授業探訪 物理学実験2

理論を紐解く14の物理学実験に挑戦


光の速度測定

トライ&エラーと、協力して解決する喜び

 この授業では、学校の教科書で紹介されている物理分野の実験を通して、その実験の理論を正しく理解し、学校で学習する内容との関わりを捉えていきます。

 取り扱う実験は、学生たちが小・中・高等学校の授業で器具の不足や時間の都合上経験してこなかったであろう、14種類の実験(*)です。学生たちは、各自で実験方法や理論についての予習ノートを作成し、授業ごとにローテーションで割り当てられた実験に、個人または2人で臨みます。

*連成振動、Hareの装置による液体の密度測定、ニュートンリング、回折格子、プリズム分光計、熱電対、光の速度測定、電子の比電荷、ミリカンの実験、フランクーヘルツの実験、プランク定数の測定、クーロンの実験/バンデグラフ、電波実験、電気実験

グループワークを行う院生ら

プリズム分光計

 1回の授業の中で、14種類もの実験が同時に進行。中には、実験器具の使い方でつまずいたり、理論どおりの反応にならなかったり、思うように実験が進まないこともあります。そんなときには、既にその実験を経験した学生が、「この器具はコツがいるんよ」「こうすれば測定の効率よくなるで」と力強い味方になってくれ、仲間と協力しながら実験上のトラブルを解決していきます。さらには、再実験や再計測、再計算を乗り越え、最終的に計算が合致ときには、ガッツポーズとともに歓喜の声をあげる姿もありました。


電子の比電荷

 授業を担当する教員の一人である鈴木康文教授は、この授業のねらいについて、計算の公式や問題の解法だけを教える“指導の殻”を破ることだといいます。「学校現場では、テストや受験で出された問題に対して、覚えた解法を使って解く力が重要視されがちです。しかし、この授業を通して、目の前や身の回りで起きている事象に向き合い、自分の中で問いを立ててアプローチしようとする姿勢を身に付け、それを指導に生かしてほしいと考えています」。

実験での学びをプレゼンテーション


プレゼンの様子

 授業で取り組むのは実験だけではありません。授業の各回の最初に、2人の学生が1人ずつ、自分が取り組んだ実験の理論や器具、方法、結果、考察、小・中・高等学校の学習内容との関わりについてプレゼンする機会が設けられています。そこでは、説明や計測方法が間違っていることを教員に指摘される場面も。すると、プレゼンを聞いていた他の学生同士が実験ノートを広げて、「俺のときはこうなった」「あそこの計算はこうかな?」と議論を繰り広げます。

 授業を担当するもう一人の教員である深澤優子准教授は、「このプレゼンでは、その実験の仕組みが、身の回りでどういったものに応用されているか、ということまで調べて説明してもらいます。理論と応用を学生同士で伝え合えるほどに理解していれば、子どもたちに教えるときにも具体的な話ができますし、子どもたちがより理解しやすい指導になると思います」といいます。

授業担当教員からの一言


理科教育部門 深澤優子 准教授

「誰が」「なぜ」「どういった状況で」、その実験で法則性を導き出そうとしたのか、そんな歴史的背景や、実験器具にはどんな工夫が施されているのか、などにも思いを馳せてほしい。そうやって身に付けた知識や事象に対する姿勢を活用して、教員になったときの指導の幅を広げてほしいです。


理科教育部門 鈴木 康文 教授

実験器具には、あえて最低限の説明書しか付けず、学生たちが自分で考えながら実験を進めていけるようにしています。器具と向き合ったときに、予習した実験方法や理論に基づいて考えることを通して、自分の中で問いを組み立てて、他者と協働しながら解決していく力を培ってほしいです。

授業DATA

対象学年 :3回生

主な対象学生:学校教育教員養成課程 小中教育専攻/中等教育専攻 理科教育コース

(2022年5月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

最新記事一覧はこちら

バックナンバーはこちら