担任を離れて十数年。子供達に囲まれている担任の先生方をうらやましく思う日もありますが、逆に担任ではないからこそ味わえる喜びもあります。「教頭は、職員室の担任」と言われることがありますが、子供達もそのように感じているのだと思わせてくれた2つのエピソードをご紹介させていただきます。
エピソード1
4月初日。担任発表の瞬間は、子供達だけでなく先生方にとっても緊張の瞬間です。前年度、4年生の担任をしていた私は、今年度より教務主任になることが決まっていましたが、子供達はそれを知りません。担任発表に一喜一憂する子供達。いよいよ5年生の発表になり、私のクラスだった子供達は、チラチラ私の方を見はじめました。
しかし、全クラスの発表が終わっても私の名前は呼ばれません。なんとなく、ザワザワしていたその時。校長先生が「教務主任は、A先生です」と私の名前を呼びました。すると、私のクラスだった子たちは、目が点になり、鳩が豆鉄砲を食らったようとは、まさにこのこと!と言わんばかりの顔で、私を見つめていました。その直後「先生じゃなくなっちゃうの?先生のお部屋はどこ?」と聞きに来た子供達。「先生は、職員室にいるからね」と言うと、放課後、さっそく職員室に会いに来てくれました。
そして一言。「な~んだ、先生は、先生たちの先生になったんだね」と安心して帰っていきました。教務主任になり一抹の寂しさを感じていた私は、子供達の言葉に癒されるとともに、大きな責任を感じたことを今でもはっきりと覚えています。
エピソード2:1年生の担任の先生が教えてくださいました。
教頭職について4年。朝読書の時間に様々なクラスで読み聞かせをしたり、廊下でもじもじしている子と他愛もないおしゃべりをしたり…。毎日、担任時代には味わえなかった特別な時間を過ごしています。
ある日の午後。かわいい1年生のおつかい係さんが、「教頭室行ってきます!」と言って、私のところに担任の先生に頼まれたプリントを届けてくれました。「教頭室ってどこ?」と思われる方も多いと思いますが、彼らが向かった先は、職員室。1年生曰く、校長先生がいるのは校長室だから、教頭先生がいるのは教頭室なのだそうです。
担任の先生が「教頭先生に届けて!」とお願いすると、「分かった!教頭室行ってくる!」と言って、一目散に(いや、廊下は歩いて)職員室に向かうのだそうです。「失礼します!教頭先生いますか?」と息せき切って入ってくる1年生(いや、廊下は走ってはいないはずです)。毎回、笑顔と元気を教頭室に運んでくれる天使です。1年生、教頭室へようこそ!
教務主任や教頭は、子供達からは少し遠い存在かもしれません。でも担任とは違って、少し離れて子供達を見守ることで、新たに見えてくるものもあると思います。そしてその新たな視点が、担任時代には見えなかった子供達の気付きや閃きを引き出す力に繋がるのではないかと思います。先生になったらその先へ!素敵な先生方を支える、素敵な管理職も目指して欲しいと思います。