国語Ⅱ(書写)
美術・書道教育部門 瀨川 賢一 准教授
「国語Ⅱ(書写)」を受講する学生たちが、講義室の最前列の机に着座した美術・書道教育部門の瀨川賢一先生のもとに、新型コロナウイルス感染症対策のため十分な距離を取って1列に並んでいます。並んでいる学生たちは、前週に配信されたオンライン授業を受講した際に出された課題と向き合い、各々が毛筆で書いてきた半紙を抱えています。
この日は、後期初めての対面授業。瀨川先生は、学生の書を見て、添削しながらコミュニケーションを図ります。「今回のポイントは『起筆』と『終筆』で、筆をドンと押さえること。これができていたら二重丸」「筆を立てて書く構えがしっかりできています」「縦画は横画と違って肩と肘の2点を使いながら書く必要がありますが、それは小学3年生には難しい。でも、元から線があれば、その上を筆でなぞろうとして自然と身体がついてくる。そのために、半紙を二つ折りにして縦の折り目を付ける手立てを取ってほしい」
「書いているときに半紙が破れたら、子どもたちにどう指導すればよいか。しっかり半紙を筆で押さえると破れることがある。紙の性質上、仕方がない。だから、『これだけしっかり筆で押さえることができた』と逆に褒めてあげたらいい」。小学生への指導法を交えながら、学生一人ひとりが持参した書のできているところ、できていないところを的確に伝えていきます。時折、書から窺える学生の性格等を言い当て、学生たちから笑いを取り、授業の雰囲気を和ませます。
前週に実施されたオンライン授業では、瀨川先生が「小学校学習指導要領では『毛筆を使用する書写の指導は、硬筆による書写の能力の基礎を養うよう指導する』と記載されています。平時と変わらず書きやすい手で書く、ということでよいかと思います。学校現場に出ても、学習指導要領に則った指導を心掛けてください」と語りかけます。小学校の授業同様、硯や下敷きの位置、姿勢や筆の持ち方等の書写の基本についてカメラに向かって説明し、書き方の説明時は手元を書き手目線で写している映像が配信されました。
「書写は実技なので基本的には対面での授業を行いたいと思っています。書いているときの空気感を共有したいし、実際に筆を動かしているところを見て、その上で書の添削を行うことはすごく大事。しかしながら、このコロナ禍を含めどんな状況においても、できる範囲のことをベストな方法を模索しながら実施することが大切だと思います。現時点では、オンラインで書き方を学んで書写の課題に取り組み、次週に対面で添削を行う方法で実施しています」
この授業は、小学校教員の免許取得に関わって、受講する必要があります。小学校教員に必要な書写技能に限らず、児童・生徒にどんな言葉がけをすると理解してもらえるのか、といった指導のポイントも重要視されており、学生にもそのことを大切にしてもらいたいと瀨川先生は言います。「半年間の15回の授業の中で、学生が互いに『この点ができている』と褒め合うことができ、『上手い』『下手』という言葉が無くなったら成功だと思っています。そうやって、その字を書く上で『これ大事だな』と思ってくれたら、教壇に立ったときに子どもたちへの関わり方や褒め方が変わってくる。目の前の子どもたちが『わかった』『できた』と思う瞬間が教員としての醍醐味であり、子ども達とそれを共有できることこそ、教育者としてプロと言えるのではないでしょうか。教員という仕事は、そういうことだと思います。授業を行う際には、将来関わることになる子どもたちに対して、どうあってほしいかをいつも考えています」
これからも瀨川先生の授業「国語Ⅱ(書写)」では、添削や声かけを通して、『字を書くこと』について学生たちが互いに考え、まだ見ぬ子どもたちとの関わりを思い描き続けます。