附属池田小学校事件についての学長の思い

附属池田小学校事件についての学長の思い

平成13年10月11日

 附属池田小学校事件から、4ヶ月余りが経過しました。この時点で、学長としての反省と課題とを整理するとともに、思いの一端を述べさせていただきたく存じます。

1 事件についてのお詫び
 去る6月8日、大阪教育大学附属池田小学校において、常軌を逸した犯行によって8人の児童の尊い命が奪われ、13人の児童、2人の教員が負傷されたことは、誠に痛恨の極みであり、犯人に対しては、深い憤りを覚えます。
 亡くなられました児童の皆さんのご冥福をお祈り申し上げますとともに、亡くなられました児童のご家族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。また、負傷されました児童の皆さんとその保護者の皆様のご回復をお祈り申し上げます。安全であるはずの学校において、多数の死傷者を出しましたことを、ここに深くお詫び申し上げます。
 児童、保護者、地域の方々、その他多くの方々に多大のご迷惑をお掛けしましたことも、重ねてお詫び申し上げます。
 この事件につきましては、8月23日に、附属池田小学校長が、事件の経過報告とともに、反省と謝罪を表明いたしました。附属池田小学校を管理する大学としましては、このことを重く受けとめ、本学の附属学校の安全管理に万全を期し、全国の学校のモデルとすべく努力したいと存じます。

2 学校の安全管理について
 本事件は、マスコミでも、凶悪かつ残忍な犯行と報道されました。今日、社会全体の治安の悪化が叫ばれつつあるにもかかわらず、凶悪な犯罪が日常的に報じられている状況を考えますと、私も学校も、社会全体の危機意識の希薄さの中に埋没していたと反省せざるを得ません。また、本学の附属学校では、この種の事件が発生しておらず、それゆえ、発生するはずがないという先入観があったのも事実です。
 大学としては、日野小学校の事件を背景とした平成12年1月7日付けの文部省通知「幼児児童生徒の安全確保及び学校の安全管理について」を受け、11の各附属学校園に通知し、その周知徹底と安全確保の措置を取ってきていたつもりでした。しかし、本学の附属池田小学校で、今回の事件が発生したことを考えますならば、学校の安全管理への対応が不十分であったと認めなければなりません。
 特に、外来者の入構に対しては無防備であったこと、構内における部外者に対する注意意識が足りなかったことは、大いに悔やまれるところであります。
 今後は、このようなことが二度と起こらないよう、「常に最悪の事態を想定し最善の備えを整える」という安全管理の基本原則に立脚して万全の安全対策を講じるとともに、「安全で安心できる学校」の在り方を、全力を尽くして追求して参りたいと決意しております。

3 事件発生当時の教職員の対応について
 今回の場合、附属池田小学校の教職員は、突発的な状況の中で、咄嗟に判断し行動しなければなりませんでした。その時の教職員は、想像を絶する凶悪な犯行が目の前で起こったために、全く混乱した状態であったと思われます。事件発生当時の教職員の対応と行動において、混乱と行き違いがあったとしても、極限状態の中では避けがたかったことと考えています。もっとも、適切で充分な行動を取らなかったという厳しいご指摘とご批判については、真摯に受けとめさせていただかなければなりません。
 学長として、附属学校園の安全管理に十分な配慮をし得なかったことから、児童をはじめ教職員にこのような不幸な事件に遭遇させてしまったことを反省するとともに、心よりお詫びを申し上げます。

4 大学の教員養成の在り方について
 大阪教育大学としては、今回の事件を痛恨の思いをもって受けとめ、「安全で安心できる学校」の在り方を追求して参ります。
 また、大学における教員養成の理論と実践とにおいては、心の教育のできる教員、人間の生命の尊さを認識できる教員、人間の尊厳の確立を目指すことのできる教員、教育者の使命と任務を深く自覚することのできる教員の養成に努め、その社会的使命を果たしたいと考えております。

 大阪教育大学長 中谷 彪

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