エッセイ

栄養士
2020/11/10
歌で食育30年
 

私は「歌で食育」に取り組んで30年になります。最初は冬寒くなると牛乳の残量がふえるのをおさえたかったのです。でも「飲まないとだめです」とか「飲まないと骨が弱くなります」とかいうのではなく楽しく自然に飲めるようにしたいと思いました。そのとき工作クラブの担当をしていて、相方の先生にお面の作り方を教えてもらって牛乳マンのお面を作りました。牛乳マンの歌を作って骨のバトンも作りました。牛乳の残量も減り好評だったと思います。 

その次に人参マンのお面を作り、歌も作りました。子どもから、「牛乳マンは骨のバトンがあるのに、人参マンにはなにもなくて可哀想」と言われ、人参ビーム砲を作りました。赤色の食品として牛乳、緑色の食品として人参ができたので、黄色の食品としてパンの歌も作りました。その学校を離任する時、「先生がいなくなったら、誰が牛乳マンをやってくれるのですか」と言われて困りましたが、その子の中に定着していることがうれしかったです。 

次の3校目でも2校目と同じように牛乳マン・人参マン・僕はパンで食育を行っていこうとしていたら「次の新曲はなんですか」と聞かれ「食品ピラミッドの歌」を作りました。「栄養のバランスよく食べましょう」というのですが、どうすればバランスがいいのかが一目でわかるものを作りたいと思い、栄養ピラミッドのエプロンと三角錐の帽子をつくりました。私の他の曲に比べれば長いので、どうかと思いましたが好評でした。 

堺には「はとぶえ」という児童の詩や作文を載せる冊子があります。その中の「学校の紹介」の欄に、6年生が記事を書くときに担任が「うちの学校のよいところをあげて」と尋ねると、「歌で食育してくれる栄養士さん」と答えてくれました。また、中学校区の小中合同発表会で、代表の4年生が演目の中に「豆豆音頭」「食品ピラミッドの歌」の二曲を入れてくださり私も一緒に歌いました。それまでは毎日歌ってなかったのですが、4校目の学校から毎日歌うようになりました。 

転勤のたびに着任式で話をするのですが、3校目から「栄養教諭のテーマソング」を歌っています。この歌でこれから私のすることを理解してもらえます。保護者への給食試食会も給食の話をするのですが、給食時間に歌っている歌を話にちりばめると保護者の集中力があがります。アンケートで「子どもが聞きなれない歌を歌っていたのですが、先生の歌だったのですね。」と回答してもらいました。 

今は給食委員会児童の放送の後に、食育月目標にそった歌、今日の給食にそった歌、季節の歌、生活指導に関係した歌、保健指導に関係した歌などを歌っています。何曲も歌うので、コマーシャルソングのように短く伝えたいことだけくりかえす歌にしています。休憩時間に児童とすれ違うと「今日は何を歌うの」「パンの歌歌って」とか言われます。6年生に卒業前に毎年感謝状をもらいますが、そこに「給食のことや食育のことを教えてもらってうれしかったです。歌すごくおもしろかったです。」と書いてくれることが多いです。研修会で「歌で食育」の発表をした時、参加されていた先生が「僕は十の合成を歌にしています。」と言って歌ってくださいました。それを聞いたとき私の中でも「十になる数」が思い浮かびました。食育とは違うのですが、1年生に毎日歌っていたら,子どもの方から「新曲がほしい」という声が上がってきて、「引き算引き算ゴーゴー」を作りました。ある日急いでいて、リズムを間違えて歌ってしまったら、間違いを指摘してくれました。本当によく聞いてくれています。こんな子どもとのやり取りの中で幸せを感じています。