エッセイ

小学校
2020/12/10
「思い出すのは先生や」
 

今コロナ禍において、どこの学校でも感染対策に苦心されていることだろう。様々な学校行事が中止となった…。子どもたちは友だちとの関わりを制限されている…。それでも、登校してくる子どもたちの笑顔はまぶしい。元気な「おはようございます。」の声に、つい私の「おはようございます。」にも力が入る。学校の存在意義を再確認できる瞬間だ。

本校では、県の施策であるスクール・サポート・スタッフ(以下SSS)として、大学3年生の女性に週2日3時間ほど来てもらっている。教材の準備やコンピュータでの資料作りなどを手伝ってもらい大変助かっている。その彼女が小学4年生と6年生の時の担任が私だ。運動は苦手、算数も苦手、イラストを描くことが得意で、おっとりとして、素直で、気持ちの優しい女の子だった。

そんな彼女が母校に教育実習に来ていると聞き、また、SSSが決まっていなかったこともあり誘ってみようと思い連絡を取ってみることにした。彼女の家を訪問し、約8年ぶりに再会して話をした。私が知っている小学6年生の女の子は既にいなかった。きちんとした受け答えをする礼儀正しい女性がそこにいた。懐かしい名前をたくさん口に出し、耳にしながら当時を思い出して笑いあった。休み時間は運動場でサッカーをし、勢いあまって子どもに怪我をさせてしまったこと。修学旅行では班別行動を取り入れたところ、子どもたちにとっても好評で、卒業旅行でも班別行動をしたこと。家が落ち着かない子どもとは、廊下の流し場で上靴を一緒に洗ったこと。卒業式の日は、子どもたちが行きたいという屋上に上がり、勝手に話を始め、勝手に泣き出したこと。

ひとしきり盛り上がった後で、SSSの話を出して誘ってみた。すると、「是非やりたい。」という前向きの返事ととともに、将来は学校の先生を目指しているという思いを打ち明けてくれた。6年生の頃は「雑貨屋さんになりたい。」と言っていた彼女である。彼女の言葉に驚き茫然としていると、「今まで、中学校や高校も入れて思い出しても、先生のことが一番思い出されるんや。」と言い出した。「アホなことばっかり言って、おっきな声で怒って、自分ちの飼い犬のチャチャ丸の話を嬉しそうにして…。でも、楽しかった~。」と。そんな話になるとは思ってもいなかった私は照れるしかない。それでも、そんな風に思ってくれていたんだと思うと涙が出そうになる。「この仕事をやってきてよかった。」と思った瞬間だ。