放射線リスクの正しい理解を促すリスクコミュニケーションのレクチャーを開催

2021.11.17

放射線リスクの正しい理解を促すリスクコミュニケーションのレクチャーを開催

 理数情報部門の仲矢史雄教授が担当する授業「サイエンス活動指導論」で、10月29日(金)と11月5日(金)の2回にわたって、専門家による放射線リスクの正しい理解を促すリスクコミュニケーション(*)のレクチャーを開催しました。
 福島第一原子力発電所事故から10年が経過した今、福島県産の食品から基準値を越えるリスクのある農産物は流通されていないにもかかわらず、人々から当該地域の農産物に対する不安が残っている現状があります。この背景には、普段の生活では放射線に接する機会が少なく、理解するのに時間を要することが挙げられています。また受け取り手の気持ちに寄り添い、正しい知識を提供できる人材も十分と言えない現状があります。
 そこで同講演会では、環境省が取り組んでいる、放射線の専門的な知見とリスクコミュニケーションに関する各レクチャーを提供することで、放射線に対して自発的に考える人を増やすプロジェクトについて紹介されました。
 1回目の講演会では、放射線技師の資格を持つ東京保健医療大学 小野孝二教授から、放射線の定義や性質、人体に及ぼす影響などの放射線に関する最新の情報が紹介されました。
 2回目の講演会では、20年以上にわたってリスクコミュニケーション活動に取り組んでいる土屋智子先生((一社)複合リスク学際研究・協働ネットワークを2020年に設立)から、リスクコミュニケーションの解説がありました。そこでは、一方的な知識の伝達では人々の納得は得られないという自身の反省から、消費者の気持ちに寄り添い信頼を構築することで、リスクに向き合った時に適切な判断を可能にする基盤となることが紹介されました。
 講演会を聞いた受講者からは、「新型コロナウイルスに関する不安や誤解と通じるものが多く、学ぶことが大きかった」という声が聞かれました。

(*)リスクコミュニケーションは、リスクに関係する人々の間で、リスクに関する情報や意見を相互に交換すること。有害性やおこる確率がどの程度ならば受け入れ可能で、そのレベルまでリスクを下げるためにどうすれば良いかについて関係者の理解を深め、共に考えようというもの。

講演を行う東京保健医療大学の小野孝二教授
講演を行う東京保健医療大学の小野孝二教授

講演を行う土屋智子先生((一社)複合リスク学際研究・協働ネットワーク)

講演を行う土屋智子先生((一社)複合リスク学際研究・協働ネットワーク)

2021年11月17日掲載
(理数情報部門)