ラボ訪問 谷 敬太 教授

谷敬太教授の写真1

実験を重視し、サイエンスの道に

教養学科 自然研究講座
谷 敬太 教授

 「光や電気に応える機能性有機化合物について~教育学部における研究と学生の進路について~」
 先日、このテーマで附属高等学校平野校舎の高校生たちに話をしました。「機能性有機化合物(材料)は、光や電気などの刺激に対して、素晴らしい機能を発揮してくれます。たいていの有機物質は光と仲良くできないのですが、仲良くできる有機物質を見つけ出し、設計・合成し、その性質を化学的に明らかにするのが研究テーマです」

 「物質と色の話」「光と電気(ホール輸送)に応えるカルバゾール発色団」「光と仲がよいフォトクロミック分子」など、谷教授が研究している高機能性有機化合物の研究成果は産業界からも注目を集めています。「有機EL材料や太陽電池、メモリー材料への応用などで、企業から共同研究のオファーがきており、進めています。さらに研究内容を学問的に解明するために大学の研究者とも幅広く連携しています」

 「化学」との出会いは、中学生時代の「フェノールフタレイン溶液」の実験を体験したことだといいます。「アルカリ性における赤紫色への変化をきれいだと感じました。化学の実験って面白いと感動したものです」。リトマス試験紙の実験、水の水素と酸素への分解など、高校に進んでも、化学実験の面白さに熱中するようになったといいます。高校時代の先生から受けた進路指導のアドバイスで研究者の道を意識したと振り返ります。

実験を実際にやって見せてくれる谷教授

 谷教授はまた、高校生に対する話の中で、化学を志すなら実験重視でなければならないことを、自らの体験を通して強調しました。「なぜ?どうして?の疑問や興味・関心、好奇心をもつことがまず大切です。それを調べるためにどのような実験をすればいいのか、頭の中でいろいろ考えます。その後、実験を開始し、その結果を素直に受け入れます」と説きました。

 研究とともに重視しているのが学生の教育指導です。一般教養では、サイエンス全般にわたって興味・関心を持ち続け、化学を楽しんでもらえるよう働き掛けています。「サイエンスは世の中の経済や社会生活と無縁のように思われがちですが、そうではありません。われわれの社会生活と密接な関係があるのです」  最近では、放射能や環境問題がクローズアップされていますが、「一般の人にとって複雑で専門的な分野だからといって、マスメディアで科学者が並べる言葉を鵜呑みにするのはいけません。科学的な考え方を具体的に説明することが、わたしたちの使命だと思っています」

谷敬太教授の写真3

 自然研究講座では、理科の教員免許を取ろうとする学生のために化学分野の基礎をしっかり身につけさせる教育指導に力を入れています。そして、大学院修士課程ではもちろん、実験も含めて専門性を磨く指導を行っています。「彼らのやる気、意欲を高め、サイエンスの道に踏み出そうとする後進を育てるのがわたしの仕事です」と強調します。

 また、学生に共通して身につけてほしい資質がプレゼンテーション力だといいます。日本語での発表はもとより、アメリカ・シカゴ大学で博士研究員として働いたときに英語の必要性を痛感したといいます。「サイエンスに携わる研究者にとって、論文として発表する内容は英語がほとんど。国際会議では、当然のことながら英語です」。それに対応するため、修士課程の学生には国際会議に同行出席させ、必ず1回以上は英語で研究発表させるといいます。「必死で英語もがんばりなさいと、日ごろからはっぱをかけています。実験はもちろんのこと、やはり学生にはいろいろなことを勉強をしてほしいからです」

(2013年6月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

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