忍耐力を強みに教育の世界へ
教養学科自然研究専攻 4回生
筧 葵湖さん
「忍耐力は負けません」ときっぱり言いきる筧葵湖さん。小学校4年生から柔道を始め、本学でも体育会柔道部に所属。物事に粘り強く取り組む姿勢を培いました。高校や大学では女子部員が一人ということもあり、「技術はこちらが上なのに力負けして悔しい思いをしたり、男子部員と同じ練習メニューをさせられて辛かったりと、いろんなことを経験しました」。それでも、今年9月に引退するまで14年間続けてきました。
高校生の頃から、どこの大学に進学しても教員免許は取得しようと決めていました。その理由は両親にあります。「高校受験の時は塾に通わず、ずっと母が勉強を見てくれました。友達も教わりに来て、“筧塾”なんて言われていました。父親も企業で研修の講師のような仕事をしています。ふたりとも教員免許を取得していて、教職でなくとも『何かを教える』ことに携わっています」。そんな姿を見て、教育学を学ぶことは、どんな将来を選んでも役立つと考えていました。
将来や進路は漠然としたまま、子どもの頃から大好きな生き物の研究をしようと教養学科自然研究専攻に入学。当初は理系の大学院への進学を考えていましたが、教職関係の授業を受けるうちに、世話好きで面倒見のいい自身の性格が教員向きだと感じ始めます。「相手の立場で物事を考え、頼まれたことは120%で返す。そういう自分を活かせるのが教員じゃないかと気づきました」。理想の教師像は、中学時代の柔道の先生。「勝ったら怒って、負けたら褒める。勝ったことに満足させずさらなる成長を促し、負けた時はよく頑張ったと褒めて次に目を向けさせる先生でした」。恩師のように、常に次の成長につながる指導をしたいと意気込みます。
所属する化学生態学研究室で、研究対象に選んだのはシロアリ。体表成分の分析や行動観察からその生態について探っています。実験で使うシロアリをキャンパスで捕まえるのは一苦労だそう。「先生には『時間と根性で見つかる』と言われますが結構大変。何度も茂みに分け入って、松の倒木を探し、斧で割って、枝につまっているシロアリを採取します」。捕まえたシロアリは、イベントでも活躍します。シロアリの習性をわかり易く紹介し、嫌われがちな虫たちが自然界で重要な役割を果たしていることを伝えます。スマートフォンには可愛がっているシロアリの写真がたくさん保存されています。
卒業後は教職大学院へ進学します。進学理由の一つは、教科の指導法、学級運営、特別支援教育など、もっと教育を深く学びたいとの思い。もう一つは、高校生対象の院内学級について研究したいと考えたからです。病気やけがの治療のために長期間登校できない高校生の学習支援として、大阪府は平成24年から非常勤講師を派遣する制度を創設。そのきっかけを作ったのが、高校時代、長期入院を余儀なくされた同級生の訴えでした。「彼が、例えばタブレットをつないでオンライン中継で授業を受けられないかと言っていました。ICTは今とても注目されていますし、せっかく大学院で研究するなら彼の願っていた高校生対象の院内学級にもっとICTを有効活用する方策を探りたい」
周囲からは、大学院進学や、一般企業の仕事を経験せず教員になることに懐疑的な意見を言われることもあります。それでも「物事は自分の思ったようにいかないこともあるし、予想外に良い方向に転がることもあります。いろんなことに挑戦して、結果に一喜一憂せず全て経験と捉え、深みのある人間になりたい」と語ります。
今春から妹も本学に入学しました。「性格も興味のあるものも全然違う。なのに、いつのまにか幼稚園から大学までずっと同じ学校です。大教大を選んだのは、私が紆余曲折していたのをみて、彼女なりに思ったことがあるのかな」と苦笑い。家族の話になると途端に眼差しが柔らかくなり、優しいお姉ちゃんの顔に。自身のことを話す力強さとのギャップがとても印象的です。
「TenYou ―天遊―」vol.43インタビュー&メイキングムービー
(2017年11月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。
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