※スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは
文部科学省が科学技術や理数教育を重点的に行う高校を指定する制度。生徒による研究発表、大学や研究機関との連携、トップクラスの研究者や技術者等との交流などを通じて、 論理的思考力、創造性、独創性を育てる。
受講生
平成27年4月~平成29年3月受講
増田高行さん
大阪大学大学院理学研究科数学専攻博士後期課程3年
◆プログラムを受講した経緯は?
元々高校教員志望で、学部生の段階で教員免許は取っていたのですが、高校教員になるならきちんと数学を勉強しておいたほうがいいと周囲からの助言もあって、大学院に進みました。修士課程の段階でプログラムのことを噂程度に知り、博士課程に入って大学の掲示板で見て申し込みました。
◆教員免許をもっていながら受講した理由は?
最初にプログラムの説明会に行ったのですが、実のところSSHと言われてもピンと来なかったですし、教員免許もすでに持っていたので、自分にとってどんな利点があるのかよくわかりませんでした。しかし、教員になってから何かしらプラスアルファがあるのだろうと、曖昧なまま受講しました。実際に入ってみたら、理系教員としてやはりSSHのことは知っておいたほうが良いと感じたので、それが学べたのは良かったです。また、ぼくは数学ですが、他の理科科目の人と話すことができて、いろいろなことを知ることができました。さらに、博士を出た教員はそうでない教員とは何が違うのか、考えるきっかけができました。
◆博士教員のメリットとは?
与えられた問題をやらせるだけでなく、自分で問題を構成して与えられるから、効果的な指導ができると思います。それから、ぼくはずっと、なぜ数学をするのかということを考えていて、それは研究をしていないとわからないことだと思います。それを自分の言葉で教えられるのが博士教員の強みです。
◆高校教員になったらどんなことがしたいですか?
今は、いわゆる学力レベルの高い学校をいろいろ見させてもらっていますが、勉強だけしかしていない子が多いので、もっと人間的なことを教えたいです。それから、なぜ勉強するのかわからずに勉強している子があまりに多いと感じているので、それをしっかりと伝えたい。
◆後に続く人にメッセージを。
高校の教員として大事なのは、教科の専門性と教職の専門性、その両方を備えていることだと思います。博士課程まで行く人は、教科の専門性は十分だと思いますが、教職の専門性がない。研究を教えるという部分だけでなく、教職の基礎的なことを学ぶのはとても重要なので、教員になるなら受講をおすすめします。
修了生
平成22年4月~平成24年3月受講
加藤智成さん
京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士後期課程単位取得退学
大阪府立住吉高等学校教諭(物理)
◆プログラムを受講した経緯は?
大学院修了を前に、就職をどうするか迷っていました。そんなときに教授がこのプログラムを紹介してくれたのがきっかけです。以前から教えることは好きだったので教員の道も考えてはいたのですが、免許がなかったので決断できていませんでした。それがこのプログラムで免許が取れるということを知って、そのことも後押しになりました。
◆受講したなかで印象に残っていることは?
大教大附属高校天王寺校舎でSSHの手伝いをしていて、海外研修に同行したことが印象深いです。当時附属天王寺高はSSHを始めたばかりだったのですが、研修先のアメリカの高校はとてもハイレベルな研究をしていて本当にすごかったです。それでも生徒たちは物怖じせず、英語でがんばってコミュニケーションをとっていて、たくましいなと思いました。
◆プログラムを通じて学んだことで、今に生きていることは?
附属高の先生の模擬授業を見学したり、受講生同士で授業計画を検討し合ったりしたことは今も覚えています。基本的なことをしっかり学べたのはよかったですね。ゼミでは、学力とは何かというテーマで議論したこともありました。そういうことを突き詰めて考えてみようというのは今でも時々思うところで、結論が出るものではないのですが、考えるきっかけをもらいました。また、住吉高校はSSH指定校で、わたしは現在その主担当をしていますが、附属天王寺高での経験は非常に参考になっています。
◆これからの目標は?
自分が専門とする物理の教育に関して、授業研究や、学会発表をしたいと思っています。物理を通じて生徒がどう学ぶか、何を学ばせるか、さらには教育とは何かといったことを、深く掘り下げて考えたいです。
◆後に続く人にメッセージを。
このプログラムの対象になる人は、基本的には研究の道に進みたいという人が多いのでしょうが、選択肢の一つとして教育というのも面白いのではないかと思います。今後は博士教員のネットワークを作って、互いに刺激したり情報共有したりということができるようにしたいと考えているので、一緒にやっていきましょう。
(2016年8月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。
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