栗林学長ブログ『澄めば都、大教大』

2020.01.20

新年に思うこと

 新年あけましておめでとうございます。
令和になって初めての新年を迎える令和二年は、穏やかな新年という印象を持つ人が多いのではないかと思います。昭和から平成への改元が昭和天皇の逝去に伴う国事行為であったのに対して、平成から令和への改元は、存命中の天皇の退位によって行われた国事行為であるために、私たち国民の印象に、平和の持続を期待させるある種の華やいだ雰囲気を与えたとも考えられます。こうした穏やかな雰囲気のままに一年が過ぎることを期待したいものですが、世界の現実は厳しい環境下にあり、第三次世界大戦の恐れさえ感じさせる昨近です。
 イスラエルの学者ユヴァル・ノア・ハラリは、現生人類ホモ・サピエンスが体格の上で、はるかに強靭であったネアンデルタールに勝って生き残った理由は、共同の想像力を手にした認知革命により崇拝の対象である神を手に入れ(共同幻想)、集団で暮らすようになったことから、集団の力を必要とする農業が発展したことが決定的であったと指摘しています。
 やがて、現生人類は数千人の集団が暮らす都市を生み出し、科学革命を経て近代にいたりました。しかし、この科学革命の本質は、アルゴリズムと情報革命にありますので、人の発想や意識を解明し、来るべき未来の世界を創るのに役立てることが出来ないことになります。
 この説は受け取り方によっては、人が人を教え、導くことの困難さを物語る一例であるとも考えられます。主として学校教員を育成し、社会に送り出すことによって広く社会に貢献することを使命としている大阪教育大学にとって、大学の責務としている課題の大きさと、その重要性をも改めて考えさせられるところです。
 国全体の人口の減少がこれまでの予想を大きく上回って進行していることから、高等教育機関全体の規模の縮小が今後生じてくるであろうことが予想されていますが、時代にふさわしい学校教育の在り方を研究し、提示するとともに、激変しつつある時代状況の中でも、未来を担う若者をしっかり育成し、教育に貢献できる人材を送り出す使命の重要性について、新年を迎え、改めて強く感じています。