授業探訪 物質化学実験Ⅰ

実験を行う学生たち

物質化学実験Ⅰ

理数情報部門 堀 一繫 准教授

 「物質化学実験Ⅰ」を受講する学生は、安全面を配慮してゴーグル、白衣を身に付け、授業開始前にも関わらず、ガスバーナーで湯を沸かしたり、実験器具の用意をしたりと、効率よく実験を進めるために準備を進めます。

 授業開始時間となり、理数情報部門の堀一繁准教授が今日行う実験の説明を始めます。今回は、第2族A陽イオンに分類される銅・カドミウムイオンの性質の理解や薬品の取扱法などの習熟を目的に、それぞれのイオンの検出、及び分離する実験を行います。「弱酸性で硫化水素を通じて沈殿するのが第2族。今回の実験で扱う試薬は危険なものが多いので、最後まで気を抜けません。カドミウムは昔のイタイイタイ病の原因物質です。また、毒性が強い硫化水素を使います。温泉や火山で発生していることが多く、卵の腐った臭いがするもの、と言えばイメージがつくでしょうか」危険を伴う実験ということで、講義室全体に緊張が走り、学生はより一層先生の説明に耳を傾けます。

 その後も「アンモニア水も臭いを嗅がないように注意してください。昔は『気付け薬』にも使われていたぐらいなので、大変なことになります。僕はどちらかというと好きな臭いですが」とジョークも挟みながら、かつ「その先の実験操作で失敗することも想定し、この溶液は余裕をもって作っておいた方がいいと思います」とリスクマネージメントも踏まえながら実験の説明を進めます。

学生たちと話し合いながら実験を行う堀教授

 授業を行う際は、学生が理解しやすいように、身の回りの事象などと結びつけることができる具体例を示しながら説明するように心がけているとのこと。「学生が正確に理解できるかを意識しながら、授業の資料を作ったり、話し方を考えています。理解の確認の1つの手段として、実験を行った1週間後にレポートを提出させ、その内容を確認し添削したうえで、次の週にすべて返却するようにしています」

 実験は2人1組で行います。学生は実験操作一つ一つに対して、「反応させるためには、もう1滴入れた方がいいかな?」「赤色っぽさが消えて青色になるまでっていうことだけど、これは青色と言えるのかな?」などと話し合いながら実験を進めていきます。

 「社会に出てからも1人で仕事をすることは少なく、チームで動くことが求められます。だから、他の人と協力しながら実験を進めてほしい。そういう意味でこの授業は、教育協働学科がめざしている“協働力を身に付ける”要素も含まれています」と語ります。

 実験に取り組む学生の顔は真剣そのもの。危険な試薬への警戒はもちろんですが、この実験操作の意味や、なぜこの結果になったのか?という化学への探究心に駆られています。溶液の色が変わる瞬間や、思っていたとおりの反応が起きたときには、笑顔が溢れます。実験終了後は、実験結果や考察をノートに書き込み、堀先生に見せに行きます。「なぜそうなったのか」「なぜこう考えたのか」と投げかけられ、実験が終わっても事象への探究はまだまだ続きます。

化学の授業を行う堀教授

 「この授業は、教員免許取得の必修科目として位置付けられており、かつ1回生の学生が対象です。基本的なことかもしれませんが、入試で出される問題の答えとして知っている事象を実験で体験することで、それを知識として定着させること。さらに、卒業するまでに大量に書くことになる実験レポートの書き方の習得を通して、自分の思い込みや感情を切り離し、実験事実を客観的に見る目を養うことをめざしています」

 学生たちは引き続き、チームで多くの実験に取り組み、様々な“なぜ?”に真剣に向き合い、わかる楽しさを満喫しながら、化学に関わるあらゆる事象への理解を深めていくことでしょう。

【授業DATA】

対象学年 :学部1回生
主な対象学生:教育協働学科理数情報専攻自然科学コース
開講期:2020年度後期 火曜4・5限

(2020年10月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

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