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2019.12.03

変わりゆく北極について考えるボードゲームの体験演習を実施

 北極を取り巻く環境の変化について考える教育向けボードゲーム「The Arctic」の体験演習を,11月27日(水)に柏原キャンパスで開催しました。社会科教育講座の井上岳彦特任講師による企画で,ゲームの開発に携わった国立民族学博物館特任助教・人文知コミュニケーターの大石侑香氏が講師を務めました。
 このゲームは,国立極地研究所,海洋研究開発機構,北海道大学などが構成する北極域研究推進プロジェクト(ArCS)と,日本科学未来館が共同開発したものです。プレーヤーは研究者,先住民,開発業者,外交官などになり,それぞれに課された目標の達成をめざします。地球温暖化により北極の海氷が減少するにつれ,トナカイの大量死や海洋汚染事故,グローバル資本の進出など,さまざまなイベントが発生します。それらに対処するには事前に調査研究や整備事業を行う必要があり,限られた予算でどの事業を実施するか,プレーヤー同士の話し合いが重要となります。
 演習では,参加者15人が4人から6人のグループに分かれて実際にゲームを体験。「世界遺産登録するとどんな効果が考えられるのか?」と話し合ったり,文化人類学者役の人が研究を採用してもらうために開発業者役の人を説得したりと,どのグループでも活発なコミュニケーションが展開されました。ゲームが終わると自主的に反省会を始め,「運もあるから仕方ないけど,目標数値の下がるイベントが連続したのは痛かった」「無駄になった事業があったから,最初から協調して決めていかないと」などとプレーを振り返っていました。
 井上特任講師は演習について,「北極域環境の複雑な事情について考える良い機会になりました。学生たちも,実際の教育現場でこのゲームをどう利用するか考えながらプレーしてくれたようです」と語りました。大石氏は「大学生を対象に実施するのは初めてで不安もありましたが,皆すぐにゲームの構造を理解し,攻略とうまく結びつけて北極の複雑な現状を学び,未来のために考えねばならないことについて話し合ってくれました」と感心し,「『The Arctic』を教育に関心のある学生さんたちに体験してもらったのは,このゲームを使った『持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)』の可能性を考えてほしいと思ったからです。ゲームは今後貸し出しを行う予定なので,主体的に考える力やコミュニケーション力を養う教材として,学校教育や企業研修にぜひ活用してほしい」と期待を寄せました。

ゲームの説明をする大石氏
ゲームプレーの様子

(広報室)

 

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