恩師への手紙

恩師への手紙
2020/11/24
せいさんへ
 

先生と最後にお会いしたのは、令和元年の初冬でした。夏に判明した癌の治療中にもかかわらず、先生は最寄りのバス停まで迎えに来られ、帰りもバス停まで送ってくださいました。病状の回復と再会を願って別れましたが、再会は叶いませんでした。話したいことや聞きたいことがまだあったのに残念でなりません。

先生との出会いは高校一年生。公立高校受験に失敗し、私立の男子校への入学式。不安しかない中で担任として紹介されたのが先生でした。小柄で穏やかな印象なのに、色黒(後で若い頃の遺跡発掘のためだと伺った)で驚きました。先生は日本史担当のため一年の授業はなく、学活だけでした。ただ、歴史好きの私は、先生が顧問だった歴史研究部に勧誘され入部したことから、三年間は先生と一緒に、授業やクラブなどで様々なことを経験しました。クラスでは先生の自宅(時宗の寺院)に伺って境内で焼き肉をした後、近くの公園でソフトボールをしたこと。クラブの見学会では、木が鬱蒼と茂る崖の上にある古墳へとあっという間に上っていく姿に驚いたこと。その帰り道「暑い暑い」とサンダルで水たまりに入る姿にも驚いたことなど。真面目だけど面白いことが好きで、冗談も分かる先生、本当に生徒には真剣にかつ愛情を持って接してくださいました。私の手元に一年の学級通信『ぜんしん』が今でも残っていますが、生徒への愛情や尊重の気持ちが滲み出ています。また、人との接し方や物事への取り組み方、一つのことに情熱を傾けることの大切さなども、先生は言葉ではなくその背中で教えてくれました。

私は高校卒業後も先生とお話しする機会が多くあり、その都度様々なことを学べたのは今でも財産です。教師になって二十年以上が過ぎましたが、学級担任や授業、クラブ顧問などを務める中で、私にとって先生は今も憧れであり、目標であり続けています。

最後に感謝を込め、あだ名で呼びかけます。「せいさん、本当にありがとうございました!」