音楽表現コースのオーケストラが学校向けVR教材の映像を収録

2024.03.19

音楽表現コースのオーケストラが学校向けVR教材の映像を収録

 教育協働学科芸術表現専攻音楽表現コースの学生らで構成する「大阪教育大学シンフォニーオーケストラ」が、演奏の様子を360度見渡すことができるVR(仮想現実)映像の収録を2月3日(土)に柏原キャンパスで行いました。これまでに3曲の映像を制作しており、4曲目となる今回はシベリウス作曲「フィンランディア」を、中務晴之特任教授の指揮で演奏しました。

 これらのVR映像は、学校の音楽科の授業で活用することを目的に制作しているもので、2022年3月から動画配信サービス「Blinky(ブリンキー)」で無料公開しています。一般的な音楽の鑑賞授業ではDVDやインターネットの配信動画などが使われ、生徒は制作者の意図に沿って編集された映像を視聴するだけになりがちですが、VR映像であれば好きなときに好きな方向を自由に見られるため、生徒は能動的、探究的に鑑賞し、学びを深めることができます。この取り組みは、本学客員教授で日経BP技術プロダクツユニット長補佐の中野淳氏が中心となってプロジェクトチームを立ち上げ、元本学教授の田中龍三氏、獨協埼玉中学高等学校の相原結講師、2023年3月まで附属池田中学校に赴任していた豊中市立第七中学校の内兼久秀美教諭などが参画。VR映像の制作・公開を進めているほか、授業の成果を論文や研究発表会などさまざまな場で発表しています。相原講師と内兼久教諭は、本学の教育イノベーションデザインセンターの共同研究員も務めています。

 今回の収録には、授業でのVR活用を検討している島根県と奈良県の学校教員および教育委員会関係者、本学の片桐昌直理事、鈴木剛副学長も訪れ、撮影を担当する株式会社アルファコードのスタッフを含むプロジェクトメンバーがカメラの位置や向き、演奏者の位置などを細かく検討して調整する様子などを視察しました。

 収録後には、視察した学校教員らとプロジェクトメンバーが集まり、意見交換を行いました。教員からの「生徒たちの授業に対する動機づけが難しいと感じている」という声に、相原講師は自身が実践した授業の様子を紹介しながら、「教師はつい自分の意図する方向に生徒を導きたいと考えてしまいがちですが、生徒が自由な発想で疑問を見つけられるようにすれば、自分から音楽の面白さに気づいて探究してくれます」と答えました。さらに「授業の最初は、VRゴーグルやスマートフォンを使って盛り上がるのをあえて許してあげました。VR体験は大人でも楽しいのに、子どもに騒ぐなと言うほうが無理があると思います。少しの間自由に楽しめば、その後は落ち着いて学習に切り替えられます」と話すと、教員らは驚いた様子で聞いていました。意見交換の後は実際にVRゴーグルを着けて、今後の教材での活用なども考えられている三次元の仮想空間「メタバース」を体験しました。

 VR教材制作について、オーケストラを指導している中務特任教授は「大学所属のオーケストラが学校の授業で用いる教材作りに貢献することは非常に有意義であり、演奏に携わる学生への教育的効果も絶大なものがあります。多くの教育現場で活用いただけるよう、今後もこの取り組みを積極的に続けていきたいと思います」と語りました。

 プロジェクトを主導する中野氏は、「今までの取り組みで、VR教材が探究的な学びや協働学習に有効であることが分かりました。今後は、教材の拡充・公開を進めるとともに、全国の教員がこの教材を使った授業に取り組めるように、関連情報の発信に努めたいと考えています」と述べています。

音楽表現コースウェブサイトにて、授業実践の様子および指導案などをご覧いただけます。
VR映像教材へのリンクも掲載しています。

音楽表現コースウェブサイト「オーケストラのVR映像を利用した音楽科の授業の取り組み」

 

相原講師がオーケストラのメンバーにVR教材について説明する様子
オーケストラのメンバーにVR教材について説明する相原結講師

カメラを調整する様子
演奏者の間にカメラを設置

画面を確認しながらカメラ位置を検討する様子
画面を確認しながらカメラや演奏者の位置を検討

演奏の様子
本番の演奏

中野氏が授業実践のレポートを紹介する様子
意見交換会で授業実践のレポートを紹介する中野淳氏

(広報室)