視覚障がいのある子どもたちが「絵をさわって鑑賞し絵をつくる」ワークショップを開催

2022.08.22

視覚障がいのある子どもたちが「絵をさわって鑑賞し絵をつくる」ワークショップを開催

 特別支援教育部門の山本利和特任教授と正井隆晶特任准教授、美術・書道教育部門の加藤可奈衛教授らが、目の見えない・見えにくい子どもと家族のための造形教室「絵をさわってみよう!作ってみよう!」を8月6日(土)に実施し、8家族23名が参加しました。この教室は、視覚障がいのある子どもが絵をさわることによって美術作品を鑑賞し、その体験をもとに絵をつくることに挑戦するワークショップです。これは、山本特任教授や加藤教授をはじめとして、卒業生や様々なバックグラウンドをもつ方々が、20年にわたって続けてきたライト・オン・デザイン・プロジェクトの一環で行うもので、実に3年ぶりの実施となります。今回は、国立民族学博物館の広瀬浩二郎准教授や京都国立近代美術館の松山沙貴研究員という触図作成の研究者の方をはじめ卒業生や学生など多くのスタッフが協力しました。

 午前中、参加者は、点字のように指先で凹凸にさわって鑑賞する「触図」を鑑賞した後、正井特任准教授が中心となって開発した触図教材(*1)をもちいて、触図の模写を行い、遠近の表現や事物の重なりについて学びました。続いて、模写した絵に様々な模様の入ったパーツを足して、オリジナルの絵へと仕上げ、作品を交換し、さわって鑑賞し合いました。午前中の最後には、小中教育専攻美術・書道教育(美術)コース4回生の乾ことみさんが作成した絵の立体模型をさわって、事物の位置関係などを確かめ、学びを深めました。

 午後からは、正井特任准教授と乾さんが共同で作成したパーツに分けられた「ゴッホのひまわり(*2)」を1枚の触図に完成させた後、小中教育専攻美術・書道(美術)教育コース4回生の堀口なつさんが作った「ゴッホのひまわり」のレリーフ(*3)をさわって鑑賞を深めました。続いて、イエロー・ライン・プロジェクト(*4)の一環で栽培した、咲きはじめ・満開・咲きおわりの本物のひまわりをさわって、それぞれの感触を確認し、描かれた3本のひまわりのイメージを感じました。最後に、堀口さんが粘土と樹脂で手作りしたひまわりの花をパーツに分けたキットをプレゼントし、参加者は自由に組み合わせて、オリジナルのレリーフをつくりました。

 参加者からは、「今まで絵に興味がなかったけど、パーツを組み合わせることで自分の絵を作ることができ、興味を持つことができた」「絵を作ることを経験し、言葉でしか知らなかった絵にいっそうイメージがわいた」などの感想が寄せられました。ワークショップを終えた学生スタッフは「言葉のみで相手に伝えることの難しさに気づき、勉強になりました」と振り返りました。参加者へのプレゼント用キットを制作した堀口なつさんは「自分の好きなことで、人の役に立つことができて、うれしかったです」と述べました。

*1 1枚の触図をパーツに分け、レイヤーという型枠をもちいて視覚障がい者が絵に描かれたパーツをレイアウトすることによって、絵をつくりながら鑑賞するための練習教材。

*2 フィンセット・ファン・ゴッホが1888年に制作した「3本のひまわり」のこと。描かれた3本のひまわりは咲きはじめ・満開・咲きおわりの3種類。

*3 絵画等を浮き彫りにしたもの。

*4 イエロー・ライン・プロジェクトは、2009年より加藤教授が代表を務める地域連携プロジェクトで、障がい者支援や被災地の復興に関連した取り組みを実施しているひまわりプロジェクトに賛同し、ひまわりの栽培をしている。

  


触図教材をもちいて、触図の模写を行う様子


作成した立体模型を説明する乾さん(右)正井特任准教授(左)


立体模型をさわって事物の位置関係を確かめる参加者


お互いの作品を鑑賞し合う参加者


「ゴッホのひまわり」を作る参加者


ひまわりをさわる参加者と山本特任教授(右から2人目)


ひまわりをさわる参加者と加藤教授(中央)


プレゼントの説明をする堀口さん(中央)

 

(特別支援教育部門、美術・書道教育部門)