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2018.09.13

様々な国の立場から安全保障を議論する「外交講座」を実施

 外務省総合外交政策局国連政策課主席事務官・松井宏樹氏による外交講座「模擬安保理」を7月10日(火),柏原キャンパスで開催しました。
 外務省は,大学生らに国際情勢や外交政策に対する理解を深めてもらおうと,大学に職員を派遣し講義を行う「外交講座」を展開しています。本学では教育心理科学講座の山田正行教授が担当する授業の一環として毎年行われており,多彩なテーマを取り上げています。今回は,現在の日本にとって安全保障面で最も重要な課題の一つである北朝鮮問題について,各国のポジションを通じて多角的に捉え,国際政治の複雑さを理解し,相手の立場に立って物事を考える姿勢を身につけることを目的に実施されました。
 国によっては,平和維持のための武力行使,制裁の是非,また国連安全保障理事会(安保理)で人権問題を扱うことの是非について確固としたポジションがあります。国際法の遵守,人道支援の必要性,政治的・外交的解決の重要性等を強く訴える国もあれば,自国が置かれた地政学的な立場から,米国やロシアなどと共通の立場をとる国や北朝鮮を過度に刺激することに慎重な国もあり得ます。このように同じ北朝鮮問題でも国が異なれば見方や主張が異なり,複雑に絡みあうことから,様々な視点から多角的に議論することをめざして授業が行われました。
 学生たちは事前に「米朝首脳会談を受けた安保理としての行動」の議題に沿って,個人または2,3人のグループで,安保理理事国および日本のうち1か国を選び,その国の北朝鮮非核化に関するポジションについて予習したうえで授業に臨みました。2018年の安保理理事国は,常任理事国である米国,英国,フランス,中国,ロシアと,非常任理事国のカザフスタン,クウェート,エチオピア,赤道ギニア,コートジボワール,ボリビア,ペルー,スウェーデン,オランダ,ポーランドの計15か国ですが,授業では5常任理事国と,エチオピア,ボリビア,スウェーデン,オランダ,日本からの選択としました。
 「模擬安保理」は,学生のグループ・ディスカッションと松井氏のコメントを組み合わせたアクティブ・ラーニング形式で行われました。松井氏が議長となり,学生が理事国の代表の立場で議論を展開。はじめに,担当の国の立場にもとづいて3分ずつ冒頭発言を行い,次いで自由討論に移りました。学生たちは予習を踏まえた上で,実際の安保理での各国の発言やポジションにとらわれることなく,その国の代表になったつもりで自由に議論し,議長役である松井氏は,学生の意見に対し逐次丁寧に解説しました。
 山田教授は,「内容が法学部の国際政治や外交政策の専攻向けで,教育学部の学生で大丈夫かと危惧もあったが,みな予習して,引けをとらない発言ができたと感じた」と話しました。受講生の一人は,「レベルが高く実践的なディスカッションだった。こうした実践的な形で学生が取り組むことができる学びというのは,自分のことを振り返るだけでも非常に実になる体験だと感じた。今後もこうした取り組みが活発に実施されることを望むとともに,私たち学生自身もそれに見合うだけの能力や知識を日頃から培っていく必要があると強く感じる」と述べました。

松井宏樹氏

(教育心理科学講座)