授業探訪 プロジェクト演習B

教壇に立つ出相教授

プロジェクト演習B

教育心理科学部門 出相泰裕 教授

 土曜日の夕方、天王寺キャンパスのとある講義室では、3~6名のグループに分かれた院生たちが、活発に意見交換を行っていました。教育心理科学部門の出相泰裕教授が、その様子を教壇から見守ります。各グループをよく見ると、20代から50代、私服の方やスーツの方まで、色々な世代の色々な立場の方々がいるようです。

 今回訪れたのは、大学院教育学研究科教育ファシリテーションコースの授業「プロジェクト演習B」。前回の授業で、地域全体で子どもたちの学びや成長を支えるために、様々な地域住民等の参画を得て、地域と学校が連携・協働して行う『地域学校協働活動』について学んだ院生たち。今回は、どういったことを学ぶのでしょうか。

 「それでは、今グループで話し合ってもらった、地域の人が関わった教育経験を発表してください」と呼びかけます。各グループからは、地域の特産品や名産品などの産業に触れる取組や、地域住民と一緒に行う避難訓練、地域の祭りの景品づくり、プロの方による部活動指導、市民体育大会での交流など、様々な経験談が発表されます。発表後、出相教授は「専門職の方だけでなく、地域には子どもの好奇心を刺激できる多才な方もいらっしゃいますので、そういう方と教育を上手くマッチさせるようなコーディネートも重要になってきます」と補足します。続けて、文部科学省の方針や、中央教育審議会の答申に沿って地域学校協働活動の重要性を紹介しました。

グループワークを行う院生ら

 「これから、自分が学校側にゲスト講師として呼ばれたと想定し、自分がやってみたい授業案をグループで出し合ってみてください」と院生たちに投げかけます。様々なバックグラウンドやキャリアを持っている院生が通っているからこそ、授業では院生同士で良い化学反応が起きるように意識しているのだと、出相教授は言います。

 グループワーク開始の合図で、院生たちは前のめりに話し始めます。地域教育を専攻するグループでは、「小学生が地域を巡って、自分たちの遠足プランを考えるのはどうですか?」「地域を巡って色んな町工場で何が作られているかリストを作る。そのリストをもとに、組み合わせて何かを新しく創造するっていうのは?」「農業でもできそう。同じようにリストを作って、お弁当を作る。それを友達同士で交換して、ランキングを作る」、アイデアとアイデアとが混ざり合っていきます。他のグループでも、「自分たちの自己満足にならないように、事前にどんなことをしたいか聞く」「○○ができない、とかのよろず相談を受けて、教えてもらえる地域の方をマッチングさせる」「防災マップを地域の人たちと一緒に作っていく」「地域の楽しい場所探し。ゲームとスマホが当たり前になっている世代には、逆に新鮮だと思う」と、次々とアイデアが出てきます。

アイデアを出し合う院生ら

 「この授業の最終目標は、学校現場で実践できる『地域学校協働活動』を考案することです。今後は、途中から合同で受講する教職大学院生に授業案を提案し、現職の教員でもある教職大学院生の声を落とし込んでいきます。そうすることで、授業案は実現可能性のより高いものにブラッシュアップされていきます。現場では、総合的な学習の時間などでの教員の負担を減らしながら、教育効果の高い授業を、どれだけ提案していくかが重要になっています。その実践を現場さながらに、キャンパス内の組織だけで取り組めるのも、このコースの魅力です」と出相教授は語ります。

 院生たちは引き続き、教育現場と地域とが協働して子どもたちの育ちを支える重要性を学びながら、教職大学院生と協働で授業を作りあげることにより、現場での実践力を磨いていきます。

【授業DATA】

対象学年 :大学院1回生
主な対象学生:教育学研究科高度教育支援開発専攻教育ファシリテーションコース
開講期:2021年度後期 土曜5限

(2021年12月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

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