論理と数理パズル≪上級編≫
理数情報講座 町頭 義朗 教授
「ではこの問題を、トランプを使ってグループで話し合ってみてください」。取り組んでいるのは、『横一列に並んだ、4個の箱のどれかに猫が入っている。開けた箱に猫がいなければ、猫は今いる箱から隣の箱に移動する。最大何回箱を開けることで猫を見つけられるか』という問題。学生たちはトランプを箱に見立て、一列に並べ裏返したり、左右入れ替えたりと、議論しながら試行錯誤します。
「この授業では、正解を言い当てることではなく、どういうことだろうと考えてもらうことを大事にしています」と話す町頭義朗教授。そのためにグループワークの時間を多く取り、合間に少しずつヒントを出していきます。「4箱のうち、最初は偶数番目の箱に猫がいると仮定したらどうなりますか」と町頭教授が問いかけると、「2番の箱をあけた後、3番の箱を開けると必ず猫がいます」と学生が答えます。「そうです。では、3番の箱を開けて猫がいなかったら? それは、最初に偶数番目の箱にいたという仮定が間違っていたということです。そうなった場合、ここから最大何回箱をあけると猫が見つかりますか」。さらなるヒントを受けて閃いた学生たちが、グループの他の学生に説明し始めます。
数理パズルとは、算数や数学的な発想を応用して作られたもの。数学を専攻する学生でもすぐに解法がわからないこともしばしばです。「これは偶奇性を使った問題です。箱を偶数と奇数の二つの属性でくくって考えることで法則が見つけ出せるのですが、以前に高校生に説明した時も理解してもらうのに時間がかかりました」と町頭教授は笑います。
授業の一番のねらいは、「伝えたいことを、他人にどうやって伝えるか」を学ぶこと。「問題が解けて嬉しいと喜んでいるだけでは駄目です。その解き方をどのように説明すれば相手に理解してもらえるか、ということを学んで欲しい。そうすることで論理的思考が身につきます」。まずは問題を理解したうえで、それを人に伝える面白さを知ってほしいと、班活動やプレゼンテーションの機会を多く設けています。毎回授業の冒頭で、前回の授業で指名された学生が宿題を解説するのもその一環です。解説してもらう学生は、授業中の様子を見てランダムに指名します。「どんな解説をするかは学生に全部任せています。聞いている学生の反応は結構手厳しくて、自分ならこうやる、といった意見もありますね。私自身も学生から学んでいる所があります」
授業の合間には、前回の授業で回収したコミュニケーションカードを読み上げ、そこに書かれた内容にリアクションを返しています。中には授業に関係のないものもあり、学生たちから笑いがおこることも。
「授業の感想や質問などを書いてもらいたいのですが、『失恋したんですがどうしたらいいですか』みたいなものもあります。“ちょっと一息”的な時間ですね」。答えるのが結構難しいと笑いながらも、学生のコメントに淡々と突っ込みをいれていく姿は自然体です。
学生には、年齢や理解度など相手にあわせた説明や伝え方ができる力を身につけてほしいと望みます。「そのためには、恋をするのが一番。好きな相手には、何を考えているんだろうと気を遣いながら、あの手この手を使って、一生懸命説明するじゃないですか。だから学生たちにはいつも恋をしなさいと言ってます」
【授業DATA】
対象学年 :学部1回生~5回生
開講期:2018年度後期 金曜2限
備考:初等教育教員養成課程夜間コースを除く