STUDENTS NOW! 西村 昂祐 さん

人と人との繋がりを大切に

教育協働学科芸術表現専攻美術表現コース 4回生
西村 昂祐さん

 「子どもの頃は絵を描くことが特に好きではなかったですし、図工の成績も平均か少し下ぐらいでした」と、美術表現コースの学生としては意外なエピソードを切り出したのは、西村昂祐さん。

 そんな西村さんが、美術の世界に興味を持ったのは高校の頃だと言います。「周りが大学進学のことを考え始めていて、高校卒業後も勉強したいことは何だろうとなんとなく考えたとき、ふと、美術の勉強ってどんなことするんだろう、と考え始めました」。その後、元々興味のあった仏像や文化財の修復に携われる仕事に興味を持ち、そこから美術系の大学にも興味を持ち始めました。

 本学を志望した理由を聞くと、「1、2 回生の間は『絵画』『デザイン』『立体』を並行して学ぶので、自分のやりたいことに打ち込みながら他の分野の知識も得られるのがいいなと思いました。あと、美術とあまり関係のない様々な専攻がある中で学べるのも、美術系の大学と違っておもしろいなと感じました」と答えます。

恥ずかしそうに撮影に応じる西村さん
制作に使用した透明なフィルムを見せる西村さん

 西村さんは、写真の上に透明のフィルムをのせて、その上に絵の具を重ね、最後にキャンバスに転写するという技法を使って表現しています。これは、絵の具を転写することで偶発的な模様をつくる「デカルコマニー」という技法から着想を得たもの。「1 回生の頃から写真と絵の具を組み合わせて表現したいと思い、写真サークルの活動に参加していた時期もありました。2 回生のときに、デカルコマニーの技法も取り扱った授業の最後に出された課題で“何か新しいことをしたい”と思って今の技法に挑戦しました。最初は全く思い通りにいきませんでしたが、何回も何回も挑戦して、少しずつ思い描くものに近い表現ができるようになりました」

 プロのアーティストを志す大学学部生・院生を対象に、返済義務の無い奨学金を給付し、若手アーティストを育成することを目的とした「三菱商事アート・ゲート・プログラム」に3 回生のときに応募し、美術大学・芸術大学以外の大学の学部生として唯一奨学生に選ばれた西村さん。その奨学金を元手に、同じコースの先輩と一緒に、ある企画に取り組みます。それは、マンションの一部のスペースをギャラリーにリノベーションし、作品の展覧会を開こうというもの。「最初は大教生だけでしたが、他大学の美術を専攻している学生も集まって、地域の活性化に貢献できるような個展やグループ展を開くことができました」

西村さんの作品

 西村さんは、学内外の様々な人と協力して開催したイベントやSNS、「三菱商事アート・ゲート・プログラム」での作品発表を通じて、ギャラリーの管理人やコレクターに声をかけられ、東京をはじめ多くの場所で作品を出しています。「マンションでの企画もそうですが、本当に人と人との繋がりが大事だと思っています。お声がけいただいた場所で作品を出して、そこでまた違う人に声をかけてもらって、どんどん繋がっていくような、拡がっていくような感じがあります」

 話し方も佇まいも、落ち着いた印象を与える西村さん。趣味は魚釣りで、釣れなくても何も考えずに川を見たり、制作に行き詰まったときもボーっと散歩したりすることが好きだと言います。「その点から言うと、柏原キャンパスの自然は制作に集中できる環境とも言えるし、自然と発想が湧いてくる美術向きな場所ですね」

 最後に卒業後のことを聞くと、「これからどんなことになるかはわかりませんが、制作は続けていきたいと思います」と、これまでと同じゆっくりとした口調で、西村さんはそう言いました。

「TenYou ―天遊―」vol.55インタビュー&メイキングムービー

(2021年10月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

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