらにそれを実証まで持っていくには、対象への根気強い観察と深い洞察力が必要です。そういう人に出会うと、目から鱗が落ちるというか、素直にすごいな、と感動します。わたしは天才じゃないけれど、地道な観察を続けていくことで重要な発見に立ち会える可能性がある。そういう希望を持っています」
2児の母でもあり、仕事と子育てに追われる毎日です。最近の癒しは、育てている青虫の成長を見守ること。「娘が生き物を怖がっていたのでなんとかしようと飼い始めたのですが、私が一番楽しんでいます。食べた分だけ大きくなって、達成感があります。『はらぺこあおむし』という絵本がありますが、まさにその世界の再現ですね」。質問の一つ一つに、じっと考えてから、丁寧に言葉を紡ぎます。「自分を過大評価しないんです」と控えめな様子とは反対に、その言葉からは筋の通った凛とした姿が見えてきます。