京都教育大学,大阪教育大学,奈良教育大学による連携推進事業フォーラム「『学び続ける教員』のための教員養成・研修高度化事業」を12月15日(金)に開催し,吉村洋文大阪市長が基調講演を行いました。会場の天王寺キャンパスには大学・教育関係者ら約120人が集まりました。 同事業は,3大学が連携して「学び続ける教員」の養成と研修を行うもので,平成29年度までの6年間,文部科学省の補助事業に採択されています。3大学の特色や資源を相互活用しながら構築した連携モデルを広く公開しています。 吉村市長は「子供の貧困と教育~教員養成系大学に期待すること」と題して講演。大阪市では子どもの貧困が深刻な問題になっているとともに,全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)での平均正答率が全国平均に比べ低いことに言及し,「貧困度が深刻な子どもほど,勉強時間が短く,学習内容も理解できていない」と説明しました。その上で「経済格差が学力格差にならないようにするのが行政の役割であり,鍵となるのは教員。学生が早い段階から学校現場を知り,教員になった後も自己の力を確かめる仕組みが必要」と,大学との連携協力を呼びかけました。 続いて,3大学から事業の現況の報告がありました。双方向遠隔授業システムを活用した教員免許状更新講習や,学び続ける教員をサポートするウェブ講義システムなどの取り組みが紹介されました。 最後にパネルディスカッションが行われました。文部科学省高等教育局の柳澤好治教員養成企画室長,京都府教育委員会の小橋秀生教育次長,大阪府教育庁の橋本光能教育監,奈良県立教育研究所の石井宏典副所長,京都教育大学の細川友秀学長,大阪教育大学の栗林澄夫学長,奈良教育大学の加藤久雄学長がパネリストとなり,京都教育大学の岩村伸一理事・副学長がコーディネーターを務めました。 柳澤室長は,教員養成大学・学部の課題として,新学習指導要領への対応,大学のカリキュラムと学校現場で求められる資質・能力とのギャップ,教育委員会や学校現場との連携が不十分であることなどを挙げたうえで,地域のニーズへの対応や教員の働き方改革,教育委員会との連携の実質化,教職大学院での学びにインセンティブを与えることなどを提言しました。パネリストからは「学び続けるには時間が必要。そのためには学校の業務改善や教員の意識改革が不可欠」「貧困の連鎖を断ち切る志のある教員を育ててほしい」「高校生段階からの育成も検討していく必要がある」「学び続けるために,まず学ぶことの喜びを体験してほしい」などの意見があげられました。柳澤室長は「国立大学には幅広い教育課題への対応が期待されている。今後も『国立大ならでは』を推進してほしい」と総括しました。 参加者からは「市長の教育に対する思いを感じた。教員養成系大学はその思いに応えてほしい」「3大学の連携がうまく機能しているように感じた。他の教員養成系大学も,これらの成果を知り,活用できるものを取り入れると良いと思う」などの意見が寄せられました。
基調講演する吉村市長
パネルディスカッション
(広報室)