他の教員養成大学と連携事業を推進
― 教員養成について、現在、大きなプロジェクトが2つ進んでいます。 いずれも他の教員養成大学との連携ですが、どのような成果を期待されていますか。
栗林 HATOプロジェクトは、北海道教育大学、愛知教育大学、東京学芸大学と大阪教育大学が連携している事業で、その中には様々な事業が含まれています。それぞれ、国際的な観点を含めて進めており、最終的なねらいとしては、全国の基幹的な4教育大学が連携することによって、新しいかたちの博士課程のあり方を模索しています。
京阪奈3教育大学連携プロジェクトは、奈良教育大学、京都教育大学、そして大阪教育大学が、様々な事業による連携の試みを展開しています。この中にあって現在進んでいるのが、双方向遠隔授業システムによる連携です。この事業でも最終的な目標とするのは、やはり3大学が連携するシステムを活用した博士課程の設置です。スケジュール的には、平成29年・30年度をめどに新しい形の博士課程の設置を考えています。そのために、基礎となる様々な事業を進めているところです。
教職大学院の設置も推進
― 教職大学院の設置準備も進んでいますね。
栗林 教職大学院はすでに他の多くの大学で設置されています。しかし、本学はこれまで教職大学院を設置してきませんでした。その理由は、制度として整備されたものの、教職大学院を修了した学生に対する保障が必ずしも定かではなかったからです。つまり、管理職としてどのような処遇が得られるのかということと、学生の確保が必ずしも明確でなかったという2つの理由です。しかし、制度としてあるものをいつまでも取り組まないでいるのは許されないことだと思います。そのような理由で、現在、平成27年度設置に向けた準備を進めているところです。
また、教職大学院は、取得単位が45と、一般の修士課程が30単位であるのに比べてかなり多いです。そして、教員の実践力を身につけさせるために10単位の実習が含まれていることが特徴としてあげられます。つまりこれまでの修士課程に比べてより「高度な大学院」として位置づけられていますので、これを進めることは、教員養成の博士課程を設置するステップとしてどうしても必要なことだと考えています。
情報化社会に対応した新しい図書館
― 栗林学長は附属図書館長を兼任しておられました。そこで、情報化社会に対応した人材育成について図書館をどのように活用していくのか、お考えをお聞かせください。
栗林 附属図書館長を兼務するようになってから、心がけてきたことは2つあります。
1つは、図書館は「情報の倉庫」だと思いますが、社会が急激なデジタル化の波に直面していることから、それに対応した取り組みを行わなければなりません。たとえば、研究面での電子ジャーナル利用を促進することです。電子ジャーナルの購入については、各研究室単位であったものを大学の共通経費にして、大学全体の責任として受け入れ、タイトル数を倍増させることも実現しました。こうして大学院生も含めた研究支援を積極的に行ってきたのです。
2つめは、図書館の機能を社会に向かって開いていくという取り組みです。図書館の中にある様々な情報リソースを、放送大学や大学近隣の人たちに向けて公開してきたのです。また、催し物として、たとえば古地図や卒業生で有名な人たちの蔵書や関連資料を、できるだけ多くの市民に見てもらうことを心がけてきました。最近行った児童文学作家の灰谷健次郎、民俗学者の宮本常一の展示会もその一環です。
学生の羽ばたきを大学は支援します
― 本学の学生は高いポテンシャルを有しています。しかし残念ながら、それを十分に開発し切れてはいないのではないかと思われます。新学長として、そういっ学生にエールを送っていただけますか。
栗林 本学を訪れたお客様から「大阪教育大学の学生さんは実に礼儀正しいですね。質が高い」とよくほめられます。そのことに誇りを感じています。学生一人ひとりは頑張っていますし、これからも努力を続けてくれると信じていますが、いかんせん大学側の学生へのサポートが十分にできているとは思っていません。
冒頭の質問でも述べたように、学生支援の第一は、教育内容だと思っています。
学生が自ら外に向かって誇ることのできる指標、スコアであるとか、資格取得であるとか、それをきちんと身につけさせてやりたい。そのために、学生自らが学習計画を立て、途上で自ら点検、検証し、改善できる、そういうシステムをつくることが必要であると思います。
大学としては、シラバスの内容整備、教育内容の点検、結果の確認、そういうことが十分にできるような仕組みをつくっていくことが最低限必要です。この点でも残念ながら、今の本学は十分でないと思っています。学生が社会に羽ばたいていくためには、もっと早い段階から準備が必要だと思います。具体的には、実習や研修で附属学校園をもっと活用する、あるいは企業にもっと協力してもらうことが、これまで以上に必要です。また、学生が海外に留学して勉強する取り組みについても支援策を講じていき、国際的な視野を身につけられるような仕組みをもっと考えていきたいと思います。