エッセイ

高等学校
2020/11/10
生徒からもらった大切な言葉
 

教育改革が大きなテーマとなって久しいが、私も授業をどのようにして変えれば生徒が「わくわく」して受けてもらえるものになるのか、試行錯誤していた。

まずは、以下のような授業をしようと心に決めていた。

① 講義一辺倒の授業はしない。
② 生徒に興味を持たせるために、ディスカッションの時間を必ず設ける。
③ ワークシートの作成やディスカッションをさせた後は必ず発表(プレゼン)をさせる。
④ 授業中は生徒とのコミュニケーションを活発にとり、全員の生徒から様々な意見や感想を聞くようにする。
⑤ 教科書には必ずしもこだわらないで、自作教材を多用して、社会で起こっている現在進行形の話題を授業に入れていく。

このようなことを考えながら、授業計画や自主教材の作成をおこない、授業に臨んだ。

最初は、総務省と経団連からアップされている「Society5.0」の動画から見せた。

そして、このような話から生徒に語りかけた。ラスベガスのカジノやバー、ホテルで働く従業員たちがストライキをおこなった。それは、「職場にロボットやAIを導入するな!」というもの。ロボットやAI(人工知能)の導入で自分たちの職が奪われることに対する抗議デモである。ロボットやAIは決まった仕事(定型業務)が得意である。例を挙げれば、24時間稼働している工場、銀行での窓口業務が減っているというニュースなど。今後はAI革命で60パーセント以上の職業が無くなるという予測もあると伝えた。ここまで話していくと、生徒たちの目が輝いていった。そして、生徒に質問をした。「今あげた以外でも無くなる職業はたくさんあるよね。それを発表してみよう」。そうすると生徒からいろいろな意見が出てくる。「無人コンビニのニュースを聞いた」、「自動運転技術が進むとタクシーやトラック運転手さんもいらなくなる」いろいろな意見が生徒から出てきて教室内がざわつく。よしよしそれでいい、と私は心の中でほくそ笑んでいた。

私は続けて話した。「でも、ロボットやAIにはできない仕事だってたくさんあるよね」と問いかけたら、「看護師や介護士、保育士はロボットではできない」と1人の女子生徒が発言した。それからは生徒たちがいろいろな例をあげていく。デザイナーや建築士のような創造力が必要な職業などという意見も多く出た。寝ている生徒はいない。みんな目をキラキラさせて意見を考え発表していった。

それから毎時間、グループやペアリングなどで、「エシカル消費」や「SDGs」の話題を取り上げ生徒から意見を汲み上げていった。エシカル消費での「児童労働」の動画を見せた後の感想文では、今までにないような真剣な意見が原稿用紙に書かれていた。

一番人気だったのが、「自分が先生になったらどんな授業をするか」という「模擬授業」の時間であった。私からは「自分の好きな分野、興味あることならなんでもいいよ」というと、生徒はそれぞれパソコンのプレゼンソフトで何やら作り始めた。5回分の授業時間をかけて生徒たちが完成したものは実に多彩であった。アニメ、動物、ファッションなどなど、そして「新米先生の授業」が始まった。初めての授業に照れる生徒、話しが二転三転して結論までいかない生徒など、様々であったが、全員の生徒が「自分の授業」をやり終えた。

学期の最後の授業で生徒たちに感想を聞いてみた。それは私が一番望んでいた生徒の感想である。「先生、こんなに楽しい授業を受けたことがないよ」、「他の先生にこの授業を見せてやりたい」、「模擬授業、めちゃ楽しかった。教員になりたくなってきた」様々な生徒からの感想は、この授業が間違っていなかった証明であった。教師として授業に対する自信も湧いてきた。

「先生、2学期の授業も楽しみにしています」生徒からの最大の褒め言葉を貰った。