組織的に教育研究活動や学生の学修成果を継続的に点検・評価し,改革・改善することで教育の質の向上をめざす「内部質保証」に関するファカルティ・ディベロップメント(FD)講演会を7月31日(水)に柏原キャンパスで開催し,大学教員,事務職員ら約80人が参加しました。 今回は,全国の大学などでカリキュラムマネジメント確立に向けた組織開発や教育の質保証のための情報基盤システム整備などのサポートを行っている桑木康宏氏(株式会社学びと成長しくみデザイン研究所 代表取締役)が,「戦略的に『教育の質保証』に取り組む」と題して講演しました。 桑木氏は,「教育の質保証」が求められるようになった背景として,18歳人口の減少と進学率向上に伴って,これまで大学に進学しなかった学力層が入学してきたことと,社会の急速な発展に伴って,基礎的学力や専門知識だけでなく,問題解決能力やコミュニケーション能力などを企業や社会が求める資質や能力が高度化してきたことを挙げ,「きちんと作戦を立てないととても追いつかない状況になった」と解説しました。 カリキュラム設計においては,各科目とディプロマポリシー(学位授与方針)との関係性を整理した「カリキュラムマップ」に加えて,各科目とコミュニケーション能力や論理的思考,情報リテラシーなど,どんな時も汎用的に役立つ能力・態度・志向であるジェネリックスキルとの対応関係を表した「カリキュラムチェックリスト」で整理する方法を紹介。この2つのツールは,「知識・技能」と「思考能力・判断力・表現力」に加えて,「主体的に学ぶ」という学力の「3要素の育成」を重視したカリキュラムを構築するためには,必要なアプローチではないかと話しました。講演では,他大学の取組事例も紹介され,具体的な作業イメージも共有されました。 続いて,岡本幾子理事・副学長が登壇し,本学がこれまで取り組んできた学位プログラムと学修成果評価システムの取り組みや教育の内部質保証体制などを紹介。今後の課題としては,「何を学び,何ができるようになったのか」という学習者本位の教育活動への転換やディプロマポリシーに基づく授業の役割分担,到達目標との整合性をどのように実現するかを挙げました。 参加者からは,「カリキュラムマップ・チェックリストにより,特にジェネリックスキルの育成プロセスを明確にする必要がある」「桑木氏の具体的な内容や最新の動向が学びになった。特にカリキュラムの構造を改善していく際にカリキュラムマップとカリキュラムチェックリストを活用することが参考になった」「本学の仕組みを用いて実質的な効果を得るためには,具体的に学内でどのような取り組みが必要となるのか他大学から学びたい」などの感想が寄せられました。
講演する株式会社学びと成長しくみデザイン研究所・桑木康宏氏
(教務課)