附属池田小学校事件から19年目を迎えて

附属池田小学校事件から19年を迎えて

 8名の児童が亡くなり13名の児童と2名の教員が負傷したあの痛ましい事件から19年が経とうとしています。附属池田小学校では、事件当時在籍した全ての児童が学校を巣立ち、事件当時在職した教員も、毎年の人事異動によって公立学校等に移り、現在では、事件当時在職した教員は1名だけとなりました。一方、大阪教育大学においても、事件後に附属池田小学校児童の被害回復や授業再開にボランティアとして参加した多数の学生達は、すでに本学を去り、教職員も事件後に赴任した者が年々多くなっています。歳月がもたらしたこのような変化の中で、これからも事件を風化させることなく、事件の教訓を語り伝えていくことが大きな課題となっています。

 わが国の学校安全や子どもたちの安全をめぐる状況は、その後も益々深刻さを増し、今もなお幼児や児童の安全を脅かす深刻な事件が相次いでおります。本学が、これからも附属池田小学校事件を過去のものとせず、事件の教訓を広く社会に伝え、ますます深刻化するわが国の学校安全と子どもたちの安全確保の課題に、事件を体験した当事者としての役割を果たし続けていくためには、まず本学と本学附属学校園の全教職員と学生が、附属池田小学校事件がどのような事件であったのかを知り、事件の教訓をもとに、学校における子どもたちの安全確保の重要性と教師に託される重い使命について、認識を深める地道な取組みを進めていくことが不可欠であります。

 このような自覚に立って、平成18年度から取り組んできた事件を語り伝える「学校安全の日」の事業として今年度も6月8日(月)に柏原キャンパス及び天王寺キャンパスの授業で、教員と学生が附属池田小学校事件を語り伝える機会を持つこととしておりましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、前期授業については対面で行わないこととしたためアンケートの実施のみとしました。なお、6月8日(月)には、附属池田小学校において「祈りと誓いの集い」を行うとともに、全学で国旗を半旗として弔意をあらわすことを引き続き実施します。

 また、これまでにも大阪教育大学では、事件で亡くなった8名の児童のご家族の皆さんと交わした合意書、さらには負傷児童並びにその保護者の皆さんと交わした合意書に基づき、全教職員の危機対応能力の向上、安全意識の高い教員の育成や学校安全・安全教育に関する研究など、全学を挙げて再発防止策への取組みを続けてきました。

 本学では、平成15年度より、本学教職員に対する「応急手当普及員講習会」を実施し、現在約130名が資格を取得しています。また、大学では学生・教職員対象、附属学校園では教職員・保護者対象の「普通救命講習会」を実施しています。

 その他、教員免許を取得する学生に授業「学校安全」を開講し、平成19年度から必修科目としました。さらに平成29年度入学生からは教員免許を取得しない学生についても必修化しました。

 附属学校園では、平成16年度から、教職員及び幼児・児童・生徒に対する安全教育の推進を行うため、本学独自の役職である学校安全主任を配置しています。

 学校安全推進センターでは、学校安全に関する専門知識の習得と緊急時における対応能力の向上を目的として「大阪教育大学学校安全主任講習会」を実施しており、現在では、本学教職員のみならず、全国の学校教職員を対象とし、これまで多数の方々に受講いただいています。

 本学では、これからも亡くなった8名の児童のご家族の皆様をはじめ事件被害者の皆様との絆を大切にしていきたいと考えています。また、これからも被害児童の成長を見守りながら、事件が残した課題に立ち向かっていきたいと考えています。あのような悲惨な出来事を二度と繰り返すことのないように、これからも着実な取組を進め、その成果を学校関係者や教育界をはじめ、広く社会に発信していく所存でありますので、各方面の皆様の変わらぬご理解とご支援を切にお願いいたします。

 令和2年5月25日
大阪教育大学長 栗林 澄夫

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