ラボ訪問 新崎 国広 准教授

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❝なぎさ化❞をキーワードに共育コミュニティー

教養学科 人間科学講座
新崎 国広 准教授

 「福祉教育、ボランティア学習において、“なぎさ化”の視点を取り入れる研究課題に力を入れています」
 “なぎさ”とは何か。もちろん“波打ちぎわ”をさすのではなく、「福祉施設と地域」「学校と地域」といった“結節領域”を“なぎさ”と比喩的に表現しています。

 「地域社会に住む高齢者、障がい者は、社会的に孤立しがちです。また、家庭でもネグレクトや児童虐待の背景に母親の社会的孤立があります。孤立化の問題は、福祉と子育て、教育の大きな課題です。いじめ、不登校などは、学校自身が地域から孤立していることも大きな要因だといわれています。

 「学校と地域が課題を共有して、一緒に歩んでいくというのがわたしのスタンスです。“なぎさ”をキーワードに学校と家庭、地域社会を巻き込んだ共育・福祉コミュニティーづくりが実践研究の目標です」

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 大学で社会福祉を専攻。ソーシャルワーカー(社会福祉士)として、大阪府内の肢体不自由児施設に着任し、21年間、障がいをもつ子どもたちや保護者と関わりました。

 「障がい児を受け入れる地域の福祉、教育環境、サービス提供の現場をつぶさに見るなかで、入所児童の生活主体者としての社会参加の機会を保障することの難しさを痛感しました。そこで、施設が地域に開かれ、施設利用者と地域住民が交流できるような方法として、施設ボランティアコーディネーションを模索するようになりました」

 例えば、大阪府岬町での「地域福祉共育(ともいく)」のフィールドワークは出発点となったと強調します。
 「不登校、特別支援の子どもたちは学校では孤立する可能性が高いですが、同じように孤立しがちな高齢者・障がい者、そして幼稚園・保育園児と交わることで、自己有用感に気づき居場所ができるようになります。小・中学生たちはサロンでの接遇を通して、高齢者等から『ありがとう』と感謝されることで自分の存在意義、自己肯定感を得ることができます」

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 「親や先生とはタテの関係で、同級生とはヨコの関係ですが、高齢者や障がい者、幼児とは温かくやさしいナナメの関係なのでスムーズに入ることができます。地域に戻れば、街で近所のおじいちゃんおばあちゃんに声をかけてもらい、挨拶を交わす顔見知りです。その輪に小学校の教員や、生徒学生ボランティアが加わることで共育コミュニティーができあがります。地域の教育力が低下した各地域に日頃から“挨拶”や“おせっかい”を復活させる取り組みでもあります」

 2002年、大学院教育研究科修士課程を修了後、本学の教員となりました。

 福祉の現場で実践を積み、研究者となりました。常に現場からの視点で追究するのがスタイルです。授業は、発達人間学、地域福祉、福祉教育、児童福祉、社会福祉など幅広く担当、東日本大震災の学習支援ボランティアを指導した「いい汗かこうぜ! ボランティア」も担当しています。「わたしの授業を受け、ソーシャルワーカーになりたいという学生が少し出てきていることが嬉しいですね」

(2013年9月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

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