附属池田小学校事件1周年を迎えて

附属池田小学校事件1周年を迎えて

平成14年6月8日

 予想もしなかった忌まわしいあの惨劇の日から、1年が経過しました。犠牲になられた8人の子どもたちに、心から哀悼の誠を捧げますとともに、御霊の安らかなることをお祈りいたします。また、ご家族の皆様方のご心痛に対して、心を一つにするとともに、お悔やみを申し上げます。

 また、13人の負傷されたお子さんとそのご家族の皆さんに、お詫びし、心身ともに1日も早く回復されますことを願っております。

 大学といたしましては、事件発生以来、教職員一同が全力を尽くして対応させていただいたつもりでございますが、それでも、結果として、不十分な点や配慮を欠いた点が多々あったのではないかと心配しております。その点につきましては、お許しいただく以外に、術がございません。

 この1年間に、全国の多数の皆様方からいただきました温かいご支援、ご指導に対しまして、心からお礼を申し上げます。

 私たちが本日まで何とか対応することができましたのも、ひとえに、全国の皆様方からのお力添えとご指導とがあったからであると考えております。重ねて御礼を申しあげます。

 大学といたしましては、事件以来、このような悲惨な事件を二度と起こさない、起こさせないことを決意して、安全対策を講じてまいりました。その幾つかを、ここにご紹介させていただきます。

 1つは、本学附属の11学校園・校舎の教職員に対する安全教育と安全管理の研修の実施であります。事件以後も、研修の強化を図ってまいりましたが、来る6月13日には、本学初の幼・小・中・高・養護学校合同の避難訓練を実施したします。

 2つは、警備員の配置と安全管理対策の整備であります。今後とも、「最悪の事態を想定して、最善の備えをする」をモットーに、さらなる整備を期して参りたいと決意しております。

 3つは、教授会等において附属池田小学校事件の経過報告と諸対応の報告を行って参りました。事件を大学構成員が共通に受け止めるべき課題とし、大学の教育研究における教訓として参りたいということでございます。

 4つは、「国立大学附属学校における安全管理の在り方に関する調査研究会」の設置であります。この「調査研究会」は、ソフト面に力点を置いております。本学の大学・附属学校の教員をはじめとして、全国から10数名の委員に集まっていただいて、研究を開始します。

 なお、昨年11月に文部科学省に設置されました「学校施設の安全管理に関する調査研究協力者会議」は、学校の安全管理に関するハード面の研究会でありますが、本学からは、附属学校部長が委員として参加しております。

 5つは、事件以後、本学の教官を中心としてメンタルケア活動を実施してきております が、このメンタルケア活動は長期的に展開される必要性がございます。これらのニーズに 応えるために、さらに充実したメンタルケア・センターの設置要求を企画しております。   

 6つは、平成13年度卒業式、平成14年度入学式における学長挨拶の中での「安全教 育への決意」の表明であります。本学の主要な使命の一つであります教員養成において、 附属池田小学校事件を風化させることがないようにするとともに、生命の尊さと人間の尊 厳、教師の使命とは何かを認識することの大切さを、学生たちに訴えました。

 7つは、事件の起こりました6月8日を「大阪教育大学学校安全の日」として制定いたしました。制定の趣旨は、(1)このような悲劇を二度と許さないこと、(2)学校安全に対する意識の高揚を図ること、(3)学校・保護者・地域社会が連携協力して、学校安全に対する理解を増進することを期し、本学のみならず、全国に向けて、この趣旨を発信する、ということであります。

 8つは、大学は、事件が起こりました6月8日に、八尾市民会館において「附属池田小学校一周年追悼式典」を挙行するとともに、「学校安全の日」の制定を記念する行事として、「特別講演会」を企画いたしました。第1回目は、著名な画家で、東京芸術大学長であられる平山郁夫先生をお招きして、「生かされて平和への祈り」と題するご講演をしていただきます。原爆で被爆された平山先生の体験を通して、「生きる」ことの意味についての深い問いかけのお話となるであろうと思っております。

 以上が、大学としての努力の一端でございます。大阪教育大学としましては、これからも、「二度と悲惨な事件を起こさない、起こさせない」「安全で、安心できる学校づくり」に誠心誠意、取り組んで参る所存です。学長としてお誓い申し上げます。

 大阪教育大学長 中谷 彪

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