音楽ができる人の
活躍する場を創出することで、
音楽の価値を高めたい
教育協働学科 芸術表現専攻 4回生
西川 菜々さん
「私、芸音っていう組織と芸音の学生たちが本当に大好きなんです」。西川菜々さんが目を輝かせて語る「芸音」とは、芸術表現専攻音楽表現コースの学生が自分たちの所属を呼ぶときの略称です。どんなところが好きかとたずねると、「年に何十回も演奏できる機会があり、その運営も学生主体で取り組ませてくれます。周りの学生もみんな明るく協調があって、いとおしくてたまらないです」と、芸音愛がとめどなくあふれます。
同じく音楽を学んでいた母の影響で、「物心がつく頃にはバイオリンを持っていました」という西川さん。その母は、将来像のモデルにもなっています。「母は音楽大学を出ましたが、音楽の道には進まずに一般企業に勤めています。育児をしながらも、全力で仕事に取り組む姿がとてもかっこよく、将来の選択肢は広いほうが良いと考えたため、高校からは勉強も頑張りました」
進学した高校では医学系をめざす生徒が多く、西川さんも本学とは別の大学の薬学部に進学。しかし、「周囲の勢いに乗って薬学部に入ったものの、冷静になったら自分にはちょっと合わないかもと感じ始めました」。
そんなとき、結婚式やイベントで演奏するアルバイトをしたり、趣味でオーケストラに入ったりと、音楽に関わる活動を始めたことが転機になります。「これまでは演奏技術を磨くことで、コンクールに入賞することや、周囲の人に評価してもらうことに終始していました。しかし、音楽で報酬がもらえたり、目の前の人に喜んでもらえたりした経験から、音楽というものは広く社会に価値を提供しうるものだと実感しました」。そこで薬学部を中退し、音楽を学べる大学に入り直すことを決断。音楽の専門性を高められるだけでなく、多様な分野を幅広く学べることから本学を選びました。
音楽表現コースの学生は、「大阪教育大学シンフォニーオーケストラ」として数多くの演奏会を行っています。3 回生のときに約100 人いるオーケストラの代表を務めた西川さんは、演奏と同じくらい運営も楽しんでいました。「ホールとの打ち合わせ、演奏会の進行の段取り、エキストラの方との連絡など、多くを学生の自治で運営しています。たくさんの学生のスケジュールを管理したりと大変なことも多いですが、こんな経験ができるのは他にないと思っています」
さらに音楽表現コースでは、本格的なクラシックコンサート以外に、学校への出張鑑賞会や地域住民が気軽に鑑賞できるコンサートなども数多く行っています。多様な人に向けて演奏するなかで、演奏に向き合う意識も変わりました。「幼少期から、ある種閉ざされたクラシックの世界に身を置いていたので、その世界での音楽の届け方の形式に捕らわれていました。しかし、芸
音での活動を通して、そもそも音楽というのは目の前の人に楽しんでもらうためのものなんだと気づかされました」
こうした経験を通して、将来の夢も見えてきました。「音楽大学を出て音楽だけで生計を立てられる人は本当にわずかです。音楽の専門的教育を受けた人は、日本においてクラシックにか関心のある層は薄いのにも関わらず、演奏会という限られた機会でしか音楽を提供できていません。だから、音楽ができる人の活躍できる場を自ら事業として創出することで、音楽の価値を高めたいと思っています。そのためにまず、自ら挑戦できる環境が整っている企業に就職する予定です」と意気込みます。
幼少期から培ってきた音楽の技術と芸音での多様な経験を生かして、これからの音楽業界を変えていく姿が目に浮かびます。
(2024年5月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。
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