エッセイ

小学校
2020/12/18
感謝の手紙
 

「A先生へ おはようございます!今週もよろしくお願いします!週末、皆様のおかげで無事10歳の誕生日を迎えることができました。『じぃじ(故人)に感謝する!』と話し、『生きている人は誰に?』と聞くと『A先生!』とゆうとりました。『先生やったしやっていけたし!』と…。本当にそうだと思いました。大らかに見守って下さる先生のお陰で本日も娘は元気です。本当にいつもありがとうございます。」

このようなお手紙をいただいたときの話です。この児童(以下Bさん)に会ったのは3年生からでした。クラスで目立たない女の子です。お母さん曰く、HSC(Highly Sensitive Child:ひといちばい敏感な子)ではないかと思っているとのことでした。Bさんの場合は、具体的に何か大きなことがあって不登校や登校しぶりに繋がるのではなく、何が気になるわけでもなく、日常の小さなすれ違いや葛藤に非常にエネルギーがかかり、疲れてしまうということが多くありました。

3年生のころは朝の登校しぶりやその日の気分により欠席というのは日常茶飯事でした。お母さんと毎日のように連絡を重ね、教務や学外のカウンセラーとも連携して、少しでも彼女が過ごしやすい日常となるように考えました。お母さんは登校しぶりが起こると毎回、しっかりとBさんと話し、聞き、できるだけ学校に足が向くように努めてくれました。その話し合いは毎度1時間弱かかっていたそうです。

その成果もあってか、登校できない日は順調に減っていきました。それでも、登校しぶりの日数が劇的に減ったわけではありませんし、登校できない日がなくなったわけではありません。そのまま、4年生になりました。4年生になっても登校しぶりはなくなりませんでした。それでも、お母さんは未だに登校しぶりがあった際には、あの長い話し合いを続けました。私はというと、お母さんとこまめなやりとりをする以外は、学級経営を通常通り行い、悩んでる子の話を聞き、できるだけ楽しく過ごせるようにしました。別段、全国の教師と違うことはしていません。そうして平和を保つのが一番大切だと信じて、学級経営を続けました。でも、正直、この時の私はこの対応の仕方で合っているんだろうかと悩んでもいました。もっと効率の良いやり方があるんじゃないか。そう考えもしました。

そんなある日にお手紙をいただいたのです。この手紙をいただいたときに、今のやり方でいいんだと思えました。きっと子どもによっていろんな対応の仕方があります。でも、今回はきっとこの対応で良かったんだろうと思いました。だって、お母さんもその児童もしっかりと前を向けているんですから。

この手紙にあるBさんの感謝は、私よりもまずお母さんに向けられるべきものだと思います。でも、もし、その次に向けられる感謝が担任だとするのであれば、これほど魅力的な仕事はないのではないかと思います。それだけ、子どもに深く関われる仕事なのです。責任はもちろん大きいです。でもその責任分、返ってくるものも大きいのです。教師を始めて3年。これからもそんな子どもたちと関わっていけると思うとワクワクします。