附属池田小学校事件から5年目を迎えて

附属池田小学校事件から5年目を迎えて

平成18年5月17日
池田市民文化会館

 8名の児童が亡くなり13名の児童が負傷したあの痛ましい事件から5年目を迎えました。附属池田小学校では、被害の大きかった当時の2年生が今春卒業し、事件当時の在籍児童は、今年の6年生を残すのみとなりました。また、事件当時在職した教員も、年々人事異動によって公立学校に移り、この春には公立学校から新たに赴任した教員が半数以上を占めるようになりました。一方、大阪教育大学においても、事件後に附属池田小学校児童の被害回復や授業再開にボランティアとして参加した多数の学生達は、すでに本学を卒業し、大学の教職員も事件後に赴任した者が徐々に多くなってきました。5年の歳月がもたらしたこのような変化の中で、これからも事件を風化させることなく、事件の教訓を語り継いでいくことが大きな課題となってきています。

 わが国の学校安全や子どもたちの安全を巡る状況は、その後も益々深刻さを増してきています。一昨年11月の奈良の事件の後も、広島、栃木、滋賀等で幼児や児童の安全を脅かす深刻な事件が相次ぎました。本学が、これからも附属池田小学校事件を過去のものとせず、事件の教訓を広く社会に伝え、ますます深刻化するわが国の学校安全と子どもたちの安全確保の課題に、事件を体験した当事者としての役割を果たし続けていくためには、まず本学の全教職員と学生が、附属池田小学校事件がどのような事件であったのかを知り、事件の教訓をもとに、学校における子どもたちの安全確保の重要性と教師の使命について、認識を深める地道な取り組みを進めていくことが不可欠であると考えています。

 このような自覚に立って、今年の6月8日(大阪教育大学「学校安全の日」)には、大学の3限目(夜間学部は2限目)の全授業(約110科目)で、教員と学生が附属池田小学校事件を語り継ぐ機会を持つことにしました。大阪教育大学では、事件で亡くなった8名の児童のご家族の皆さんと交わした合意書及び負傷児童並びにその保護者の皆さんと交わした合意書に基づき、全教職員の危機対応能力の向上や、安全意識の高い教員の育成など、全学を挙げて再発防止策への取組みを続けてきました。また、学校安全や安全教育に関する教育研究においても、先導的な役割を果たすべく努力を重ねてきました。

 これからも亡くなった8名の児童のご家族の皆様との絆を、大切にしていきたいと考えています。また、被害児童の成長を見守りながら、事件が残した課題に立ち向かっていきたいと考えています。あのような悲惨な出来事を2度と繰り返すことのないように、これからも着実な取り組みを進め、その成果を広く学校関係者や教育界をはじめ広く社会に発信していく所存でありますので、各方面の皆様の変わらぬご支援とご協力をお願いいたします。

 大阪教育大学長 稲垣 卓

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