エッセイ

高等学校
2021/02/02
その瞬間を求めて
 

「できるようになった瞬間を生徒と共に味わえること」、それが教師8年目の私が感じる教師でよかったと感じる瞬間です。 

私は英語を担当しています。生徒の中には、英語が苦手でなんとかしたいと悩みつつも、和訳問題を解くととんでもない日本語を書く生徒もいます。そんな生徒も、数か月前とは全く異なり、英字新聞を読んできちんと文構造を把握し、きれいな日本語にすることができるようになるだけでなく、定期考査の和訳問題も完璧な回答を書いて来たときには、非常に驚き、結果を見た生徒と共に、確実に前進していることを喜び合うこともあります。 

また、クラブのバレーボールでは、なかなかレシーブがきれいにできず、思ったところにボールを運べない生徒が、基本的なボールであればきれいなレシーブをするようになり、大きく移動して取らなければならない強いボールのときでさえも、きれいにセッターにボールを運べたとき、私は思わず「よしっ」とガッツポーズ。生徒は「自分でもびっくりしました」と私と顔を見合わせてハイタッチしたのを覚えています。

これらの瞬間はまさに生徒の成長を感じる瞬間です。また、生徒が自分の持っている力をうまく使えた瞬間でもあります。教育とは英語でeducateと言いますが、その語源は「外に引き出す」です。つまり、生徒が持っている力を引き出すことが教育ということです。ですが、私はもう一歩踏み込んで、生徒が持っている力を「自ら」引き出せるようにすることが大切だと感じています。英語で適切な文法事項や単語の意味を捉え、英文を解釈できたことや、バレーでレシーブするときに、膝・腰をうまく使い、理想のレシーブ体勢を作り、レシーブできたことは、まさに今持っている自分の力を生徒自ら引き出せた瞬間です。この自ら引き出せた瞬間を繰り返すことで生徒は「自信」を持つことができます。

もちろんそのためには、今練習していることが「当たり前」にできるようになるまで、繰り返し練習するしかありません。その当たり前のレベルに達するまで、私は英文の添削や休日に体育館で練習など一緒に汗水を流しています。

正直言ってしんどいときも多々あります。でもなぜここまで続けてこられたのでしょうか。それは、生徒たちが見せる「できた」の瞬間があるからです。その瞬間は教員として働いている時間でいうなら、本当に一瞬です。はっきり言ってしんどいことの方が多いです。ですが、その一瞬は、辛い時間をすべて吹き飛ばしてくれるくらい偉大なものです。その偉大な、素晴らしい一瞬を生徒たちと共に喜び合いたい。だから、私は今日も学校へ行く。