卒業生CATCH! 木脇 嶺さん

   
  

フリースクールを通して子どもの権利を保障する

教育学部 小学校教員養成5年課程 2015年3月卒業
一般社団法人はらいふ 代表理事
木脇 嶺さん

困難を抱えた子どもの居場所づくり

 木脇嶺さんは、不登校や学校を中退した10代の子どもを対象に、学校とは違う形での学びの場、居場所を提供する「フリースクールはらいふ」を運営しています。「フリースクールは学校のような設置基準がなく、それぞれのスクールが多様な取り組みを行っています。『はらいふ』では、不登校のことを気にせずに楽しく過ごせる居場所になること、この先の進路を一緒に見つけることを中心にサポートを行っています」。加えて、「はらいふ」は自然豊かな場所ならではの活動も盛んです。「近くにきれいな川があるので、外で遊びたいという子どもが多く、夏は川遊びをしたり、冬は焚火をしたりしています」と子どもたちの様子について笑顔で話します。

過去の経験と支援のきっかけ

 高校を中退した経験がある木脇さんは、「当時は社会から切り離されたような感覚があり、とてもしんどい時期を過ごしました」と振り返ります。この時から、学校に行くことができないというだけで、つらい思いをする子どもを少しでも減らしたいと思うようになりました。「当時は小学校の先生になりたかったので、高卒認定を取って、小学校教員の免許が取れる大阪教育大学に進学しました。夜間コースだったので夜は大学に行き、平日の昼はNPO法人で、休日は今の法人の前身となる団体で働いていました。働く中で、中高生の夜の居場所づくり、公立校の特色ある取り組みや海外の教育の視察ツアーなどをしているうちに、学校の先生になるよりも、学校に行くことができない子どものサポートをしたいと考えるようになりました」。卒業後も活動を続けていると、高槻の空き家を社会的に活用しないかと紹介され、まずは「コミュニティハウス」という名前で子ども食堂や地域とのつながりを作るイベントを始めたことが、フリースクール開設のきっかけとなりました。

子どもに自己決定できる環境を

 困難を抱えている子どもと接する上で、大事にしていることについて聞くと「どんな教育をするかという以前に、まずはちゃんとご飯を食べているか、健康に楽しく過ごせているかということを重視しています。そこが保証された上で、いろいろな教育を提供していくべきだと考えています」と話します。また木脇さんは、日本の子どもは、まだまだ自分自身で過ごし方や過ごす場所を選ぶ権利が保障されていないと感じているといい、「ここでは自分のことは自分で決めてもらうことを重視しています。最近はSNSの影響もあってか、何かに挑戦する、一歩踏み出すということをためらう子どもが多くなった気がします。しかし、好きなことは積極的にやってほしいですし、おかしいことにはおかしいとはっきりと言えるようになってほしいです」と、子どもたちが自己決定できる社会をめざして活動しています。

仕事のやりがいと未来の展望

 

 仕事のやりがいは「子どもたちがここに来ることで元気になったり、たくさん話すようになってくれたりといった、ポジティブな変化を近くで見られることです」と笑顔で話します。また、これからの目標について聞くと、もっと支援の幅を広げたいと意気込みます。「現在、『大阪府フリースクール等ネットワーク』の代表もしています。そこでは大阪府のフリースクールなどの団体がネットワークを形成し、学校や行政機関とともに子どもの権利を保障し、福祉を増進することを目的に活動しています。経済的な事情や他の理由も含めて、どのような家庭の子どもでも、フリースクールに通うことが一つの選択肢になるような取り組みを進めていきたいと思っています」


(2024年12月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。


最新記事一覧はこちら

バックナンバーはこちら