エッセイ

小学校
2020/12/22
ちいさなしあわせ
 

コロナウイルスの為、3月1日から、学校は休校となった。

卒業式は行われたものの、自分の担任のクラスの子どもたちには会えないままであった。毎日出勤はしていたものの、子どもたちのいない学校というのは、なんともつまらない。

そんな日が過ぎ、終業式にやっと子どもたちに会えた。ただ、この時はもう転勤が決まっていたのだが・・・もちろん言えない。一人ひとりに言葉をかけてお別れを言いたい気持ちをぐっとおさえた。

このクラスの子どもたちとは、2年、3年と一緒に過ごしてきた。(クラス替えはあったが・・・)まだまだ、ずっと卒業まで見届けたかった子どもたちだ。

そして転勤。休校が続き、新しい学校でも、子どもたちに会えない日が続いた。

そんなある日、職員室の机の上に大きな封筒が置かれていた。中を開けると、たくさんの封筒が……。前年に担任していた子どもたち、保護者の方からの手紙だった。ひとりの方が数名分まとめて送ってくださったのだ。うれしくて、うれしくて涙がでそうになった。というか、出ていたかもしれない。一通、一通読んだ。書いてくれた子どもの顔、保護者の方の顔を思い浮かべながら何度も読んだ。初めて知った子どもの想いもあった。

それからも数名の子どもたちの手紙が届いた。8月には、暑中見舞いも届いた。うれしかった。手紙を読んで、元気をもらったら、その日一日仕事をがんばれた。

私は、小さい頃から、先生になりたかった。なりたくて、なりたくてやっとこの仕事に就けた。ただ実際は、想像とはるかに違い、楽しいことばかりではなかった。むしろ、辛いこと、いやなことが大半だったように思う。子どもを思う気持ちは同じなのに、こちらの想いが通じず、もどかしく、苦しい思いをしたことも一度や二度ではない。ただ、その中でも、子どもたちとの時間、ちょっとした日常、…今回のように手紙をもらったこと。そのような喜びがあったから、今まで続けてこられたのかもしれない。たくさんの保護者の方にも助けていただいた。また、先輩の先生、後輩の先生にもたくさんたくさん助けていただいた。

「教師冥利に尽きる」なんてすごいことはない。ただ、子どもたちの中に、わたしという人間が少し存在していてくれたらなと思う。そして、いつか成長した子どもたちにどこかでばったり会えて、「先生。」と声をかけてくれたら、それが…「やっててよかった。」と思えるときなのではないかなと思う。