2021年年頭挨拶
皆さん、あけましておめでとうございます。
例年ですと、年頭挨拶は、仕事始めの当日の朝に、教職員の皆さんに対面の上で、過ぎた年を振り返りつつ、新年の新しい課題に取り組む抱負を共有する機会とさせていただいていますが、ご存知のように、新型コロナウイルス感染症の脅威が収まっていないことから、本年の年頭挨拶はオンデマンド配信により、ご挨拶させていただきます。
昨年の年初からの新型コロナウイルス感染症による世界的な感染爆発は、世界の政治経済と人々の暮らし全般に大きな影響を及ぼしましたが、教育の世界に与えた影響も小さくはありませんでした。大学の講義をオンラインで継続するために、教職員の皆さんにも大変なご苦労をいただきました。当時の皆さんのご協力に、改めて感謝申し上げ、敬意を表明したいと思います。
大学を中心とする高等教育機関で導入されたオンラインによる講義の実施は、義務教育機関への導入の検討に繋がり、GIGAスクール構想が前倒し実施され、教育の情報化が一気に進むことになりました。それに伴い、オンライン講義の普及により認識された、学校への登校が必要ではなくなる、というネガティブな発想よりも、これまでの学びを補足し、拡大し得るという積極的な意味での学習機会の充実をめざすべきではありますが、教育機関全体としての運営形態は大きな転換の時期を迎えており、学びの受益者一人ひとりに適した学習サポートを探求する必要が大きくなってきていると考えるべきだと思います。
そして、学習におけるこのような変化は、産業構造の変化とも実は軌を一にする部分があることに私たちは注目しなくてはいけません。1990年代末から始まった、コンピュータの利用をさらに拡大し、IoTによるビッグデータの解析と、AIを用いた自動化作業の拡大は、第四次産業革命とも呼ばれ、データ分析を用いて個人の需要と適正に沿った製品や知識の供給を行うプロセスが進行中であると考えられています。そのような観点に立つと、新型コロナウイルス感染症がもたらした、オンラインによる学習形態は、個人ごとのニーズに沿った学修の提供という意味では、第四次産業革命の中で起こりつつある生活形態の変化と一体のものであり、新型コロナウイルス感染症がより早くに顕在化させたものであると言えるのではないかと思います。
国立大学法人は、現在第三期の中期目標・中期計画の終わりを迎え、第四期の中期目標・中期計画の期間の準備を行っています。第四次産業革命を受けた時代の世界は、Society5.0と呼ばれていますが、首相を座長とする教育再生実行会議は、国立の教員養成大学において、教科としての情報、文理統合能力を育成するためのSTEAM教育、グローバル化への対応能力養成などの領域で優れた能力を身に付ける教員の育成を行い、やがて、学校教育の中でリーダーとしての役割を果たすことのできる人材の養成が期待されているところです。
880万人という多数の人口を抱え、大都市圏を構成する大阪には、私たちの社会に課せられた課題を解決する役割が期待されていますし、その中で教員養成の長い歴史を歩んできた大阪教育大学には、そのための優秀な人材が揃っています。新しい年へと踏み出したことを一つのきっかけとして、心を一つにしてここに挙げさせていただいた課題の解決に教職員が取り組むことを確認して、学長からの新年のご挨拶といたします。本年もよろしくお願いします。
2021年1月4日
大阪教育大学長
栗林 澄夫