令和時代を生き抜くライフスキルを子どもたちに。
実践を重ねて根拠に基づいた教育をもっと広めたい!
教養学科 文化研究専攻 社会文化コース 2012年3月卒業
大阪府堺市小学校教員 保健主事
筆野 元さん
卒業後一度は一般企業に就職したものの、中学生時代からの夢だった教員を諦め切れずに退職。その後、小学校教員資格認定試験に見事合格した筆野さんは、堺市の小学校の教員として勤め始めます。教員2年目には、教員としての今後のキャリアの幅を広げることも視野にいれて「体力があるうちにもっと研究がしたい!」と、勤務後に大学院の夜間クラスに通い、修士号・博士号を取得。2022年1月には自身の専門分野に関する本も出版。教員・研究者・執筆者、3つの顔をもつ卒業生の過去と現在に迫ります。
ゼミで“批判的に物事を見ること”“問題提起すること”の重要性や研究の面白さに気づく
「現在にも通じるこの気づきを得たのは、渡邊昭子教授の西洋史ゼミです」。文献を持ち寄って、ゼミ生同士で議論するなかで「文献同士の矛盾を見つけて『どうしてその矛盾が生じるのか?』と問題提起したり、そこから新たな仮説を立てたりと話を進めていくと、新しい着眼点や気づきが生まれるんです」と、筆野さんは顔を輝かせます。「一般的に“批判”って聞こえが良くないかもしれませんが、子どもが起こす行動を客観的に判断するために、『本当にそうか?どうしてそうなった?』と立ち返ることが必要な場面もあります。その考え方の基盤はゼミで培うことができました」。
一般企業への就職後に研究したい分野を見出す
「卒業後入社した一般企業で、精神的な理由で離職していく人と接する機会がありました」。そこで、今の社会で生き抜くための“ライフスキル”を会得することの喫緊性に気づいた筆野さんは、「研究したい。子どもたちにも伝えたい。やっぱり先生になりたい」と思い立ち、退職後に小学校教員資格認定試験に挑戦して無事合格、堺市で教師として働きはじめました。
働きながら大学院へ通い博士号を取得
博士号取得まで見据えていたこと、研究したい分野の権威でもある教授が在籍していたことから、教員2年目にして大学院への進学を決意します。「働きながらの研究は、修士課程では同期の院生と切磋琢磨しながら、博士課程ではコロナ禍で孤独と闘いながら、と大変でしたが充実していました」と語ります。
自身の研究分野に関する本を出版
院生時代に他の学校や大学の教員との共著で本を出版。その際に知り合った編集者から、実践的な指導法に関する本の執筆を依頼され、「もっと根拠に基づいた指導がしたい。その方法を広めたい」という思いから提案を受けたといいます。平日は勤務後1時間、土日は5時間を目標に執筆に励んだそうです。「働きながらの執筆活動はやはりハードでしたが、生みの苦しみや自身の経験不足など、気づかされることも多く、教師としても一回り成長できたように思います」。
小学校の教員としてのやりがい
「教え子たちが本当にかわいいですね。『打てば響く』じゃないですが、僕がしゃべっていることを真剣に聴いてくれたり、発問したことに対してすごい勢いで手を挙げてくれたり。反応が純粋で、とてもやりがいのある仕事です。職場にも恵まれ、挑戦したいことにも挑戦させてもらっています」と楽しそうに話す筆野さん。博士課程で身につけた専門性を生かせる保健主事に自ら志望して着任し、今は子どもたちの健康教育を推進しています。
これから挑戦したいこと
「“教師をめざす人材を育てる”という点で、大学教員の仕事も魅力的に感じています。教員9年目、まだまだ未熟な僕ですが、まずは小学校の教員として精一杯、『千里の道も一歩から』自分にできることを着実に進めていきたいです」。保健主事としての仕事を発展させたり、いま実践研究していることを論文化したりと、挑戦したいことがたくさんある、と表情を輝かせていました。